はじめに

当社は，ヘルスケアITソリューションとして「SYNAPSE PACS 」（1999年～），「SYNAPSE VINCENT」（2008年～）などの製品を数多くの医療機関へ提供している。2018年からは新たに“REiLI”というAI技術ブランドを立ち上げ，読影ワークフローを支援するAI技術の開発を進め，今後実用化していくAI技術を活用した機能を搭載するプラットフォームとして，読影ビューワ｢SYNAPE SAI viewer｣（以下，SAI viewer）の販売を開始した。サーバ・クライアント型，ソフトウエア単独構成型含め，すでに国内約100数施設の読影現場において利用されている。
本稿では，2021年8月に発売を開始した胸部X線画像病変検出ソフトウエア“CXR-AID”，同年10月に販売を開始した“肋骨骨折検出プログラム”といった胸部画像診断の読影ワークフローを支援する機能を中心としたAI技術についての機能紹介を行う。

胸部X線画像病変検出ソフトウエアCXR-AID

胸部単純X線検査は，健康診断や日常診療においてさまざまな胸部疾患の診療に利用されている。さまざまな異常陰影が肺野内で認められることがあるが，胸部単純X線画像では肋骨，肩甲骨や肺血管などが重なって写ることがあるため，異常陰影を視認しにくいことも多い。運用面においても，健康診断など膨大な数の画像を医師が読影する中で，見落としなく検出するには高い集中力を要すると言われている。このような背景において，医師の負担を軽減し，効率的な画像診断ワークフローを支援するソリューションとしてCXR-AIDオンプレミスモデルの販売を開始した。AI技術を設計に活用して結節・腫瘤影，浸潤影，気胸の候補領域を検出し，それらの異常領域の存在の可能性（確信度）を青から赤までのグラデーションカラーで表示し，各検出領域に対応する確信度の最大値をスコアで表示する（図1）。

図1　SAI viewerでCXR-AIDの処理結果を参照できる。

肋骨骨折検出プログラム

肋骨骨折の原因の多くは交通事故，転落，打撲などで，胸部外傷患者に多く見られる。また，肋骨骨折は気胸，血胸，肺挫傷などの合併症を引き起こすことがあるため，骨折の度合いにかかわらず，骨折の存在を把握することは，肋骨骨折だけでなく合併症を含めて正確な診断を行う上で非常に重要である。肋骨の骨折が疑われるケースでは，胸部単純X線検査に加えて，より詳細な読影をするためにCT検査が行われることがあるが，彎曲した肋骨にある骨折所見を見落としなく診断することは，集中力を必要とし，医師の負担が大きいと言われている。中でも，微小な骨折は見落としやすいと報告されており^＊1，医師の負担を軽減し，見落とし防止を支援するソリューションが求められていた。今回発売した肋骨骨折検出プログラムは，AI技術を設計に活用して肋骨全体が含まれている胸部CT画像を自動解析し，肋骨骨折が疑われる箇所を検出してマーキングする機能である（図2）。

図2　肋骨骨折検出プログラムの利用例。脊椎・肋骨ラベリング，VR表示機能を併用できる。

^{＊1　Traub, M., Stevenson, M., McEvoy, S., et al.: The use of chest computed tomography versus chest X-ray in patients with major blunt trauma. Injury, 38: 43-47, 2007.}

「SYNAPSE SAI viewer」は以下の医療機器を含む製品の総称です。

SYNAPSE SAI viewer用画像処理プログラム
販売名：画像処理プログラム FS-AI683型
認証番号：231ABBZX00029000

SYNAPSE SAI viewer用画像表示プログラム
販売名：画像診断ワークステーション用プログラム FS-V686型
認証番号：231ABBZX00028000

SYNAPSE SAI viewer用肋骨骨折検出プログラム
販売名：肋骨骨折検出プログラム FS-AI691型
承認番号：30300BZX00244000

そのほかのSAI viewer用プログラムはお問い合わせください。

胸部X線画像病変検出ソフトウエア CXR-AID
販売名：胸部X線画像病変検出（CAD）プログラム LU-AI689型
承認番号：30300BZX00188000