医療機器の評価において保険医療の占める部分はきわめて大きく,重要な課題である。しかし,医薬品と異なり,医療機器の保険医療での評価にはさまざまなパターンがある。医療材料のようにきわめて医薬品に近い評価法がとられるものから,検査診断料等に包括されるものまであり,最適な評価法が保険医療のどこにあるかは医療機器ごとに異なるため,一概に論ずることはきわめて困難である。また,医薬品においては製造販売を行う会社が直接評価を求められるのに対し,医療機器の場合は,学会等の機器の使用者から提案する以外に評価を求めるルートがないものもあり,この点も評価を複雑にしている。
本戦略会議においては,医療機器が創出する新たな機能・改善事項が,どういうメリット・効果を生み出しているかを図2のように評価することを提案している。これまで計測できなかった生体情報や機能の測定の可視化などは評価を得られやすいが,間接的な貢献,例えば,QOL向上,効率化,リスク軽減などは評価が困難であった。また,これらの価値を同列に議論することが評価を複雑化する原因にもなっていたと考えられる。ここに示す考え方は,保険医療における評価以外にも適用可能であるが,わかりにくい効果をどのように表現するかが整理されれば,特に保険医療での評価を求める際に有効と考えている。その一つの方法として,イノベーションを端的に表現できるキーワードの整理を行っている。
また,医療機器は,必要とする場所・時期に遅滞なく存在し,安全,安心に使用できることが求められる。そのため,医療機器をアイドリング・タイムや在庫を含めて保有することによって生じるコストを,医療機関に補償する必要がある。しかし,医療上の必要の発生の有無にかかわらず設備的に保有が必要となる検査診断機器と,治療が発生しなければ利用されない医療材料・治療用具等を同列に扱うことも困難である。さらに,医療機器には定期保守・点検に必要な費用も伴う。これらのコストを保険医療でまかなうか,補助金制度でまかなうかという議論もある。しかし,このようなコストを正当に評価し,負担を求めていく必要がある。 |