日立製作所,再生医療の普及に向け,iPS細胞大量自動培養装置を製品化
〜国内初の商用装置を大日本住友製薬の再生・細胞医薬製造プラントに納入〜
2019-3-11
iPS細胞大量自動培養装置「iACE2」
(株)日立製作所(以下,日立)は,iPS細胞大量自動培養装置*1「iACE2(アイエースツー)」を,再生医療等製品に使用するiPS細胞の商用製造が可能な装置として国内で初めて*2製品化し,2019年3月8日に第1号機を大日本住友製薬(株)(以下,大日本住友製薬)の再生・細胞医薬製造プラント(SMaRT)に納入した。
本装置は,再生医療等製品の製造管理および品質管理の方法に関する基準であるGCTP省令*3に適合させるために必要な機能を有した,国内初の装置として,臨床に使用するiPS細胞を大量に自動で培養することができる。培養容器や培地の流路には完全閉鎖系の流路モジュールを用いており,細胞の播種,培養,観察を無菌環境で行えるため,品質の高い細胞を安定的に供給することが可能である。
iPS細胞は多能性を有し,傷病などで傷ついた細胞を補う治療法である再生医療に役立つことが期待されている。2014年に世界初のiPS細胞を用いた加齢黄斑変性の臨床研究が日本で行われて以降,重症心不全や脊髄損傷を対象とした臨床研究の準備が進められている。2018年には,京都大学でiPS細胞を用いたパーキンソン病*4治療に関する国内初の医師主導治験が開始されるなど,iPS細胞の実用化に向けた取り組みが急速に進んでいる。一方,iPS細胞の培養は熟練者による手技で行われているのが現状であり,iPS細胞を用いた再生医療の普及のためには細胞の大量培養技術が必要とされている。
大日本住友製薬は,再生・細胞医薬分野を研究重点領域の一つとして注力しており,眼疾患や神経疾患を対象とした複数のプロジェクトをアカデミアやベンチャー企業などと連携して進めている。現在,進めているプロジェクトの一つである脳のドパミン神経の変性・脱落が原因とされるパーキンソン病の治療に用いる他家iPS細胞*5由来のドパミン神経前駆細胞*6の実用化に向けて,京都大学iPS細胞研究所と共同で取り組んでいる。
日立は,2015年から大日本住友製薬とiPS細胞を大量に培養できる自動培養技術とプロセスの開発に共同で取り組んでおり,2017年6月には研究用装置として無菌性に優れた閉鎖系システムが特徴である自動培養装置を大日本住友製薬に納入した。その後も,大日本住友製薬と検討を重ね,今回,GCTP省令の適合に必要な機能を有した装置として,iPS細胞大量自動培養装置「iACE2」を国内で初めて製品化した。本装置は従来の閉鎖系システムを継承しつつ,再生医療等製品の製造所で再生医療等製品の製造管理および品質管理に求められる「バリデーション(CSV*7含む)実施が可能な設計」,「監査証跡機能」,「除染耐性」,「設置環境の清浄度維持」などを搭載している。2019年3月末には第2号機を納入する予定であり,本装置の提供を通じて,大日本住友製薬が取り組んでいる再生医療事業の商用生産体制の確立を支援する。
なお,日立および大日本住友製薬は,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) の再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業において,「パーキンソン病に対する機能再生療法に用いるiPS細胞由来神経細胞製剤の開発」について共同で研究を行っている。
今後,日立は,iPS細胞を用いた再生医療等製品の開発・製造を行う製薬企業やスタートアップ企業へ本製品の提案活動を行っていく。また日立グループとして細胞製造施設,関連機器類,製法開発や受託製造サービスなどをトータルで提供し,再生医療の普及を支援する。
なお,日立グループは,2019年3月21日(木)から23日(土)まで神戸国際展示場で開催される第18回日本再生医療学会総会併設展示会に出展する。
*1 本製品は医薬品医療機器等法が定める医療機器ではない。
*2 2019年3月11日時点,日立調べ。
*3 GCTP省令:再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令。GCTPはGood Gene, Cellular, and Tissue-based Products Manufacturing Practiceの略。
*4 パーキンソン病:脳のドパミン神経の変性・脱落が原因と考えられている神経変性疾患。身体の動きに障害をもたらす。
*5 他家iPS細胞:治療を受ける本人の細胞ではなく,他人の細胞から培養したiPS細胞。
*6 ドパミン神経前駆細胞:神経伝達物質としてドパミンを放出するドパミン神経細胞の前駆細胞。
*7 CSV(Computerized System Validation):コンピュータ化システムバリデーション。医薬品や医療機器などの開発・製造に使用されるコンピュータ化システムについて,開発段階から適切な検証作業を行うことで,システムの信頼性を確保する手法。種々の指針がある。
●問い合わせ先
(株)日立製作所 ヘルスケアビジネスユニット 分析システム事業部
[担当:友添,小林]
TEL 03-6284-3041(直通)
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