東芝,神奈川県立がんセンターの重粒子線がん治療装置が稼働
2015-12-7
(株)東芝が2012年1月に神奈川県立がんセンターより受注した重粒子線がん治療装置を備えた神奈川県立重粒子線治療施設「i-ROCK(アイロック)」が12月5日にオープンした。本装置を用いたがん治療は,当初の計画通り今月中旬から開始予定である。
重粒子線がん治療は,炭素イオン(重粒子)を光の速さの約70%まで加速して,がん細胞に対し体外から照射する放射線治療法。重粒子線の特長は,がんの形状に合わせた集中的照射が可能なことで周囲の正常細胞を傷つけにくいことから,副作用を減らすことができる点とされている。このため患者の身体的負担が少なく,早期の社会復帰を可能にする理想的な治療方法と言える。
また,他の放射線治療法と比較して,がん細胞を殺傷する能力が高く,他の放射線治療では治療が難しい肉腫などの難治性のがんにも効果が期待されている。
i-ROCKに納入された治療装置には様々な最先端技術が用いられている。特に高速スキャニングビーム照射方式と呼ばれる最新の照射技術を採用している点は国内外の既存施設との大きな違いである。高速スキャンニングビーム照射方式は,ビームの位置や方向を電磁石により自在に制御することで,さまざまな形状の腫瘍に対して正確に照射する。従来の照射方式に比べ,照射精度,治療に要する時間が向上しており,質の高い治療を多くの患者に提供できる技術。また,従来の照射法では患者毎に補助器具注1を作成する必要があったが,この照射法では不要であり,治療開始までの準備時間を大幅に短縮できる。
同社は,2011年に重粒子線がん治療の世界最先端開発拠点である放射線医学総合研究所へ最新の重粒子線照射システムを納入し,2015年には同研究所へ次世代の照射技術を実現するための超伝導回転ガントリーを納入した。さらに本年9月には,国立大学法人山形大学から次世代型重粒子線がん治療装置を受注している。今後も同社の有する世界最先端の画像診断技術と重粒子線照射技術を融合することで質の高いがん治療装置を実現し社会に貢献していく。また,今後も重粒子線がん治療装置をヘルスケア事業の注力分野の一つとして強化する。
注1:重粒子線のビームの形を決めるコリメータとビームの深さ(到達範囲)を調節するボーラス。
●問い合わせ先
(株)東芝 広報・IR室
TEL 03-3457-2100
http://www.toshiba.co.jp/
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