富士通は，顧客の業務に合わせ，人や物の状態・状況・周囲の環境をセンシングし，解析・分析することですぐに活用できる価値あるデータを提供するIoTパッケージ「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE（フジツウ アイオーティー ソリューション ユビキタスウェア，以下，ユビキタスウェア）」を開発した。

IoT時代を迎える中，同社は，あらゆるデジタル情報を活用した価値のある新しいビジネスを顧客と創りだす取り組み“ヒューマンセントリックIoT”を推進している。これまでPCやモバイル端末の開発で培ったノウハウであるヒューマンセントリックエンジンをベースに，”ヒューマンセントリックIoT“のフロントエンドで活用可能な「ユビキタスウェア」を今回新たに提供開始する。

「ユビキタスウェア」は，加速度や気圧などのユビキタス製品で活用してきた様々なセンサーと，それを直接制御し解析・分析する専用マイコン，Bluetooth Low Energy（以下，BLE，^注1）対応の無線通信機能を組み合わせた「ユビキタスウェア」コアモジュールと，クラウド側でデータを学習・分析する，同社のIoTプラットフォームを含めた複数のプラットフォームを利用可能なセンサー活用ミドルウェアで構成される。

「ユビキタスウェア」は，既存機器・システムに簡単に組み込み可能であるほか，「ユビキタスウェア」組み込みデバイスとして製品を提供することで，スピーディーに導入が可能。さらに，ユビキタス製品開発で培った同社独自のアルゴリズムであるヒューマンセントリックエンジンによるセンシングデータの解析・分析により，そのまま活用できるデータを提供でき，IoTビジネス変革を支援する。

●「ユビキタスウェア」の概要図

●「ユビキタスウェア」の特長

「ユビキタスウェア」は，一般的なBLEタグであるビーコンとしての機能に加え，各種センサーからのデータを取得可能なIoTパッケージ。

（1）「ユビキタスウェア」コアモジュールについて
「ユビキタスウェア」コアモジュールは，センサー群（加速度，気圧，地磁気，ジャイロ，マイク）とヒューマンセントリックエンジン搭載のLSI，BLE通信をパッケージ化したモジュール。ユーザーの業務内容に合わせ，パルス^（注2）センサー，GPSなどのオプションを選択できる。

（2）センサー活用ミドルウェアについて
1．センシングミドルウェア
センシングミドルウェアは，「ユビキタスウェア」コアモジュールを活用したセンサーデバイスから収集したデータを元に，人の行動パターンを分析し転倒などの異常状態を検出する分析アルゴリズムを搭載したミドルウェア。
2．ロケーションミドルウェア
ロケーションミドルウェアは，センサーデバイスから収集したデータを元に，設定した屋内外の範囲内で人や物の位置情報を提供するミドルウェア。

●「ユビキタスウェア」で実現する機能例

• 運動強度測定：人の動きから活動量やエネルギー消費量を算出
• 姿勢検知：人の動きを3Dで捉え，立位・座位・横臥位（おうがい，^注3）などの身体姿勢や人の状態を把握
• 転倒検知：人の動きや気圧変化の特徴から，人の転倒状態を判定
• 測位・軌跡：移動の特徴から距離や方向を推定することで，高精度測位や軌跡データの取得を実現
• 熱環境レベル検知：温湿度が身体に与える熱ストレスの状況を判定し，危険時に注意喚起
• 身体負荷レベル検知：装着者のパルス数の変化から身体負荷を推定し，過負荷状態時に注意喚起

●「ユビキタスウェア」組み込みデバイスの例（2015年12月以降に提供予定）

（1）ロケーションバッジ・タグ（屋内外測位端末） ※富士通フォーラムにおいて試作機のデモを行う。
1．特長：同社独自アルゴリズムによる移動経路推定技術（PDR，^注4）を搭載したバッジやタグにより，GPSの利用が困難な屋内などで測位し，屋外ではGPSによって位置を測位することで，屋内外問わず高精度かつ低コストにバッジの位置や動線の把握ができる。さらに，バッジ装着者の姿勢や転倒などの状態も把握できる。
2．適用例：病院や商業施設，倉庫などで，バッジやタグを装着したスタッフ，顧客，物の位置をリアルタイムに把握できる。人員配置の変更やリアルタイムでの転倒検知による安全強化，物の管理，商店内レイアウトや商品選定の見直し，数量の最適化などの判断材料として活用できる。

（2）バイタルセンシングバンド ※富士通フォーラムにおいて試作機のデモを行う。
1．特長：リストバンドに搭載したセンサーで計測した温度・湿度・運動量・パルス数などの情報から，ヒューマンセントリックエンジンにより，装着者周囲の熱ストレス推定を行う。また，短時間での気圧・加速度変化を把握することにより，装着者の転倒を検知する。
2．適用例：建設，製造，農業などの作業者が装着し，周辺環境の熱ストレス推定や，休憩の有無など作業者の状態をセンシングし健康状態を監視することで，作業員の安全管理に活用できる。また，転落・転倒などの事故を把握でき，事故への素早い対応・現場の安全確保のための改善が行える。

（3）遠隔見守りステーション
1．特長：ステーションに搭載したマイクにより，発声・咳・寝息・行動を起因とする生活音を収集し，独自の音響分析により生活状態の変化を把握し，個人の生活パターンと併せて分析を行う。また温湿度センサーを活用し熱ストレスを推定する。
2．適用例：高齢者の住宅棟に設置し，外出・帰宅検知や熱ストレスへの予防・対策，さらには災害時の安否確認や捜索援助のサービスなどに活用できる。

（4） ペット見守りトータルソリューション（ペット活動センシング端末・ペット見守りステーション）
1．特長：留守中のペットの様子のリアルタイム撮影や，ペットの活動変化の自動通知，熱ストレス・乾燥注意報アラート配信など，独自のペット行動ログ解析アルゴリズムで，離れていても，いつでもペットの様子を見守れる。

●「ユビキタスウェア」の先行実証実験事例について

3分野において「ユビキタスウェア」を活用した顧客との実証実験や同社グループ内での実践に向け取り組みを開始している。

［農業分野：農機転倒検知サービス ―国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター］
バイタルセンシングバンドを装着した農業従事者が，農機運転時に農機ごと転倒し一定時間以上起き上がらない場合に，家族などあらかじめ登録した連絡先に自動で通報が入り迅速な救援活動支援・安全の見守り実現にむけた共同研究を実施する。また，農業従事者のバイタル管理などの実証実験もあわせて行う予定。

［医療分野：患者位置情報把握― フィンランドの地域医療行政法人 Etelä-Pohjanmaan sairaanhoitopiiri］
概要：入院患者にロケーションバッジを装着し，助けが必要になったことを，現在地と合わせてボタン一つで発信することで，周囲の医師・看護師が即座に駆けつける院内サービスの共同研究を実施する。またロケーションタグにより備品などの場所を見える化し，置き忘れ防止など運用の効率化を検証する。その他，患者への院内ナビゲーションの提供などの検討も進めており，さらなる医療サービスの向上と，院内業務効率化の実現を目指す。

［産業分野：現場作業の安全性向上 ― 富士通ネットワークソリューションズ株式会社］
概要：富士通ネットワークソリューションズ株式会社（本社：神奈川県横浜市，代表取締役社長：岡平 司）のネットワーク関連工事の現場作業者にバイタルセンシングバンドを装着し，装着した作業者の位置情報や加速度，周辺の温度や湿度などから熱ストレスの検知をはじめとする現場の見える化の実証実験を今夏より開始し，本格導入を目指し現場作業の改善・安全性の向上に取り組んでいく。

●提供製品一覧

「ユビキタスウェア」（2015年12月提供予定）
　　「ユビキタスウェア」コアモジュール
　　センサー活用ミドルウェア
　　　　センシングミドルウェア
　　　　ロケーションミドルウェア

「ユビキタスウェア」組み込みデバイス
　　ヘッドマウントディスプレイ（2015年5月11日販売開始）
　　ロケーションバッジ・タグ（2015年12月提供予定）
　　バイタルセンシングバンド（2015年12月提供予定）
　　遠隔見守りステーション（2015年12月提供予定）
　　ペット活動センシング端末（2015年12月提供予定）
　　ペット見守りステーション（2015年12月提供予定）

^{注1 BLE：近距離無線通信技術Bluetoothの規格の1つ。省電力性が高い。
注2 パルス：拍数/分を推定。
注3 横臥位：横向きに寝ている状態の体位のこと。
注4 PDR：Pedestrian Dead Reckoningの略称。自律航法のこと。}