ITEM 2019 バリアンメディカルシステムズ ブースレポート
「患者様にやさしい高品質なケアを提供」をテーマに,臨床稼働を開始した放射線治療装置「Halcyon」などの臨床価値をPR
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2019-4-24
バリアンメディカルシステムズブース
バリアンメディカルシステムズは今回,「患者様にやさしい高品質なケアを提供」をテーマに,これまでに蓄積してきた同社製品の臨床価値を中心に来場者にアピールした。なかでも,今年3月に大船中央病院(神奈川県鎌倉市)で国内第1号機が臨床稼働を開始した放射線治療装置「Halcyon」は,ブースの一角に設けられたコーナーにモックアップが展示され,大きなモニタで同院への設置の様子や実際の治療の流れ,導入施設のコメントなどがビデオで上映された。また,放射線治療装置「TrueBeam」の新バージョンとして,定位手術的照射(SRS)治療専用ツールである“HyperArc”を標準搭載した「TrueBeam Edge」が紹介されたほか,効率的な放射線治療やチーム医療を支える製品として,放射線治療計画システム「Eclipse」や放射線治療情報システム「ARIA OIS」のさまざまな機能がアピールされた。
今回の展示および同社の展開について,代表取締役のミッチェル・シロン氏は,「前回のITEMで,当社はさまざまな新製品を発表しましたが,今回の展示では,この1年で培われてきた臨床価値を,多くの来場者に伝えたいと考えています。Halcyonは国内第1号機が稼働を開始し,第一例目はかなり複雑な症例でしたが,わずか8分で治療を終えることができたと聞いています。また,SRS専用ツールのHyperArcは海外で多くの実績を積み重ねています。さらに,がん医療において放射線治療は選択肢の一つであることを他科の医師や患者様に知っていただくために,市民公開講座や学会でのランチョンセミナーも企画しており,認知度を向上する取り組みにも注力していきます」とコメントした。5月11日(土)には,はまぎんホールヴィアーレ(神奈川県横浜市)で市民公開講座「がんと共に生きる時代の治療選択のヒント〜放射線治療を中心に〜」を共催するほか,6月21日(金)には,第24回日本緩和医療学会学術大会においてランチョンセミナー1「放射線治療によるがん医療の今」を放射線治療関連の9社が合同で共催する業界初の試みが行われることも紹介された。
●国内第1号機が臨床稼働を開始した放射線治療装置「Halcyon」
リング型ガントリを採用し,特徴的な外観を持つ放射線治療装置Halcyonは,「高品質なケア」「運用効率の向上」「人にやさしいデザイン」をコンセプトに,画像誘導(IGRT)による強度変調放射線治療(IMRT)/ 強度変調回転放射線治療(VMAT)に特化した装置として開発された。100cmの大きなガントリ開口径を有しながら,非常にコンパクトであるため,今回,大船中央病院では,以前から稼働している2台の放射線治療装置をそのままに,CT室だった場所にHalcyonを追加導入することができた。装置設計も非常にシンプルで,搬入と組み立てが簡便なことから,同院の場合は搬入後,約2週間で引き渡しが完了した。さらに,Halcyonと放射線治療計画システムEclipseはシステムとして統合しており,治療装置のビームデータがあらかじめEclipseに登録された状態で出荷されるため,コミッショニングの期間も大幅に短縮可能である。従来装置では,搬入から治療開始までに約3か月を要するが,大船中央病院では3週間と,1/4の期間で治療を開始することができた。これは,装置の更新においても,治療停止期間を短縮できるため非常に大きなメリットと言える。また,同院における実際の治療について,Halcyonはさまざまながん腫に対応可能であり,IMRTを積極的に行っている施設では,これまで行ってきた治療の多くがHalcyonでも可能であることが示された。
Halcyonでは,IMRT/ / VMATの治療計画やワークフローも効率化が図られている。治療開始から終了までの手順が大幅に削減されているほか,ガントリ回転速度がCアーム型の4倍となったことで,わずか15秒でのコーンビームCTの画像取得が可能となり,治療時間の短縮が図られた。また,同社独自の2段式マルチリーフコリメータ(MLC)「Dual-Layer MLC」は,多段に重なり交互にずらした配列形状がリーフ間の漏れ線量を低減することから,不必要な被ばくの低減にも貢献する。また,このMLCの配列形状と,MLCの速さが従来の2倍(同社比)となったことで,より高度な治療が可能となる。
このほか,加速器に水冷式を採用したことで空冷ファンからの音を低減し,静かな治療環境を実現したことや,装置のバックライト(アンビエントライト)が患者の不安の軽減に貢献するなど,安心して治療を受けられる工夫などがアピールされた。
●HyperArcが標準搭載された「TrueBeam」の新バージョン「TrueBeam Edge」
定位放射線治療(SRT),IMRT,VMAT,IGRTなど,すべての高度な放射線治療に対応するTrueBeamでは,SRS治療専用ツールであるHyperArcを標準搭載した新バージョンのTrueBeam Edgeが紹介された。今回の展示で「SRSをより身近に」というキャッチコピーを掲げて紹介されたHyperArcは,多発脳腫瘍の複数の腫瘍に対するSRSのノンコプラナー治療を一度で行うことが可能な機能である。通常,多発性脳腫瘍に対するSRSは,1つ1つの腫瘍に対して照射を行うため非常に時間がかかるが,HyperArcはシングルアイソセンターで複数ターゲットへの照射が可能なため,治療時間の大幅な短縮が可能となる。海外ではすでに臨床応用が進んでおり,イタリアからの文献では,平均5個の腫瘍に対して従来約35分かかっていた治療時間が,HyperArcでは約11分に短縮することが報告されている。また,HyperArcはEclipseとの連携により使用可能となるが,Eclipseで事前にガントリとカウチの動きをシミュレーションした上で,治療計画に合わせて装置が自動で動くため,SRSを安全かつ効率的に行うことができる。
なお,従来のTrueBeamにもオプションとしてHyperArcを搭載することができる。
●放射線治療計画システム「Eclipse」では,IMRTの治療計画をサポートする“Trade-off exploration”を中心に紹介
Eclipseの最新バージョンであるVer.15.5では,治療計画のワークフローを大きく改善する機能として,ターゲットと周辺リスク臓器の線量のトレードオフ関係の微調整を容易に可能とするTrade-off exploration〔Multi-Criteria Optimization(MCO)〕が紹介された。IMRTの治療計画立案に当たっては,医療機関ごとにリスク臓器への照射線量の上限が決められているため,従来は線量が多い場合は値が適正なものになるまで繰り返し治療計画を立て直し,ターゲットの線量がどの程度影響を受けるかを確認する最適化を行う必要があり,非常に手間がかかっていた。しかし,EclipseのTrade-off explorationを用いることで,事前に設定された条件に従って自動的に複数のプランが計算され,さらには,その治療計画における各領域の線量が適正であるかどうかが数値などでひと目で確認可能となる。線量が多すぎる場合の調整はスライドバーを動かすだけと非常に簡単で,スライドバーの動きに合わせて線量分布と数値がダイナミックに変化するため,オリジナルの計画からの修正量が視覚的にもわかりやすく,治療計画のスループットの向上に貢献する。
●治療RISとしての活用も期待される放射線治療情報システム「ARIA OIS」
ARIA OIS(Oncology Information System)は,同社の放射線治療データ管理システム「ARIA」の情報システムとしての側面を強化したシステム。治療データ照合ソフトウエアから患者情報,照射カルテ,使用画像,発生画像,照射実績など,放射線治療に関する情報の一元管理に加えて,上位システムである電子カルテ(HIS)やオーダリングシステムとの接続が可能となった。Webベースのアプリケーションである“放射線治療ポータル”を用いることで,HIS端末から患者の照射回数の残りや治療日時の確認,治療時の様子や全身情報などが確認できるほか,放射線が多く照射される箇所を確認できることで,看護師が有害事象の発生を予測した上でケアに当たれるなど,放射線治療部と病棟の看護師などとのコミュニケーションの強化にも役立てることができる。また,会計情報や,照射日報,治療予約カレンダーなど,従来は治療RISでの出力やExcelで手作りする必要があった帳票類なども,ARIA OISからすべて出力が可能となる。
今回のITEMでは,このARIA OISの各機能について,これまで蓄積されてきたノウハウを盛り込み,特に日本向けに作り込まれたテンプレートの充実が紹介された。出荷する時点で,すでに日本向けのテンプレートが多数用意されているため,導入後すぐに日本の医療機関に適した状態で使用することができる。
●お問い合わせ先
社名:株式会社 バリアン メディカル システムズ
住所:〒103-0026 東京都中央区日本橋兜町5番1号
TEL:03-4486-5020
URL:https://varian.com/ja