エドワーズライフサイエンス,血行動態モニター「EV1000 クリティカルケアモニター」の新ソフトウェアリリース開始
〜ベテラン医師が持つ循環管理の知見と経験をモニター1台で簡単共有〜
2017-2-16
右側の青いランプが点灯していると,
目標値内に値が収まっていることを表す
エドワーズライフサイエンス(株)は,血行動態モニター「EV1000 クリティカルケアモニター」(以下EV1000)用新ソフトウェアのリリースを開始した。
本ソフトウェアにより医療従事者は,患者さんにとって最適な循環管理*1を実施するために必要な指標について,目標値を明確に設定し,その値を維持できているかを,常に視覚的に確認できるようになる。
手術を受ける患者さんの循環管理は,医師の経験の差や習熟度によって異なることがある。本ソフトウェアを搭載したEV1000上で設定した循環管理の目標値を,手術中から術後まで維持することで,個々の医師の経験や習熟度に関わらず,患者さんの循環管理をより高い質で標準化できることが期待される。
●本ソフトウェア搭載のEV1000のポイント
・複数ある目標値の統一・共有が難しい目標指向型療法(GDT)*2が,より簡便に導入可能に
患者さんの早期回復に効果があるとされながらも,必要となる複数の指標の目標値を病院内で統一・共有するのが困難なことが,導入の障壁となりがちだったGDTを,簡便に行うことができる「GDTモード」を新設。臨床現場のニーズに応えた「GDTモード」により,各指標の目標値を設定し,目標値内の状態を維持できているかを確認,対応することで,個々の医師による管理のばらつきを低減し,高い質で標準化された循環管理が可能になる。その結果,患者管理の質の安定に寄与する。
・各指標の変動をリアルタイムで表示。目標値の遵守率に基づいて,早期対応が可能に
設定した4つの主要な指標について,その変化をグラフで表示できるようになった。これにより,目標値を維持できているかを常に確認し,患者状態の変化に迅速に対応できる。また患者さんに対して行った措置や処置の効果を,複数の指標でリアルタイムに確認可能になる。
・ひとつのモニターでより多くの指標のモニタリングと管理が可能に
これまでのEV1000では血圧や脈拍数の表示ができなかったが,本ソフトウエア導入により,連続血圧および脈拍数,収縮期・拡張期血圧の測定値を,新たに表示できるようになった。
※ EV1000の使用には,患者さんの状態に応じて,フロートラック センサー(認証番号:21700BZY00348),クリアサイトフィンガーカフ(販売名:EV1000クリティカルケアモニター,認証番号:22300BZX00363),ボリュームビューカテーテル(承認番号:22300BZX00361),エドワーズオキシメトリーCVカテーテル(承認番号:22800BZX00169)のいずれかが必要。
※ 設置済みのEV1000については,アップグレード可能。
※ EV1000は,循環管理における各指標を,数値のみならず赤・黄・緑の3色にカラーコード化して表示することで,医師やメディカルスタッフ全員が,患者さんの状態を一目で把握できるモニター。
*1:循環管理:手術中などに,患者さんの全身を巡る血液量や血液中の酸素の量を管理すること。
*2:目標指向型療法(Goal Directed Therapy,GDT):患者さんの血行動態に目標値を設定し治療介入する方法。
●循環管理と,質の標準化に向けた課題
酸素が欠乏すると,人体には数分単位で影響が表れ,生命維持に影響する。そのため血液が各臓器へ十分な量の酸素を届けることは非常に重要。しかし,手術中は麻酔薬の影響や出血など,様々な要因から患者さんの血液量や血液の流れは刻一刻と変化し,場合によっては十分な血液と酸素が届かず各臓器の機能が低下することがある。そのため医師は患者さんの状態変化に合わせて,血管を通じて水分や電解質などを投与する「輸液」(点滴)を,循環管理における基本的な手法として実施する。輸液は過剰でも過少でも,臓器機能に悪影響を及ぼし,患者さんの早期回復の障害となったり,治療結果に影響することがある。
最適な輸液を行うためには,複数の指標に基づいてその量やタイミングを決定する必要がある。しかしその基準となる目標値は統一されておらず,医師が個々の経験や知識を駆使して,その都度対応することが多いのが現状。そのため医師の習熟度によって循環管理の質が一定ではないという課題がある。
●「目標指向型療法(GDT)」による,循環管理の標準化を期待する声に応えたサポート機能,新「GDTモード」
最近は欧米を中心に,複数の指標をモニタリングし,定められた方法で患者さんの循環を管理する「GDT」が実施されている1)。この方法により,今までの課題であった循環管理における質の標準化が試みられている。その結果,適切かつ標準化された輸液・循環管理を行うことで,手術後の合併症が減少する2‐4),また入院期間が1.16日短縮される5)などの効果が,複数の研究で報告されている。
ただしGDTの実施には,互いに関連しあう複数の指標について,それぞれの目標値を設定して行うことが多く,その手順を病院内で統一・共有しづらいという問題がある。そのため日本ではGDTに必要な指標が実際にモニターされていながら,臨床現場におけるGDTの実施率は低いという調査結果7)もある。
GDTをより簡便に実施するサポートとなるモニターを求める臨床現場の声に応えて,EV1000の「GDTモード」は誕生した。GDTの導入が広がることで,医師の習熟度に係わらず,標準化された循環管理が行われ,患者さんが速やかに回復して自宅に帰ることができる,質の高い医療の実現に貢献することが期待される。
1. CardioQ-ODM oesophageal Doppler monitor. National Institute for Health and Clinical Excellence. NICE medical technology guidance 3. 2011.
2. Grocott MP, et al. Br J Anaesth. 2013;111(4):535-48.
3. Brienza N, et al. Crit Care Med. 2009;37(6):2079-90.
4. Dalfino L, et al. Crit Care. 2011;15(3):R154.
5. Giglio MT, et al. Br J Anaesth. 2009 ;103(5):637-46.
6. Cannesson et al. Critical Care (2015) 19:261におけるUC Irvine Health School of Medicine |Department of Anesthesiology & Perioperative Careの図をエドワーズが日本語に翻訳
7. Suehiro K, et al. J Anesthesia. 2016; 30: 526-529
●問い合わせ先
エドワーズライフサイエンス(株)VCC事業部
TEL 03-6894-0610
http://www.edwards.com/jp/