日本メドトロニック,「腎デナベーションシステム」の治験を日本で開始
~治療抵抗性高血圧患者に対する新たな治療選択肢としての承認を目指す~
2012-10-1
日本メドトロニック(株)は,治療抵抗性高血圧患者を対象とした,腎デナベーションシステム(治験機器識別番号MDT-2211)を用いた,腎デナベーション術の治験を開始した。
腎デナベーション術は,最適な薬物治療によって十分にコントロールできない治療抵抗性高血圧のうち,心血管や脳血管のリスクがより高いi,ii,iiiとされる収縮期血圧が160mmHg以上(至適血圧~III度高血圧に分けられる高血圧分類でII度に該当iv)にとどまる患者さんに対する血管インターベンションによる新たな治療として期待されている。
本治験で使用する腎デナベーションシステムは,2008年に欧州連合(EU)においてCEマークを取得し,欧州の一部並びにオーストラリアをはじめとした国・地域で5,000例以上の患者さんに使用されている。一方,米国ではFDAの承認を取得するための治験が進行している。
本治験が開始されたことに対し,治験調整医師を務める日本高血圧学会 前理事長の島田和幸先生は「血圧の高い状態が多年にわたり継続することは,脳卒中や心血管系へのリスクを増大させます。今回,日本メドトロニック株式会社が国内において,治療抵抗性高血圧に対する腎デナベーションシステムの有効性を検証し,安全性を確認するための治験を開始したことは,薬剤治療に抵抗性を示す高血圧患者さんの将来に希望を与える第一歩であると共に,これまで有効な治療手段が確立していなかった治療抵抗性高血圧の治療戦略に大きな影響を与えるでしょう」と述べている。
なお,治験実施施設は以下の11施設(予定施設含む)となっている。
自治医科大学附属病院,沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院,京都大学医学部附属病院,大阪 大学医学部附属病院,筑波大学附属病院,久留米大学医学部附属病院,熊本大学医学部附属病院,札幌医科大学附属病院,東京女子医科大学病院,弘前大学医学部附属病院,千葉大学医学部附属病院
【治療抵抗性高血圧とは】
治療抵抗性高血圧は,日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(JSH2009)で「生活習慣の修正を行ったうえで,利尿薬を含む適切な用量の3剤以上の降圧剤を継続投与しても,なお目標血圧まで下がらない患者」との概念が示されている。これらの患者さんは血圧をコントロールできている患者さんに比べて心血管イベントの発症リスクが3倍も高くなるという海外の報告もあるv。腎デナベーションの対象患者と想定しているのは二次的要因による高血圧を除外して,生活習慣の改善を図り,薬剤治療を行っても,なお,治療抵抗性高血圧の概念に該当する高血圧。
【腎デナベーション術とは】
腎デナベーション術は,大動脈から分枝する腎動脈に沿って存在する交感神経を高周波(RF) エネルギーで焼灼することによって交感神経系を抑制する治療法。腎臓は血圧のセンサーの役割と血圧を上昇させるホルモンの分泌や血圧に影響する体内のナトリウム量を調節する臓器。腎動脈の交感神経はこれら腎臓を介した血圧上昇メカニズムに深く関与している。腎動脈の交感神経を腎デナベーションカテーテルにより焼灼することで,交感神経系を抑制し,血圧を目標値に調整することを期待している。
腎デナベーションシステムはメドトロニック社製の腎デナベーション専用カテーテルとRF出力ジェネレーターで構成されている。カテーテルを用いたバルーンやステントなどによる心冠動脈や腎動脈などの血管インターベンションと同様に,ガイディングカテーテルを用いて大腿動脈より腎デナベーション専用カテーテルを挿入し,大動脈から分枝する腎動脈内にカテーテルを配置する。血管造影を行いながらカテーテル先端の位置を確認し,腎門の手前から大動脈と腎動脈内の分枝に近い部分にかけて腎デナベーション専用カテーテルの先端を血管壁に接地させRFエネルギーを供給して,4~6か所,腎動脈外膜に存在する交感神経を焼灼する。
i Law, MR et al. Use of blood pressure lowering drugs in the prevention of cardiovascular disease: meta-analysis of 147 randomized trials in the context of expectations from prospective epidemiological studies,BMJ.2009 ;338 :b1665
ii Lewington SI. Age-specific relevance of usual blood pressure to vascularmortality: a meta-analysis of individual data for one million adults in 61 prospective studies, Lancet. 2002;360:1903-1913
iii Arima, H. et al. Validity of the JNC VI Recommendations for the Management of Hypertension in a General Population of Japanese Elderly -The Hisayama Study- .Arch Intern Med. 2003;163:361-366
iv 高血圧治療ガイドライン JSH2009 日本高血圧学会編
v Doumas M et al. Benefits from treatment and control of patients with resistant hypertension. International Journal of Hypertension 2011. Article ID 318549, 8 pages, 2011
●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
カーディオバスキュラーグループ 臨床開発部
TEL 03-6430-7017
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