Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)
第51回日本放射線技術学会秋季学術大会が,2023年10月27日(金)~29日(日)に名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で開催された。学会共催のランチョンセミナー12「ワークステーションで変わる画像診断! 臨床に役立つ最新トピック」(ザイオソフト株式会社/アミン株式会社)では,大橋一也氏(名古屋市立大学医学部附属みどり市民病院)が座長を務め,奥村秀一郎氏(済生会熊本病院 中央放射線部)と加藤真吾氏(横浜市立大学 放射線診断学)が講演した。
2024年1月号
ワークステーションで変わる画像診断!臨床に役立つ最新トピック
講演1:Ziostation REVORASが変える!手術支援画像
奥村秀一郎(済生会熊本病院 中央放射線部)
済生会熊本病院では,2019年にロボット・低侵襲手術センターを開設し,低侵襲手術に取り組んでいる。手術支援画像の需要増大に対応するために,診療放射線技師のセクションとして「3D Innovation Room」を創設,8名のスタッフで手術やIVRを支援する画像の作成に取り組んでいる。本講演では,ロボット支援下腎部分切除術(RAPN)のための支援画像の作成,ザイオソフトの新しい3Dワークステーション(WS)である「Ziostation REVORAS」による手術支援画像の進化について述べる。
済生会熊本病院における低侵襲手術
当院では,2013年に最初の手術支援ロボットを導入,2018年には2台目を導入した。2019年には,複数の診療科,さまざまな職種のスタッフが所属して質の高いロボット手術を行うロボット・低侵襲手術センターを開設した。同時に,中央放射線部のセクションとして3D画像作成・手術支援を専門的に行う3D Innovation Roomが創設された。複数のモダリティからメンバーを集め,現在はCT 2名,MRI 3名,RI 1名,血管造影2名の計8名で構成されている。「治療手技を理解し,画像が持つ情報を最大限に生かして,より専門性の高い低侵襲手術・IVR支援画像を作成する」ことを理念として,画像等手術支援加算の取得や3Dに関する新規技術導入なども取り組んでいる。
ロボット支援下腎部分切除術(RAPN)
日本におけるロボット支援下手術は,2012年に前立腺悪性腫瘍手術が最初に保険適用となり,その後,29術式+増点3術式まで拡大されている。RAPNについては2016年から保険適用となり,当院では現在までに300件以上を行っている。体位は患側を上にした側臥位で行い,アプローチとしては腹側からの経腹膜と背側からの経後腹膜があるが,当院では経後腹膜アプローチで手術が行われる場合でも,経腹膜アプローチと同じ手術支援画像を提供している。合併症としては,動脈損傷や尿瘻が問題となる。
当院では腎腫瘍疑いに対するCT検査は,診断だけでなく手術難易度の判断から手術支援まですべてをカバーした撮影を行っている。診断用では,腫瘍の位置,大きさ,病期,ステージングを目的として転移検索のため胸部も含めて撮影する。また,手術難易度は,「R.E.N.A.L. nephrometry score」を用いて判断する。R.E.N.A.L. nephrometry scoreは,腎腫瘍の解剖学的特徴を定量化して手術の難易度を推定するもので,腫瘍の直径,外方増殖性,尿路および腎洞との距離,腫瘍の位置,腫瘍と上極/下極線との位置関係などを点数化し手術難易度を求めるため,これらがわかる撮影をすることも必要となる。
術者が手術支援画像に何を求めているかを聞いてみたところ,(1) 動脈の本数や部位の把握,(2) 腫瘍に近接する動静脈の把握,(3) 腎臓をVR上で回転させることで腫瘍の正確な位置の把握と術中の腫瘍同定,腎のローテーションによる術前シミュレーション,(4) 尿漏を防止するための腫瘍と尿路の距離,が挙げられた。(1) は動脈の描出,(2) は腫瘍に隣接する動静脈の描出,(3) は術者視点での画像提供,(4) では腫瘍と尿路の距離計測が可能な画像が必要となる。
腎動脈は,起始部や末梢動脈まで把握できるように描出することが必要である。術中は静脈の背側に埋まっており,また,1本でなく複数本あったり,総腸骨動脈から分岐する場合もあったりと解剖はさまざまなため,しっかりと表示することが求められる。そのほか,腫瘍の栄養動脈を同定し,阻血する動脈の推定や阻血領域のシミュレーションなどの情報も提供する。腎静脈については,右と左の解剖が異なるため,別に考えなければならない。また,腎静脈だけでなく,周囲のさまざまな静脈も含めて描出することが必要である。右腎静脈領域では,右性腺静脈,右副腎静脈のほか,下大静脈はメルクマールとなるため,十分に造影されていなくてもしっかりと描出する。左腎静脈領域では,左性腺静脈,左副腎静脈,左下横隔静脈,左腰静脈を描出する。提出画像としては,骨,大動脈,腎動脈,腎静脈,尿管,腎表面,腫瘍のパーツに分けて作成し,それらを統合して図1のように,横回転,縦回転,骨の有無,骨と静脈の有無,阻血領域のシミュレーション,切除後のシミュレーションの画像を提供している。
Ziostation REVORASによる手術支援画像の進化
今回,Ziostation REVORAS(以下,REVORAS)を使用する機会を得たので,手術支援画像作成における使用感について述べる。
1.インフィニットマスク
REVORASでは加算できるボリューム数が大きく増加し,インフィニットマスクという名称がつけられた。Ziostation2のマスクボリュームは8ボリュームまでで,それ以上はVolume Padと呼ばれるタブに一度保存して入れ替える必要があったが,インフィニットマスクにより手術支援画像作成の際の多彩な画像表現の可能性が広がった。腎臓領域においても,最近は細かい静脈や囊胞までの描出を要望されることが多く,必要となるボリューム数も増えている。REVORASでは必要なパーツをすべて表示して表現することが可能になる(図2)。
2.トランスペアレンシー
トランスペアレンシー(透明度)では,オパシティ(不透明度)カーブを下げることなくコントラストや形態情報を保ったまま,臓器や骨などの透過表現が可能になる。大動脈弁閉鎖不全症に対する低侵襲心臓手術(MICS AVR)では,アプローチする肋間を選択するために大動脈弁輪に垂直な肋間を表示する必要がある(図3)。オパシティ表示(図3 a)では,弁輪と重なった肋骨の不透明度を下げると骨のエッジが消えて臓器との関係がわかりにくくなることから,執刀医からもう少し肋骨の輪郭が見えるようにしてほしいという修正依頼が入ることがあった。トランスペアレンシー(図3 b)では,肋骨のエッジを残したまま骨を透かすことができ,椎体との重なりも把握しやすく術前の確認に有用だと考えられる。
3.Fusion用データを後から追加可能
REVORASでは,マルチモダリティのFusion画像を作成する際にデータを後から追加することができるようになった。従来は,すべてのデータがそろってから作成する必要があり,CTとMRIで検査日が違う場合に両方の検査が終わるまで作業ができなかった。業務時間の効率的な活用としても大きく期待できる。
4.肺・肝・腎の自動抽出
肺切除解析,肝臓解析,腎切除解析では肺・肝・腎の自動抽出機能の精度が優れている。いずれのアプリケーションも画像データを開くだけで臓器や血管が精度高く自動抽出され,後は手動による微修正で手術支援画像が作成でき,将来的には技師の作業負荷の軽減につながると期待される。当院の症例を用いてREVORASで腎切除解析を行った(図4)。図4 aが画像を読み込んだ初期表示,bが手動での修正後である。腎動脈が2本,腎静脈も2本ある難易度の高い症例だったが,大動脈や腎動脈は修正不要で,腎静脈の下起始部,副腎静脈,右性腺静脈,腎杯などは修正したものの,全体的に高い認識能力で描出されている。そのほか,REVORASの腎切除解析では腎杯との距離の自動計測や阻血領域のシミュレーションなどを搭載しており,RAPNの手術支援画像として機能が期待できる。
まとめ
手術支援画像作成の際には,まず,手術の「targetを知る」ことで,医師が何を必要としているかを知ることが重要で,術者とのコミュニケーションが求められる。次に「targetを出す」ことで,最適な撮影法や造影法を駆使して描出することが必要だ。さらに「targetを探すこと」で,解剖や構造を把握してさまざまなパターンに対応できるように勉強し,経験を重ねることが必要である。最後に「targetを魅せる」ことであり,対象を取捨選択して的確に手技を支援できる画像を提供することが必要で,これにはWSの性能が重要であり,さらにそれを使いこなす技師の技能も求められる。
REVORASをはじめとして,WSを用いた手術支援の機能は進化しており,メーカーとも協力しながら手術支援のさらなる発展に少しでも貢献していきたいと考えている。
奥村秀一郎(Okumura Shuichiro)
2000年熊本大学医療技術短期大学部卒業。2000年済生会熊本病院入職。2019年より同院中央放射線部係長。2006年から3D業務に携わり,2019年に「3D Innovation Room(3D Lab)」創設。
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