放射線部門業務システム「ACTRIS」/ ユーザー事例 聖隷沼津病院(ジェイマックシステム)
ACTRISの導入で照射線量管理も実現し,医療・保健・在宅のトータルな医療提供をめざす。
2018-2-1
一般財団法人 芙蓉協会 聖隷沼津病院
一般財団法人 芙蓉協会は,1949(昭和24)年に設立登記,翌1950(昭和25)年に芙蓉病院として許可病床25床で開設された。「芙蓉」の名には,病院設立基金を寄付されたアメリカのW.H.ダンフォース氏の思いが込められている。1957年には日本基督教診療所の支援を受け,緑町病院と名称を変更,その後1981(昭和56)年に聖隷福祉事業団への法人参画に移行,聖隷沼津病院となり,聖隷グループの一員として,キリスト教精神に基づく「隣人愛」を理念として掲げ,急性期医療から保健,在宅サービスを通して地域社会に貢献することを使命として取り組んでいる。
聖隷沼津病院 院長 伊藤 孝氏に聞く
─貴院の概要についてお聞かせください。
聖隷沼津病院の歴史はとても古く,1950年にW.H.ダンフォース氏の寄付により25床の芙蓉病院として開設された時までさかのぼります。1981年には聖隷福祉事業団の支援を受け聖隷沼津病院となり,現在に至っています。病床数は246床(うちNICU:11床),地域包括ケア病棟は44床で運営しています。聖隷福祉事業団と同じ「隣人愛」を芙蓉協会の基本理念として掲げ,さらに当院として「私たちは,利用される方々にチームワークより生み出される価値ある医療サービスの提供をめざします」という病院理念を掲げています。
一般財団法人 芙蓉協会についてですが,当院のほかに聖隷沼津健康診断センターと聖隷訪問看護ステーション千本があります。訪問看護ステーションは,沼津市で唯一の小規模多機能施設を持っており,ショートステイの入所もできますし,在宅介護での介護者の負担を軽減するためのレスパイトケアにも対応しています。また,当院は多くの診療科を標榜しており,内科や外科をはじめ脳神経外科,整形外科,形成外科,小児科,産婦人科,泌尿器科,呼吸器外科,放射線科などは常勤医がおり,いつでも入院可能な体制をとっています。そのほかの耳鼻咽喉科,皮膚科,てんかん外来については非常勤医による診療を行っています。
─貴院の特色についてお聞かせください。
当院では,年間手術件数が2000件以上あります。さらにNICU(新生児集中治療管理室)を11床設置しています。この地域においても少子高齢化の波が押し寄せ,徐々に出産件数が減っていますが,この地域には周産期医療施設が少なく,地域の要請もあり,静岡県東部地区の小児二次救急を待機病院として月の1/3以上を担っています。また,地域包括ケア病棟を2017年1月に25床で開設し,5月には44床に増床しました。ポストアキュート(急性期経過後に引き続き入院医療を要する状態)およびサブアキュート(在宅や介護施設等において症状の急性増悪した状態)の患者さんや,レスパイトケアの患者さんも対象としているため地域からの要望も多く,80%超の病床稼働率となっています。
─統合画像ビューア「XTREK VIEW」について,感想をお聞かせください。
私は専門が外科ですので乳腺領域,特に乳がんの患者さんや乳房の精密検査の際によく画像ビューアを使用します。当院では断層撮影ができるトモシンセシスの撮影装置を導入していますが,トモシンセシスの画像はサイズが大きいのですが,画像表示スピードも速く,動作もスムーズです。患者さんへの説明時には画像ビューアでトモシンセシスの撮影画像を見せると,びっくりされる方が多くいます。通常のマンモグラフィの撮影では高濃度乳腺などで不明瞭な部分も,トモシンセシスでは三次元的な高精度の画像で観察できますので,ほかの医師からの評価も良く,導入してよかったと実感しています。また,レポートシステムについてもクリック1つでスムーズに表示されますし,各診療科の医師も便利に使っています。症例検討を外科の医師が毎週行っていますが,ビューア/レポートの端末で画像を見ながら行っており,もうなくてはならないシステムとなっています。
─今後の医療においてのIT化についてお聞かせください。
現在ではフィルムレス化が進み,どこの病院でも画像システムが導入されています。アナログの写真で診断していた時代と比較すると,もう元に戻れないほど進歩しています。またアナログの写真の場合は,撮影する診療放射線技師のテクニックが非常に重要でしたが,デジタル化されたことにより,平均的にきれいな画像が撮影できるようになったと思います。診断側としては,ビューア上でいろいろとウィンドウニングの条件を変えて見られることが非常に便利です。紹介患者さんの中には時々フィルムを持参されてくる方もいますが,今となっては懐かしさを感じます。病気が早くわかるために検査をするわけであり,その点ではシステムはますます進歩していくと思います。
─今後の取り組みについてお聞かせください。
法人としては,「健診センターで『保健』を担当し,病気が見つかると病院で『医療』を提供し,介護が必要な場合は訪問看護での『在宅サービス』に加え,地域包括ケア病棟や小規模多機能施設でのケアサービスを通し,地域に貢献する。」ということがあります。つまり,「保健・医療・介護」という長い期間で患者さんを診ることができる組織であり,そのためには各施設の連携がとても重要になってきます。この連携をもっと密にできるように力を入れています。これからは「在宅サービス」を無視した医療というのは難しくなってきており,訪問看護ステーションと病院をいかに連携していけるかが大きな課題です。以前はこの地域では急性期の病院がたくさんありましたが現在は半分以下に減り,今は療養型やリハビリを中心とする病院に変わっていますが,私たちは急性期を残した形で医療経営を行いたいと考えています。というのは,救急当番を埋めることができないくらい病院の数が減ってきている現状があり,地域の医療を守っていくためにも急性期の病院が必要だと考えているからです。また,2018年4月には,地域の歯科医師からの要望もあり,口腔外科を開設することが決まっています。がん患者さんが増加し,高齢化が進んでいる現状,口腔ケアが重要になり,一定の需要があると考えています。また,静岡県の中部/西部に比べると,東部地域には口腔外科が少ないということがあります。地域の中で生きていく病院ですから,地域のことを最優先で考えて取り組んでいきたいと考えています。
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画像診断部 部長 中島容一郎氏に聞く
─統合画像ビューア「XTREK VIEW」について,感想をお聞かせください。
画像の表示スピードはストレスなくスムーズだと思います。ほかのメーカーのものと比べても速いのではないでしょうか。過去画像とのスライス位置合わせ,同期スクロールが簡単でとても助かっています。ほかのメーカーのビューアでは,位置を合わせて同期させても,スライス厚が違う場合,スクロールするとずれてしまうものもあります。XTREK VIEWの場合はそのあたりをうまく考えて設計されており,読影効率も向上していると思います。
GUIの特徴としては,機能ボタンがアイコンではなく日本語ボタンであることです。アイコンというのはピクトグラムやシンボルが基となっています。ヨーロッパの街中では,鍛冶屋の看板やパン屋の看板に絵が描いてあるのを見かけると思いますが,言語に関係なく誰でも理解できるマーカーであり,アイコンの起源もそれらにつながります。しかし,日本語,特に漢字というのは基が絵からできた象形文字であり,漢字そのものがアイコンなわけです。しかも,漢字を組み合わせることで複雑な表現ができます。画像ビューアの複雑な機能を小さなスペースのアイコンで表現するのはかなり難しいことですし,日本語ボタンを採用しているのはとても理にかなっていると思います。漢字で表現できないアイコンについては,OSであるWindowsを踏襲することも重要です。他メーカーのビューアや他部門のシステムにも言えることですが,Windows OS上で動作するソフトウェアのアイコンはWindowsに合わせるべきです。特に「表示」「保存」「印刷」など,一般的な機能についてはWindowsアイコンに合わせることで視認性が良くなります。GUIにおいては色の使い方も重要です。機能の種別ごとに色分けをすることでわかりやすくなり,無駄なマウス移動も少なくなり,効率も上がると思います。
─画像診断とITの今後について,先生のご意見をお聞かせください。
読影をした時に,読影医の音声や動画のコメントをレポートに添付できると,患者さんへのインフォームド・コンセントに有効ではと思っています。過去所見との比較,現状,経過観察など,詳細な所見を実際の音声や動画でお見せすることにより,診療科医師の業務効率も良くなりますし,正確な画像診断の内容を患者さんへ説明するという点でも良いと思います。もちろん,読影医と診療科の主治医によるダブルチェックは必要です。このような音声や動画での説明については,電子カルテでも同様のことが考えられ,治療方針,手術の内容やリスクをこのように説明したというエビデンスとして残すことで,患者さんにとっても施設にとっても,メリットがあると思います。カルテをはじめ,検査画像や検査結果がすでに電子化されている時代ですから,患者さんへのインフォームド・コンセントについても,電子化できると考えています。
放射線課 技師長 田沢範康氏に聞く
─放射線課の概要についてお聞かせください。
法人である芙蓉協会としては診療放射線技師が18名在籍しており,当院での勤務が12名,隣接する健診センターでの勤務が6名で検査業務にあたっています。検査機器は,一般撮影装置が2台,トモシンセシス対応マンモグラフィ装置,X線TV,血管撮影用多目的X線TV,16列マルチスライスCT,1.5T MRI,骨密度測定装置という構成です。検査数については,一般撮影が約2000件/月,マンモグラフィが約200件/月,CTが約800件/月,MRIが約300件/月です。
当院の特色としては核医学や放射線治療はありませんが,隣接する場所に健診センターがあります。バスによる出張健診も行っており,朝は健診業務,終了後は病院業務といった勤務シフトもありますし,健診センターのスタッフも病院の当直を行っています。担当する検査業務を定期的にローテーションし,予防から診断まで幅広く検査業務にあたることで,均等な技術を磨けるような体制をとっています。
─放射線課の特徴についてお聞かせください。
当院では乳腺の診断・治療に力を入れており,マンモグラフィ検査の件数が多くなっています。聖隷グループの中でも最多の件数になっており,トモシンセシス対応のマンモグラフィ装置も最初に導入しています。また,乳腺関連のMR撮像も積極的に行っています。
放射線課では中長期的なビジョンの一つとして,医療被ばく低減施設認定を取得するということがありました。これは日本診療放射線技師会が認定している制度で,当院が取得する前までは,県内にまだ3施設しか取得しておらず,グループ内でも取得している施設がありませんでした。患者さんへの「安心できる放射線診療」を提供する責務のためにも積極的に取得することになり,2017年4月に認定を取得しています。認定にあたっては,医療被ばく低減目標値を定めた「医療被ばくガイドライン」に基づき,自己評価と現状調査および書面審査,医療被ばく低減施設サーベイヤーの訪問審査があり,これらをクリアして晴れて合格,認定を受けることができます。認定は5年ごとの更新になっており,取得時と同様の厳しい審査があります。
─以前より弊社PACSをご使用いただいており,2016年の電子カルテ導入の際には,放射線部門業務システム「ACTRIS」を導入いただきました。導入にあたり,留意した点をお聞かせください。
PACS導入以前までさかのぼりますが,読影部門システムとして,ジェイマックシステムの画像ビューアとレポートシステムを導入しており,非常に使いやすいということを放射線科医から聞いていました。その後,院内全体のPACSを導入することになり,評価の良い読影部門システムの使い勝手はそのままで,XTREKの拡張性を生かした院内配信PACSを構築することになりました。XTREKは内視鏡部門のレポートシステムや3Dワークステーションなど,ほかのシステムとの連携もスムーズです。
RISの導入については,先行導入しているPACSとの連携性,電子カルテとの親和性を重視しました。また,医療被ばく低減施設認定においては,患者さんへの線量情報の提示という課題がありました。他社製品でも専用の線量管理システムが出されていますが,あらためて別システムを使う煩雑さ,コスト面を考えると現実的ではありませんでした。ACTRISは通常のRIS端末を利用し,RISのさまざまな情報を活用した線量管理ができるということで,この点も一つのポイントになったと思います。
※さらに詳しいインタビューはジェイマックシステムのホームページで!
URL http://www.j-mac.co.jp/case/index.html
●問い合わせ先
株式会社ジェイマックシステム
〒060-0034 札幌市中央区北4条東1丁目2-3 札幌フコク生命ビル10F
TEL 011-221-6262
E-mail sales@j-mac.co.jp
URL http://www.j-mac.co.jp