技術解説(ザイオソフト)

2015年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

「Ziostation2」による心臓領域の最新アプリケーション

安達 雅昭(臨床応用開発グループ)

近年,医療機器の進歩はめざましく,MRIやCTなどさまざまな機器で技術が向上している。特に心臓領域においては,CTであれば,高分解能化,多列化,低被ばく化など大きく進歩を遂げることにより,形態診断はもとより機能診断を行えるようになってきた。MRIにおいても機能診断技術が向上しており,後述するMRIによる心筋T1マップも機能診断の最新技術であり,現在注目が集まっている。本稿では,「Ziostation2」におけるバージョン2.4正式リリースに伴い,最新の心臓領域のアプリケーションをご紹介する。

■MR心筋T1マッピング

心臓MRIにおける遅延造影解析(late gadolinium enhancement:LGE)は,現在多くの施設に普及してきたが,LGEは視覚的評価法であり,拡張型心筋症(以下,DCM)症例の約60%で遅延造影が認められなかったとの報告もある1)。造影剤投与後の経過時間やTIなどの影響により画像コントラストが変化してしまうことや,DCMやアミロイドーシスなどびまん性線維化が生じると,LGEは病変を検出できない可能性を示している。
“MR心筋T1マッピング”は,心筋の定量的な評価が可能であり,遅延造影の結果をより精度高く評価することができる。遅延造影の強さはT1短縮の程度を反映しているので,直接T1を計測することで定量的な評価が可能となっている。手法としては,心電図同期を行いながら息止めをし,同じ時相でTIを経時的に変化させていき,異なる複数のデータを得ることにより,各画像の信号値から得られたT1緩和曲線からT1値を求めマッピングが可能である。また,造影前,造影後のT1マッピングから,血液のT1値,ヘマトクリット値を利用して,心筋組織細胞外液分画(extracellular volume fraction:ECV)の定量評価が行える。Wongらの報告2)によると,線維化を伴った組織は隙間が正常例に比べて多く,より多くのGdを取り込む。正常なECVは20〜30%と言われており,それ以上では線維化が進んでいると一般的には言われている。図1はECVのBull’s Eye Mapであるが,本ソフトウェアでは,全体,内膜側,外膜側での3種類の表示も可能であり,1〜12分割のセクター分割機能も備えている。

図1 MR心筋T1マッピング

図1 MR心筋T1マッピング

 

■CT心筋血流解析

CTにおける灌流の評価は,2008年頃より研究ベースでは海外で多く進められてきたが,Georgeら3)によれば,CTAでの狭窄率50%以上+SPECTでのパフュージョンの欠損のある領域をゴールドスタンダードとし,CTAでの狭窄率50%以上+CTでのパフュージョンの欠損のある領域を比較した結果,陰性的中率は非常に高かった。さらに,transmural perfusion ratio(以下,TPR)という指標にて虚血心筋と正常心筋の比較も行っており,虚血領域にてTPRが有意に低下することを認めたと報告している。
“CT心筋血流解析”は,Stress/Restの1フェーズの心臓CTデータを使用して,左室心筋血流のTPRをそれぞれ,もしくは同時に解析するソフトウェアである。左室心筋と冠動脈を自動抽出し,解析結果をフュージョン表示し,右側にはBull’s Eye Mapを表示する(図2)。17セグメント表示にも対応し,虚血エリアの把握が容易になっている。

図2 CT心筋血流解析の解析画面

図2 CT心筋血流解析の解析画面

 

■CT心筋ダイナミック血流解析

“CT心筋ダイナミック血流解析”は,心電図同期にてダイナミック撮影された心筋ボリュームデータを,“非剛体位置合わせ”を用いることで各位相での位置ズレを補正し,パフュージョン解析を行うソフトウェアである。ダイナミックCTによる灌流評価は,どのモダリティよりも心筋虚血において鋭敏な感度を持っているが,ダイナミック撮影を行ったデータに対して従来,位置合わせを正確に行うことができなかったため,研究ベースにとどまっていた。本アプリケーションでは,非剛体位置合わせにより,正確な位置合わせが可能となり,短時間で虚血の評価を行うことが可能になった。従来の心筋虚血の評価はSPECTやMRIが主流であったが,より短時間で撮影できるCTにて虚血の評価を行うことができる(図3)。また,冠動脈CTデータとのフュージョン表示により,虚血領域の責任血管の同定を可能としている(図4)。

図3 CT心筋ダイナミック血流解析の解析画面

図3 CT心筋ダイナミック血流解析の解析画面

 

図4 解析結果をVR画像とフュージョン表示

図4 解析結果をVR画像とフュージョン表示
側壁から下壁への血流が低下している。

 

■TAVR術前プランニング

2013年10月より,日本においても経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR/TAVI:以下,TAVR)が保険償還可能となり,今後,日本において急速に普及していくと考えられる。代表的なアプローチとして経大腿アプローチと経心尖アプローチがあるが,“TAVR術前プランニング”は,それぞれのアプローチに対して専用のレイアウトを用意して,TAVRをワークフローに沿って効果的にサポートすることが可能である。今回リリースされたバージョンでは,機能強化により弁輪面の自動抽出の追加,自動計測機能の追加,レポート機能の追加など,ニーズに合わせた新機能が追加された。
大腿動脈から弁を留置する経大腿アプローチでは,血管の蛇行や狭窄,石灰化の評価に加え,シースサイズを選択してシミュレーションを行うことが可能であり,計測ポイントも自動で計測する(図5)。TAVRに関するガイドラインやデバイスメーカーのプロクタリングで推奨されている術前計測に対応するレポート出力機能も,今回新たに搭載した(図6)。心尖部から弁を挿入する経心尖アプローチに対しては,心筋の厚み,大動脈弁へのアプローチ角度など,TAVRの術前に必要な情報を計測できる。また,TAVRにおいて,最も重要な術前シミュレーションに弁輪面の解析がある。TAVR術前プランニングでは,大動脈の自動抽出および弁輪面の自動計測を可能としており,従来の弁輪面計測と異なり,1つのフェーズをトレースするだけで1心拍分のすべてのフェーズを追従した自動計測が可能だ。この機能は,“PhyZiodynamics”テクノロジーにより実現されたZiostation2だけの機能である。また,サーフェスレンダリング表示にも対応し,より正確なシミュレーションを可能としている(図7)。

図5 TFアプローチ経路解析画面とシースシミュレーション(画像は16Fr)

図5 TFアプローチ経路解析画面とシースシミュレーション(画像は16Fr)

 

図6 レポートフォーマット

図6 レポートフォーマット

 

図7 弁輪面の自動計測とサーフェスレンダリング表示

図7 弁輪面の自動計測とサーフェスレンダリング表示

 

●参考文献
1)McCrohon, J., et al. : Disease Using Gadolinium-Enhanced Cardiovascular Magnetic Resonance Differentiation of Heart Failure Related to Dilated Cardiomyopathy and Coronary. Circulation, 108, 54~59, 2003.
2)Wong, T.C., et al. : Association Between Extracellular Matrix Expansion Quantified by Cardiovascular Magnetic Resonance and Short-Term Mortality. Circulation, 126, 1206~1216, 2012.
3)George, R.T., et al. : Combined adenosine stress perfusion and coronary angiography using 320-row detector dynamic volume computed tomography in patients with suspected coronary artery disease. Circulation, 118(Suppl.), 936, 2008.

 

●問い合わせ先
ザイオソフト株式会社
〒108-0073
東京都港区三田1-4-28
TEL:03-5427-1921
http://www.zio.co.jp

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