Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)

第81回日本医学放射線学会総会が,2022年4月14日(木)〜17日(日)にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された。学会共催ランチョンセミナー29「Opening the Future─未来を見据えたこれからのポストプロセシング」(ザイオソフト株式会社 / アミン株式会社)では,宇都宮大輔氏(横浜市立大学)が座長を務め,平野 透氏(柏葉脳神経外科病院先端医療研究センター)と小川泰良氏(聖マリアンナ医科大学病院画像センター)が講演した。

2022年7月号

Opening the Future─未来を見据えたこれからのポストプロセシング

講演1:3D画像処理の黎明期から未来 ─可視化から手術支援へ─

平野  透(柏葉脳神経外科病院 先端医療研究センター)

前所属先の札幌医科大学附属病院で,1990年代後半からザイオソフトのワークステーション(WS)による三次元(3D)画像処理を行い,診断や治療を支援する画像の提供を行ってきた。脳神経領域を中心に黎明期を振り返りつつ,ザイオソフトが発表した次世代WS「REVORAS」の話題も含めて,現在の3D画像処理の状況を概説する。

3D画像処理に取り組むきっかけ

ザイオソフトのWSは,1990年代後半の「Pegasus Viewer」に始まり,以後,「M900 QUADRA」「ZIOSTATION」「Ziostation2」と使用してきた。3D画像には,既視感(deja vu)の効果があると言われている。“見たことがある”と感じる画像が手術には役に立つと言われ,一貫して既視感がある画像の提供をめざして3D画像の作成に取り組んできた。
3D画像作成に取り組んだのは,田邊純嘉先生(元・札幌医科大学脳神経外科),鰐渕昌彦先生(現・大阪医科薬科大学脳神経外科教授)との出会いが大きな契機だった。田邊先生には3D画像に取り組むきっかけを作っていただき,鰐渕先生には医師とのコミュニケーションの重要性を含めて手術支援としての3D画像の重要性を教えていただいた。現所属の柏葉脳神経外科病院では松澤等先生(先端医療研究センター長)の指導の下,手術支援画像をさらに高いレベルで作成したいと考えている。

黎明期(1990年代〜2000年代前半)の3D画像処理

最初に脳神経領域の3D画像を作成したのは,シングルスライスCTの「SOMATOM Plus-S」(シーメンス)の画像を使った3D-CTAでの動脈瘤の描出だった(図1)。作成はオンコンソールで,表示方法はサーフェイスレンダリング(SR)とMIPのみだった。脳動脈瘤の存在しか表現できない上に,1症例に数時間かかり1日1症例の作成で精一杯だった。しかし,当時から造影効果によって3D画像の画質が変化すること,急速注入や注入量を増やすことで血管形状の再現性が高くなることはわかっていた。
1990年代半ばにボリュームレンダリング(VR)が可能な3DWSが登場し,カラーで血管や腫瘍,骨構造,石灰化などを可視化できるようなった。現在の画像処理の手法のほとんどはこの時点で出来上がっていたと言える。
2000年代に入ってCTの多列化が進んだ。札幌医科大学附属病院には2000年に4列のCTが導入されたが,同時にさまざまな機能を持った3DWS(M900)が入り,1mm以下の再構成スライス厚を使用して微細な血管構造などの描出が可能になった。しかし,4列CTでは頭部の撮影に30秒以上の時間がかかっており,個人の体重に合わせた造影剤量の適正化には至らなかった。

図1 初めて3D-CTAで動脈瘤を描出できた症例(1992年)

図1 初めて3D-CTAで動脈瘤を描出できた症例(1992年)

 

64列MDCTの登場と3Dラボ

2007年に64列のマルチディテクタCT(MDCT)が導入され,同時にサーバクライアントタイプのWS(ZIOSTATION)に更新された。64列MDCTでは撮影時間が大幅に短縮され造影剤量の適正化が可能になり,高いCT値を確保することで1mm以下の穿通枝の描出や頭頸部を1呼吸で撮影した3D-CTAの取得が可能になった。また,WSがサーバクライアントになることで同時に複数のスタッフによる処理が可能になり,放射線部内に“3Dラボ”を立ち上げ多くの症例に対応する体制を構築した。3Dラボは専用の部屋で処理を行っていたが,撮影を行うスタッフとコミュニケーションが必要になってきたことから,2021年にはCT室にもWSを設置して体制を拡張した。

手術支援画像としての3D画像処理

3Dラボの立ち上げなど放射線部の体制は整ったものの,脳神経外科医の手術支援のための3D画像への期待はより高かった。その期待や要望に応えるため,2008年から“3D-CTカンファレンス”を開いて術前画像に対するさまざまな意見交換を行った。このカンファレンスを通じて,従来の3D画像が病変部の評価,いわゆる“可視化”がメインであり,手術支援には不十分だったことが明らかになった。求められたのは,(1) 動脈・静脈を含めた徹底的なセグメンテーション,(2) MR画像とのFusion Image,(3) 開頭シミュレーションである。
(1) 徹底的なセグメンテーションでは,図2のように動静脈奇形の症例でfeeder,nidus,draining veinはもちろん,正常な動脈や静脈を含めてしっかりとセグメンテーションして表示することが大切である。(2) CTとMRIのFusion Imageによる手術支援では,MRIの3D FLAIRの画像から脳実質や腫瘍を,Steady State系の画像から脳幹,脳神経を抽出してFusionし,手術支援の画像を作成してきた(図3)。(3) 開頭シミュレーションでは,中大脳動脈瘤の症例において,3D画像では中大脳動脈の近位部から分枝する微細な動脈が動脈瘤に隣接している画像を事前に描出,さらに開頭と同じ方向からセグメンテーションした手術支援画像を作成したことによって,実際の手術においても同様な所見があり,隣接していた動脈をていねいに剥離し,安心してクリッピングができたと外科医から連絡があった(図4)。

図2 徹底的なセグメンテーションとMRIとのFusion Image

図2 徹底的なセグメンテーションとMRIとのFusion Image

 

図3 CT・MRIのFusion Imageによる手術支援画像

図3 CT・MRIのFusion Imageによる手術支援画像

 

図4 手間をかけた三次元画像は手術支援の役に立っている

図4 手間をかけた三次元画像は手術支援の役に立っている

 

3D画像処理の課題

手術支援画像の課題は,作成技術や意識に施設差があることである。脳神経領域での穿通枝や皮質枝といった微細血管の描出が可能な撮影を,すべての施設ができるわけではない。描出のためには,造影剤量の適正化,撮影のタイミングなど適切な撮影法の工夫が求められる。また,3D画像は作成者によって作り方が異なることも課題で,同じ脳動脈瘤の症例でも,手術支援を意識するかどうかで作成される3D画像は大きく異なることとなる。現在,日本診療放射線技師会(JART)の画像等手術支援分科会では,「画像等手術支援(Intelligent imaging)認定診療放射線技師」認定制度を立ち上げ,3D画像作成のスキルの向上や標準化をめざして,認定事業やハンズオンセミナーなどの育成事業を行っている。こういった施設や個人の技術の向上を支援し,画像作成技術の均てん化をめざした活動を行っている。

次世代WS「REVORAS」の初期経験

ザイオソフトの新しいWSであるREVORASが,ITEM 2022で発表された。REVORASは,インターフェイスを一新し画像処理の質を高めたまったく新しいWSとして開発された。ここでは,プロトタイプを先行して使用した印象を紹介する。
使い勝手の面では,REVORASでは使用できるボリューム数が増え,徹底したセグメンテーションを意識した画像作成に有効だと感じた。また,Ziostation2では,すべてのデータがそろわないと3D画像作成ができなかったが,REVORASでは3D解析で必要なデータを後から追加できるようになった。これによって検査が終了したモダリティの画像から作成を始めることができ,時間を無駄にすることなく効率的な作成が可能になると考えられる。
さらにもう1つの特徴が,新たに追加された“レンブラント”と名づけられた新しい画像表示方法である(図5)。影の処理方法が一新されて奥行き感が強調された画像処理が可能で,脳表や開頭視野での奥行き感を表現しやすく,手術支援に有効だと感じている。

図5 新しい画像表示方法“レンブラント”の脳神経領域での応用

図5 新しい画像表示方法“レンブラント”の脳神経領域での応用

 

まとめ

新しい所属先である柏葉脳神経外科病院でも,医師とのコミュニケーションと,その上での3D画像作成の重要性を実感しており,札幌医科大学附属病院で培ってきたメソッドは間違いなかったと感じている。次世代WSのREVORASも含めて,手術支援のための3D画像作成に少しでも貢献できればと考えている。

 

平野  透 Hirano Toru
1983年 京都放射線技術専門学校(現・京都医療科学大学)卒業。同年 札幌医科大学附属病院中央放射線部入職。2022年 柏葉脳神経外科病院先端医療研究センター入職。2010年に金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻 博士前期課程を修了し,2019年 同学位(博士)授与。

 

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