読影レポート支援システム LUCID(ジェイマックシステム)
読影レポート見落とし防止管理機能の開発
2020-7-8
開発の背景と機能の標準実装
近年,読影レポートの未確認や記載された内容の確認不足により,患者の治療の遅れが問題となっており,ニュースでの報道など各メディアでも頻繁に特集が組まれている。本問題については,2012年2月に日本医療機能評価機構より,医療事故情報収集等事業医療安全情報No.63として「画像診断報告書の確認不足」が報告され,さらに2018年5月のNo.138では,第2報として,確認しなかった事例が37例あったことが報告されている。また,2019年12月には厚生労働省より,「医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究」の報告書と,2019年9月に日本学術会議臨床医学委員会放射線・臨床検査分科会から公表された「CT検査による画像診断情報の活用に向けた提言」についての通知が,各医療機関や関係団体に通知されている。
当社では,画像ビューワの開発とともに,読影レポートシステムの開発も長い歴史がある。前身の製品は20年以上前の1997年にリリースされ,現製品である読影レポートシステム「LUCID」の最初のリリースも2005年までさかのぼる。読影レポート見落とし防止管理機能の開発についても,本問題が注目され始めた2012年から着手しており,大学病院をはじめ,複数の医療機関でのヒアリングと運用フィードバックを行った上で,医療安全という重要な観点と導入コストの抑制を踏まえ,標準機能として実装している。
読影レポート見落とし防止の原因
読影レポート見落としが起こる原因として,以下のようなケースが報告されている。
●画像検査後,主治医がレポートを確認せず,診察を完了するケース
昨今PACSの導入が進み,撮影した画像をすぐに参照可能な施設がほとんどである。限られた診療時間の中で,レポートが到着する前に主治医が画像を評価,診察を終えてしまい,遅れて到着したレポートの確認を忘れるケースである。
●主治医が検査目的である関心部位の所見のみを確認,それ以外の所見を見落とすケース
レポートには,所見以外にも患者情報や検査情報など多くの情報が記載されている。検査の主目的である部位の所見のみに注意していたり,専門的略語の使用により,異常所見に気づかず,重要な所見に気づかなかったケースである。
●複数の医師が診療にかかわり,情報共有や引き継ぎのミスに起因するケース
検査オーダを依頼した医師と対応医師が異なるケース。救急外来で対応した医師と入院時の主治医が異なるケース,主治医の担当変更などの際にレポートの確認を忘れてしまったケースである。
見落とし防止対策としての3つの機能
当社では,これらの報告を踏まえ,レポート見落とし防止管理機能として,以下3つの機能を搭載している。
(1) 注意喚起コメント機能(読影医からの依頼医へのコメント伝達機能)
所見本文の重要ポイントの見落としなどの防止対策として,クリティカルな所見などについては配信レポート参照時に注意喚起アラートが起動し(図1 a),読影医からの伝達コメントを表示する機能である。
(2) 既読チェック機能(配信レポート参照確認機能)
いつ,誰が配信レポートを参照したかをチェックする機能である(図1 b)。1検査のレポートに対して,複数ユーザーの未読/既読の管理が可能で,チーム医療で複数の医師が診療にかかわるケースに有効である。
(3) 既読管理機能(未確認レポートのチェック,確認,抽出機能)
レポート確認不足の理由の一つとして,業務フローとデータフローの時間軸での不整合が挙げられる。そのため,最終的に参照漏れのチェック機能が重要となる。LUCIDはオーダ情報を含めてさまざまな複合条件で,未読/既読レポートの検索が可能である。
また,レポート見落としを防止するためには,本システムを機能的に運用するワークフローの構築も重要である。拡張機能として,電子カルテや院内メールシステムとの連携も可能である。
当社では,製品開発において,一貫して現場からのニーズを実現するという観点で取り組んでいる。これからも医療安全に貢献できるよう,さらなる機能強化を進めていく予定である。
●問い合わせ先
株式会社ジェイマックシステム 営業部
TEL 011-221-6262
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