ITEM2023 伊藤忠商事 ブースレポート 
MR画像を用いた高精度放射線治療を行う「MRIdian Linac」の有用性をエビデンスを含めてアピール


2023-5-10


ワールドワイドで稼働台数を伸ばすMRIdian Linacを紹介した伊藤忠商事/フィンガルリンクブース

ワールドワイドで稼働台数を伸ばす
MRIdian Linacを紹介した
伊藤忠商事/フィンガルリンクブース

伊藤忠商事/フィンガルリンクは,MRIとリニアックを一体化し画像誘導放射線治療(image guided radiotherapy:IGRT)を行うViewRay社のMRリニアックシステム「MRIdian Linac」を展示した。ITEMでの展示は3回目となるが,MRIdian Linacは順調に実績を伸ばしており,ワールドワイドで61台,国内でも2023年4月に治療が始まった埼玉医科大学国際医療センターを含めて3台が稼働中だ。ブースでは,MRIdian Linacのコンセプトや特徴,前立腺がんや膵がんに対する臨床試験の概要などを含めてプレゼンテーションした。さらにMRIdian Linacの次のシステムである「A3i」(薬機法未承認)で可能になる,3断面でのゲーティングなどの新機能についても紹介した。

●MR画像によるIGRTで高精度の放射線治療を提供するMRIdian Linac

MRIdian Linacは,放射線治療医が必要として患者に臨床的な価値を提供するべく,3つのコンセプトで開発された。それは,SEE(MRI-IGRT),SHAPE(On-line Adaptive RT),STRIKE(Real-Time Gating)である。SEEでは,組織コントラストの高いMRIでIGRTを行うことでより正確で精度の高い線量投与が可能になる。MRIdian Linacでは,0.3Tの低磁場を選択し歪みが少なく安全な撮像,照射を可能にしている。SHAPEは,治療直前に寝台に寝た状態で線量の最適化を行い,治療当日の体内の状態に最適な分布で照射を行うOn-line Adaptive RT=即時適用放射線治療を行う。STRIKEでは,MRIのサジタル画像を用いてターゲットのトラッキングを行い,特定の範囲から逸脱した場合にビームを自動的に止めるReal-Time Gatingを提供する。これらの機能によって,ほかの放射線治療装置ではできない高精度な治療を実現している。

MRリニアックシステム「MRIdian Linac」

MRリニアックシステム「MRIdian Linac」

 

SEE,SHAPE,STRIKEの3つの機能で高精度放射線治療を実現

SEE,SHAPE,STRIKEの3つの機能で高精度放射線治療を実現

 

全世界で57台が稼働中でViewRay社は2023年中100台達成をめざす

全世界で57台が稼働中でViewRay社は2023年中100台達成をめざす

 

●膵がんや前立腺がんに対するMRガイド下治療の臨床試験の結果を報告

MRIdian Linacは,全世界で2万7000人以上の患者に治療を行い,治療対象も65部位と全身のがんが対象となっている。ViewRay社では,MRIdian Linacによる臨床試験を積極的に進めており,現在3300人以上の患者が登録されている。実際に臨床試験の成果も論文として発表されており,ブースではASTRO2022においてヘンリー・フォードがん研究所のParag Parikh医学博士が発表した膵がんや,2023年1月に発表されたばかりの前立腺がんに対する治療成績についても報告した。
膵がんに対しては,2019年に開始されたMRIdian Linacを用いた局所進行膵がんに対する定位的MRガイド下ART(SMART)の第Ⅱ相前向き国際多施設試験の結果を報告した。SMART試験には全世界13施設で膵がん患者136名に対して,MRIdian LinacのOn-line ART+リアルタイムゲーティングで50Gy/50Frの大線量照射を行った。その結果,有害事象(Grade3)は0件,治療後8.8か月のフォローアップで局所制御率(1年)82.9%,無増悪生存率50.6%,全生存率93.9%となった。前立腺がんでは,MIRAGE試験(The MIRAGE Randomized Clinical Trial)の第Ⅲ相単施設ランダム化試験で,MRガイド下とCTガイド下でのSBRTで,マージンを縮小させた照射が急性期有害事象(Grade2以上)を低下させるかを評価した結果を紹介した。尿路ではCTの43.4%に対してMRIdian24.4%,腸管では10.5%に対してMRIdian0%と大幅な改善を示した。

膵がんに対する定位的MRガイド下ART(SMART)第Ⅱ相前向き国際多施設試験

膵がんに対する定位的MRガイド下ART(SMART)第Ⅱ相前向き国際多施設試験

 

前立腺がんに対するMIRAGE試験(The MIRAGE Randomized Clinical Trial)の第Ⅲ相単施設ランダム化試験

前立腺がんに対するMIRAGE試験(The MIRAGE Randomized Clinical Trial)の第Ⅲ相単施設ランダム化試験

 

●3断面のゲーティングや照射プロセスの自動化など機能を向上した「A3i」

ブースでは,ViewRay社がASTRO2022で展示した次のシステムであるA3i(薬機法未承認)で実現される機能についても紹介した。
A3iでは,治療中のリアルタイムモニタリングを行うシネ画像が,現在のサジタル1断面から,アキシャル,コロナルを含めた3断面での確認が可能になる。断面方向の組み合わせは自由に選択でき,複数のターゲットを同時にモニタリングして照射することが可能になる。「並列ワークフロー」では,最大5ユーザーが同時に接続して輪郭補正などの作業が並行して行えるようになる。これまでは1台の操作コントロールからしか患者のプランにアクセスできなかったが,位置合わせが終了後,同時に輪郭修正やプランの確認が可能で,すでに稼働している米国の施設からは従来に比べて30%以上治療にかかる時間が削減されたと報告されている。また,輪郭修正,線量の再計算,治療計画の最適化,オンラインQAなどのプロセスでは,従来はユーザーの確認やクリック数などのステップが多く煩雑な作業が必要だったが,A3iでは一連のワークフローを自動化し最後に確認して治療がスタートできるようになる。そのほか,脳の定位放射線治療に対応した治療計画や照射を可能にする「ブレイントリートメントパッケージ」も搭載されることなどが紹介された。

MRIdian Linacの次のシステムである「A3i」(薬機法未承認)

MRIdian Linacの次のシステムである「A3i」(薬機法未承認)

 

サジタル,アキシャル,コロナルの3断面でのリアルタイムゲーティングが可能になる

サジタル,アキシャル,コロナルの3断面でのリアルタイムゲーティングが可能になる

 

●お問い合わせ先
社名:ViewRay, Inc.
住所:2 Thermo Fisher Way, Oakwood Village, OH 44146
URL:https://viewray-japan.com/contact/


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