Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)

第51回日本放射線技術学会秋季学術大会が,2023年10月27日(金)~29日(日)に名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で開催された。学会共催のランチョンセミナー12「ワークステーションで変わる画像診断! 臨床に役立つ最新トピック」(ザイオソフト株式会社/アミン株式会社)では,大橋一也氏(名古屋市立大学医学部附属みどり市民病院)が座長を務め,奥村秀一郎氏(済生会熊本病院 中央放射線部)と加藤真吾氏(横浜市立大学 放射線診断学)が講演した。

2024年1月号

ワークステーションで変わる画像診断!臨床に役立つ最新トピック

講演2:画像から解明!心臓CTが変える次世代の循環器診療

加藤 真吾(横浜市立大学 放射線診断学)

循環器画像診断における心臓CTの最新動向を,ガイドラインでの位置づけ,新しいリスクマーカー,心アミロイドーシスを中心に,最新のワークステーション(WS)である「Ziostation REVORAS」を含めて報告する。

心臓CTのガイドラインでの位置づけ

近年,超高齢化の中で循環器病が75歳以上の死因の1位となり(2019年),「心不全パンデミック」と言われるほど心不全患者数が増加し続ける中で,より非侵襲的な検査が望まれるなどの背景もあり,循環器画像診断の重要性が高まっている。従来から冠動脈病変の評価にはCTやSPECTが用いられているが,2022年にアップデートされた「安定冠動脈疾患の診断と治療」の「2022年JCSガイドラインのフォーカスアップデート版」1)では,検査前確率&臨床的尤度が中等度(5〜85%)の患者に対しては冠動脈CTが第一選択となり,CTファーストの時代になったとも言える。心臓CTの特徴は高い陰性的中率であり,ガイドラインでも中等度リスクの冠動脈CTAはクラスⅠの適応を受けている。心臓CTは,従来の運動負荷心電図や心臓カテーテル検査を置き換え,循環器診療のフローに革命をもたらす検査とも言える。

虚血性心疾患の評価(新しいリスクマーカー:FAI)

冠動脈CTでは,血管描出だけでなく,ステントや石灰化の描出,内腔や血栓の評価が可能である。われわれは心筋虚血の評価を行う負荷心筋perfusion CT(CTP)を行っている。血管拡張薬(ATP)による薬剤負荷で虚血を誘発し,負荷心筋血流CT,冠動脈CTA,遅延造影CTを撮影する。左冠動脈前下行枝の閉塞症例(図1)では,冠動脈CTAでは高度狭窄もしくは完全閉塞(CTO)に近く,石灰化も強いことから内腔の評価までは難しいが,負荷心筋血流CTでは前壁中隔に広範な虚血領域を認め,血流が滞っていることが確認できた。そのほかにも,冠動脈ステント留置後のフォローアップや冠動脈多枝病変の評価にも有用である。
そして,最近注目されているのがCTによる冠動脈周囲脂肪の評価(Fat Attenuation Index:FAI)である。血管周囲の脂肪組織の炎症が,動脈硬化や不安定プラークの形成に影響があることが示唆されている。FAIは冠動脈周囲の脂肪組織濃度を示す指標で,炎症があるとFAIが高くなる。FAIでは,冠動脈疾患患者のリスク層別化が可能だと言われており,さらにプラークの性状評価とは独立した危険因子となる。すなわちFAIはプラークの性状にかかわらず心血管イベントを予測でき,冠動脈疾患の新たなリスクマーカーとなることが期待される。われわれは,FAIと冠動脈イベント発生との関連性についてメタ解析を行った2)。メタ解析は,過去の複数の観察研究を統合して,さらに高いエビデンスのデータを出す解析手法だが,その結果,FAIは心血管イベントと高い相関関係を示し,右冠動脈,左冠動脈前下行枝での評価が有用であると考えられた。FAIは,Ziostation REVORASにも搭載されており,FAIの評価が簡便にストレスなく可能となっている(図2)。

図1 左冠動脈前下行枝閉塞症例の負荷心筋perfusion CT

図1 左冠動脈前下行枝閉塞症例の負荷心筋perfusion CT

 

図2 Ziostation REVORASのFat Attenuation Index(FAI)

図2 Ziostation REVORASのFat Attenuation Index(FAI)

 

CTによる心アミロイドーシスの検出

心アミロイドーシスは,折りたたみ異常を起こした一部のタンパク質がアミロイドと呼ばれる異常な線維を形成し,心筋に沈着することで心不全や不整脈といった機能障害を起こす疾患である。病型として,免疫グロブリン性(AL)アミロイドーシス,変異型トランスサイレチン(ATTRv)型アミロイドーシス,野生型トランスサイレチン(ATTRwt)型アミロイドーシスがある。これらのうちATTRに対する新しい治療薬(タファミジス)が開発され,これを用いることで進行を抑え生命予後を改善するデータが示され注目されている。心アミロイドーシスは,従来は地域性があると言われていたが,現在では潜在的に多く,特にHFpEF(左室駆出率が保たれた心不全)患者に多く存在することがわかっている。心アミロイドーシスは各タイプに効果的な治療法があるが,一方で心不全の進行例は治療の反応性に乏しいことから,予後改善のためには早期診断,早期の治療介入が重要であり,画像検査による適切な診断が求められる。

1.MRI-ECV
遅延造影MRIでは,非虚血性心疾患では心外膜側に異常な造影効果が認められる。また,MRIではT1 mappingによる心筋組織性状評価が可能である。Native T1では心筋のダメージや蓄積物質を,Extracellular volume fraction(ECV)では細胞外液分画(線維化)を評価できる。アミロイドーシスは,ほかの心疾患と比べてECVおよびNative T1が著明に高値となる。図3は,心アミロイドーシスのT1 mappingの所見だが,ECV mapでは正常値0.25〜0.30に対して0.5,0.57と高値であり,容易に診断が可能である。心アミロイドーシスに対するMRI-ECVの診断能は感度89%,特異度89%と報告されている。MRIで心アミロイドーシスが疑われた場合には,心筋生検もしくはシンチグラフィを行う。特にピロリン酸シンチグラフィは,ATTRのprobable診断として定性的にも,定量的にもアミロイドの組織沈着を判断でき,「心アミロイドーシス診療ガイドライン」3)でもクラスⅠとして推奨されている。

図3 心アミロイドーシスのMRI T1mappingとECV

図3 心アミロイドーシスのMRI T1mappingとECV

 

2.CT-ECV
最近では,CT-ECVでもMRI-ECVと同等の精度で解析が可能になっている。経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)では,術前にプランニングCTを撮影するが,造影剤投与5〜7分後に遅延造影CT(LIE),ECVを撮影することでアミロイドの評価も可能になる(図4)。TAVI症例に限らず,高齢者の重度の大動脈弁狭窄症(AS)患者は,アミロイドーシスの合併が15%にあると言われており,高齢かつ心肥大が強い場合にはCT-ECVによる評価を加えてもよいと考えられる。そこで,MRI-ECVとCT-ECVの相関について,CT-ECVに関する42論文を対象にメタ解析を行った4)。その結果,MRI-ECVとCT-ECVの相関係数は0.91と非常に強い相関が認められた。平均差(絶対値にどれぐらいの差があるか)は0.16%とほぼ完全な一致で,さらに冠動脈疾患や拡張型心筋症などそのほかのさまざまな心筋症を評価したが,心アミロイドーシスのみが高い値を示した。その中で特にASとアミロイドーシスについては,ASのCT-ECVの平均値が31.9%であるのに対し,アミロイドーシスは48.9%と大きな差があり,CT-ECVで非侵襲的な診断が可能だと考えられる。ROCカーブの統合値も0.94と高い正診率を示した。
ECV解析は,診断だけでなく治療薬の効果判定も期待できることが報告されている5)。心アミロイドーシスの治療薬であるタファミジスは,アミロイドを除去するものではなく沈着を抑える薬剤である。投与群とコントロール群の1年後のECV解析では,コントロール群ではECVが上昇,投与群では横ばいとなっており,ECV解析で薬剤の効果判定が可能なことが示唆されている。
現在の心アミロイドーシス診療ガイドラインでは,CTによるECV解析は心臓MRIの代替手段として用いる場合にはクラスⅡaという推奨クラスである。しかし,ガイドラインの出版後,CT-ECVの有用性を示すさまざまなエビデンスが示されており,今後推奨クラスが引き上げられることが期待される。TAVIが予定された高齢のAS患者や,心房細動でアブレーションを施行するような患者にはアミロイドーシスの合併が多いと考えられる。これらのケースでは,TAVI術前のプランニングやアブレーション用のCT撮影を行うため,ECVの追加撮影がしやすい状況にあると考えられる。ECVでアミロイドーシス合併の有無を判断し,異常が認められればシンチグラフィや心筋生検を術中に行うような流れが,今後広がることが期待される。
Ziostation REVORASでは,「心筋ECV解析」「MR心筋T1マッピング」などのアプリケーションで心筋性状の評価ができることに加え,TAVIやアブレーションの術前プランニングに使用するアプリケーションも有しており,実臨床において有用なWSであると考えている(図5)。

図4 TAVIプランニング時のCT-ECV解析

図4 TAVIプランニング時のCT-ECV解析

 

図5 Ziostation REVORASのMRI,CTでのECV解析

図5 Ziostation REVORASのMRI,CTでのECV解析

 

まとめ

循環器領域におけるCTの臨床的な最新情報を紹介した。心アミロイドーシスの診断に関しては,CT-ECVが非侵襲的な診断に有用であると期待されている。Ziostation REVORASなどの最新のWSを用いることで,心臓CTの臨床的なポテンシャルを最大限に引き出すことができるのではと期待している。

●参考文献
1)日本循環器学会, 他 : 2022年JCSガイドラインフォーカスアップデート版安定冠動脈疾患の診断と治療.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Nakano.pdf
2)Kato, S., et al., Hellenic J. Cardiol., 67, 73-75, 2022.
3) 日本循環器学会,他:2020年版心アミロイドーシス診療ガイドライン.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2020_Kitaoka.pdf
4)Kato, S., et al., JACC Cardiovasc. Imaging, 2023(in press).
5)Bishwas, C., et al., Clin. Res. Cardiol., 112(3), 353-362, 2023.

 

加藤 真吾(横浜市立大学 放射線診断学)

加藤 真吾(Kato Shingo)
2005年 横浜市立大学医学部卒業。神奈川県立循環器呼吸器病センター,三重大学を経て,2014〜2015年 ハーバード大学メディカルスクールBeth Israel Deaconess Medical Center留学。その後,神奈川県立循環器呼吸器病センター循環器内科を経て,2022年4月より横浜市立大学放射線診断科講師。医学博士,循環器内科専門医,放射線診断専門医。

 

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