セント・ジュード・メディカル,心房細動の治療に使用するTactiCath Quartz コンタクトフォースアブレーションカテーテルを日本で上市
〜コンタクトフォース測定機能※1を備えたTactiCath™ アブレーションカテーテルが心房細動患者の治療に取り組む医師に新しい選択肢を提供〜
2016-10-31
セント・ジュード・メディカル(株)は,イリゲーション型※2アブレーションカテーテルであるTactiCath™ Quartzの製造販売承認を取得,日本で上市することを発表した。セント・ジュード・メディカルの最新技術であるTactiCath™ Quartzによって,医師はアブレーション手技の過程で患者さんの心臓壁にカテーテルが作用する力をリアルタイムかつ多角的に測定することが可能になる。TactiCath™ Quartzのコンタクトフォース技術は,アブレーション手技の過程で心臓壁にかかる力を修正するために医師によるカテーテルのコントロール性を高めるよう設計されており,発作性の心房細動(AF)の治療を受ける患者の病変部位をより効果的に焼灼することを目指している。この技術は最適な治療方法が採用された場合にAFの再発率を減らすことが2014年Heart Rhythmで発表したTOCCASTAR試験※3で示されている。
東京医科歯科大学 心臓調律制御学教授・不整脈センター長の平尾見三医師は次のように述べている。「日本国内における心房細動の患者数が増え続けている中で,アブレーション治療の効率と有効性を上げる治療ソリューションを開発することが重要です。TactiCath™ Quartzには,アブレーション手技の際に,光干渉法技術に基づいた重要な情報を正確かつリアルタイムにもたらしてくれることを期待しています。」
電気生理学専門医はTactiCath™ Quartzアブレーションカテーテルを使うことで,カテーテルの先端が心内膜表面に加える圧力の量(単位はグラム)をモニターすることができる。コンタクトフォースの検出技術がなければ,医師はアブレーション治療の際に心臓壁にどれだけの力がかかっているかを自らの手で触れて推測しなければならない。心臓壁にかかる力が小さすぎれば病変部位が効果的に焼灼されず,またAF再発のおそれがあり,さらなる治療が必要となる可能性もある。力がかかり過ぎれば組織を損傷するリスクがあり,手技に伴う重篤な合併症につながるおそれが出てくる。
セント・ジュード・メディカルのグループプレジデントであるエリック・フェイン医師は次のように述べている。「セント・ジュード・メディカルは電気生理学界に最先端のアブレーション技術をもたらしてきた長い歴史を有します。心房細動を患う何百万人もの患者様に対する治療の質を向上させるために,セント・ジュード・メディカルは,クリニカルエビデンスに裏打ちされた,世界レベルでありコスト効率の高いソリューションへの投資及び開発に注力してきました。」
イリゲーション型アブレーションカテーテルであるTactiCath™ Quartzをはじめとするアブレーションカテーテルは細いフレキシブルなワイヤー束であり,血液を身体の隅々まで効果的に送り届ける心臓の働きを損なう不整脈の治療のために使われる。2030年には日本におけるAF有病者は約100万人を突破すると予想されている※4 AFは,現在の日本で見られる不整脈の中では最も多いタイプの疾患となっている。
【セント・ジュード・メディカルのアブレーション技術について】
セント・ジュード・メディカルのTOCCATA試験,EFFICAS I試験,EFFICAS II試験,TOCCASTAR試験など,コンタクトフォースアブレーション技術の安全性と効果をサポートするエビデンスは数多く存在し,現在も新たなエビデンスが発表されている。総合的にみると,これらの重要なデータから,最適なコンタクトフォースが使用されている時にはAF再発率の低下が認められる。Heart Rhythm 2014で発表されたTOCCASTAR臨床試験の初期解析では,TactiCath™を用いたアブレーション治療の際,1) 最適なコンタクトフォースパラメータが取得された時,と2) 最適ではないコンタクトフォースパラメータが使用された時における,12ヶ月後に発作性の心房細動(AF)が認められなかった患者の割合は,それぞれ1)が85.5%,2)が67.7%であることが示された。TactiCath™ Quartzは,心房細動(AF)と上室性頻脈(SVT)のアブレーション治療でCEマーク取得およびAF適用でFDAの承認を取得している。
TactiCath™ Quartzイリゲーション型アブレーションカテーテルで生み出されたコンタクトフォースデータは,EnSite™コンタクトフォースモジュールにより,心臓マッピングおよびナビゲーションシステムであるEnSite Velocityシステム2)に表示される。EnSite™コンタクトフォースソフトウェアモジュールは,FDAの承認を受け,またCEマークの認証も取得しており,コンタクトフォースアブレーション技術と3-Dマッピングおよびナビゲーションシステムの機能をシームレスに統合することができる。これにより,医師のワークフローや電気生理学検査室の装置設置に影響をほとんど及ぼすことなく,既存のセント・ジュード・メディカル顧客におけるTactiCath™ Quartzとコンタクトフォース技術の容易な統合が可能となる。
【心房細動とは】※5
心房細動は洞結節の正常ペースメーカからの信号では心房の興奮が始まらず,心房内(主に左房にある肺静脈付近)で1分間に350〜600回の不規則な電気信号が発生し,心房全体が小刻みに震え,心房の正しい収縮と拡張ができなくなる不整脈。心房収縮がなくなり,心室の拡張期に十分血液が満たされないため心臓の機能が低下し,心臓から出る血液量も約20%減少する。そのため息切れやめまい,胸苦しさなどの症状を起こしやすくなり,これが続くと心不全になる可能性もある。
【心房細動と脳梗塞の関係】※6
心房細動は明確な自覚症状がない場合もあり,比較的軽度な不整脈と判断されがちだが,心房細動が持続すると心房内に血液の流れがよどみ,血栓(血液の塊)ができやすくなる。特に左房にできた血栓が脳にとび脳の主要な血管(脳動脈)が閉塞されると脳梗塞を引き起こしてしまう。心房細動をそのまま放置した場合5%の患者さんが脳梗塞になることが知られている。脳梗塞疾患側からみると脳梗塞の約30%が心房細動によると言われている(心原性脳梗塞)。この不整脈自体は致死的な不整脈ではないが,脳梗塞になると非常にリスクが高くなり,死に至るケースも多くなります。未然の予防が必要。
【カテーテルアブレーションとは】
心筋カテーテルアブレーションとは,経皮的に電極カテーテルを心臓内の標的部位に挿入し,電極カテーテルと体表に装着した対極板との間で,高周波通電(Radio Frequency:RF)を行い,頻拍の原因となる異常興奮部位を選択的に焼灼して不整脈を治療する。頻脈性の不整脈の治療は,薬物治療法と非薬物治療法がある。カテーテルアブレーションは非薬物治療法の代表的な治療法で,最先端治療であり,頻脈性の不整脈を根治する治療法。電気生理検査とアブレーション治療に要する時間は平均約2〜4時間。複雑な不整脈では時にかなり長時間を要する場合もある。入院期間は4〜7日程度。退院後は循環器(不整脈専門)外来で継続的にフォローアップしていく。心筋カテーテルアブレーションは治療が成功すれば,抗不整脈薬を服用する必要がなくなり,治療効果は通常永続的である。
※1 コンタクトフォース測定機能:コンタクトフォース(CF)とは,カテーテルのチップが心内膜表面に加える圧力の量(単位はグラム)。TactiCath™カテーテルは,光干渉法技術に基づき,迅速でリアルタイムのCF測定を行うことができ,それによって医師はCFをモニタリングしながら手技全体を通じて圧力を微調整することができる。
※2 イリゲーション型:アブレーションでは,不整脈発生部位に有効な組織変性を起こさせるために必要なエネルギー量と組織温度とのバランスを慎重に保たなければならない。イリゲーションカテーテルでは,カテーテル先端から生理食塩水を灌流させることにより,カテーテル先端および不整脈の発生部位を冷却しながら焼灼することができ,適切な大きさであり,かつ深い組織変性を与えることが可能となります。不整脈は心筋内の深い部分で発生する場合もあるため,組織変性を適切な大きさで,かつ深く与えることで,異常な心拍の原因となっている部位を焼灼し,不整脈をもとから治療することが可能となる。また,カテーテル先端を冷却するイリゲーションカテーテルを用いることで,高周波による温度上昇に伴うリスク(血液凝固,組織の炭化,蒸気破裂など)を軽減させることができる。
※3 http://media.sjm.com/newsroom/news-releases/news-releases-details/2014/St-Jude-Medical-Announces-TOCCASTAR/default.aspx
※4 国立循環器病研究センター http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph99.html
※5,6 心房細動ドットコム
●問い合わせ先
セント・ジュード・メディカル(株)
http://www.sjm.co.jp/