RSNA2014 日立 - 粒子線治療
コンパクト化・高精度化した陽子線治療システムを映像やパネルで紹介
2014-12-3
粒子線治療システム紹介コーナー
RSNA 2014[第1日目:11月30日]
2014年4月に,日立グループとしては7番目のカンパニーである日立ヘルスケアグループ・ヘルスケア社が立ち上がり,日立メディコグループがその一員となった。長年,日立グループでは,電力・水・交通などの基盤インフラの事業を中心に取り組んできたが,次のステップとして,教育,金融,ヘルスケアなどの生活インフラを重要な社会インフラと位置づけて事業を展開していく方針の下,ヘルスケアに注力するグループ・ヘルスケア社を立ち上げるに至った。
RSNA 2014では,ヘルスケア社が取り組む粒子線治療システムについて,その技術や特長,受注状況などを映像やパネルで紹介した。
ヘルスケア社が取り扱うのは,粒子線治療の一つである陽子線治療システム「PROBEAT」。従来の放射線治療では,照射されたエネルギーが体表付近を最大として体内に進むにつれて減衰するのに対し,陽子線治療では,エネルギーを最も放出するブラッグピークを腫瘍の位置(深さ)に調整することができ,より高精度・効果的で,かつ正常組織への影響を軽減した治療を行うことができる。ヘルスケア社の陽子線治療システムは,シンクロトロンやガントリ照射室,照射・加速器制御室などで構成され,シンクロトロンは従来の周径23mから18mへとコンパクト化が図られたことがデザイン的な特長である。
また,映像やパネルにて,先端技術であるスポットスキャニング照射技術と動体追跡照射技術が紹介された。従来の照射方式(二重散乱体方式)が,陽子ビームをコリメータやボーラスなどで患者ごとの腫瘍の形に合わせて照射するのに対し,スポットスキャニング照射方式は,腫瘍の立体的な形を測定した上で,小さなスポットごとに線量を管理しながら陽子ビームを照射することができるため,複雑な形状の腫瘍に対しても精度良く照射することができる。患者ごとのコリメータやボーラスが不要なため,放射性廃棄物の削減も可能。ビーム利用効率はほぼ100%であり,加速器室内の被ばくレベルが低いため壁の厚さを従来の半分にすることができ,施設のコンパクト化にも寄与している。米国では,FDA取得直後にMDアンダーソンがんセンターに導入され,多くの実績を積み上げている。また現在,米国内では3施設(メイヨ—クリニック2施設とセント・ジュード小児病院)を建設中で,がん治療へのさらなる貢献が期待される。
日本国内においては,2014年4月より北海道大学にて陽子線治療システム「PROBEAT-RT」の稼働が始まっているが,同大と共同研究が進められてきた動体追跡照射技術を組み合わせた世界初の施設となっている。動体追跡照射技術は,腫瘍近位に埋め込んだマーカーをトラッキングすることで,呼吸などに合わせて移動する腫瘍に対してリアルタイムに,より精度の高い照射を行うことが可能となっている。精度の高さが重視されることはもとより,施設の小型化が粒子線治療におけるトレンドとなっていることもあり,今後積極的に市場を開拓していくという。