GEヘルスケア,インサイテック社との共同開発MRガイド下集束超音波治療器「ExAblate2100」による有痛性骨転移がんの疼痛緩和治療を日本市場へ投入
2015-10-28
ExAblate2100による治療風景
GEヘルスケア・ジャパン(株)とMRガイド下集束超音波治療器メーカーのインサイテック・ジャパンは,骨転移によるがんの疼痛(とうつう)緩和治療の機能を開発し,この治療機能を追加したMRガイド下集束超音波治療器(以下:MRgFUS)「ExAblate2100(エクサブレート2100)」の国内販売を10月28日より開始する。
両社は,2010年に非侵襲的な子宮筋腫治療に用いられるMRgFUS 「ExAblate2000」を販売開始。本年6月には超音波の開口制御機能および上下移動機能を新たに加え,さらにユーザーインターフェースの改善を行った後継機種として「ExAblate2100」を発売し,4人に1人と言われる子宮筋腫に悩む多くの日本人女性に,日帰り治療という選択肢を提供してきた。今回,さらに骨転移によるがんの疼痛緩和治療の機能を追加する形で,骨に強い痛みがあり疼痛緩和を求めるがん患者さんへの新しい選択肢を提供することを可能とした。
骨転移は,乳がん,前立腺がん,肺がんなどの様々な臓器のがんが骨に転移するもので,がんの痛みの最も大きな原因となっているほか,病的骨折や麻痺(脊髄損傷)などを起こす原因となることもある。痛みは患者さんの日常生活や睡眠に障害をもたらし,身体的,感情的な不快感によりQOL(生活の質)を著しく低下させることから,大きな問題となっている。
骨転移の治療法には薬物療法や放射線治療,外科手術などがある。MRgFUSは,有痛性骨転移がんに伴う疼痛に対し,放射線治療での効果が得られなかったり,放射線治療が適さなかった患者さんに対し,放射線による被ばくのない治療を行うことができる。ExAblate2100では,MRIで撮影した画像をもとに,体外から多数の超音波を照射して,体表に傷をつけることなく体内の標的組織に集束させ,局所的に加熱し,壊死させることで疼痛を緩和する。MRIの持つ機能として,一定温度以上になることを防ぐ温度管理も可能なため,標的組織のみへの的確かつ安全な治療を行うことができる。
さらに,1回の治療で効果が期待でき,治療直後にMRI画像で治療結果をすぐに確認することができる。
また,疼痛が治療後数日以内に緩和され,副作用も生じないか最小限に抑えられるため,患者さんのQOLが改善し,鎮痛剤の使用量が減少する可能性もある。
現在国内で唯一,先行してがんの骨転移に対するMRgFUS治療を実施研究している*高知大学医学部付属病院整形外科医師で高知大学教育研究部医療学系臨床医学部門講師の川﨑元敬氏は,次のように述べている。
「近年のがん治療の進歩とともに進行がんの患者さんの生存期間が延長し,それに伴い骨転移に苦しまれる患者さんも増加しています。当院では骨転移に伴う痛みの緩和に対して2008年よりMRガイド下集束超音波治療を行えるExAblate 2000を取り入れ,これまで11人の患者さんにこの治療を行い,治療を完遂できたほぼ全ての患者さんで疼痛の緩和がみられています。まだ,限られた骨転移の患者さんしか治療が受けられませんが,この画期的な治療法は,骨転移の痛みに苦しむ患者さんのための新たな選択肢と言えるでしょう。また骨転移に伴う疼痛の他,さまざまな運動器疾患の疼痛への適用拡大も期待されます」
GEヘルスケアとインサイテックでは,患者さんのQOL改善に向け,MRガイド下集束超音波治療のさらなる普及を目指していく。
*:高知大学医学部付属病院で使用されている装置は,GEヘルスケアが発売する前に導入されたもの。
●「ExAblate2100」の主な特徴
- 集束超音波による低侵襲な有痛性骨転移がんによる疼痛緩和治療
- MRI画像の位相データをもとにした経時的な温度マップの表示
- MRIから得られるリアルタイム3断面画像で治療計画とモニタしながらの治療
- 診断用画像撮影時には,MRI撮像テーブルへワンタッチ交換が可能
「ExAblate2100」は,インサイテック社で開発したMRガイド下集束超音波治療器で,通常GE製のMRI装置と接続して使用する。治療をしない場合には,診断用MRI装置として利用できる。
現在,インサイテックでは,本態性振戦,パーキンソン病に伴う振戦,神経障害性疼痛などの脳神経疾患,また乳がん,前立腺がんなど,様々な分野における臨床研究も進めている。現在ExAblate®が導入されている施設は,日本を含む世界100ヶ所以上にのぼり,インサイテックでは世界中の主要な病院や医療研究機関と連携し,共同で臨床研究を実施している。ExAblate®は,人々を救うための技術革新やその可能性が認められ,2004年『ウォール・ストリート・ジャーナル』の技術革新賞やEUのIST大賞など,複数の賞を受賞した。
また2011年11月『タイム』誌による「50個の最高の発明のうちの1つ」としてMRガイド下集束超音波法が選出された。
●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン(株)コミュニケーション本部
ブランチャード/松井
TEL 0120-202-021
www.gehealthcare.co.jp