New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)
2014年9月号
MRトラクトグラフィーをガンマナイフの治療計画データにフュージョンし副作用の防止や安全性を向上 〜外来や手術室、カンファレンス室など院内に3Dネットワークを構築し高度な循環器診療をサポート
千葉県循環器病センター
千葉県市原市にある千葉県循環器病センター(病床数:220床)は1998年設立。脳血管、心血管など循環器系疾患に対する高度で専門的な医療を行うセンター機能の役割と、市原および山武、長生、夷隅医療圏の地域中核病院として一般医療を提供している。同センターでは、ザイオソフトのZiostation2のネットワーク型を導入した3D画像ネットワークを構築し、手術室や外来、カンファレンス室など、院内各部署で3D画像が活用されている。ガンマナイフ治療でのZiostation2の“MRトラクトグラフィー”を利用した治療計画など、3D画像ネットワークの運用を中心に取材した。
脳血管・心血管の循環器系疾患に対する専門医療を提供
千葉県循環器病センターは、脳神経外科、心臓血管外科、循環器科、神経内科など13科の診療科で、脳血管疾患、心血管疾患に対する専門的な診療を行う。また、専門診療部として、脳卒中診療部、ガンマナイフ治療部、成人先天性心疾患治療部、低侵襲血管内治療部を設けている。小野純一病院長は、センターの診療の特徴について、「循環器疾患に対する高度なセンター機能を充実させつつ、過疎化が進みつつある地域の中核病院としての役割も果たしています。各診療科が高い診療レベルを持つと同時に、心臓や脳、内科と外科などの垣根なくチーム医療を行うことがセンターの特徴です」と述べる。
診断・治療機器に関しては、CTが320列のADCTと16列の2台、MRIは3Tと1.5Tの2台体制で、そのほかガンマカメラ1台、血管撮影装置は移動型を含めて4台が導入されている。高度医療を支える機器やシステムの重要性について小野病院長は、「機器が進歩した現在では、機器や画像処理システムを活用して、診断に必要な情報を可視化することは、質の高い医療の提供のために重要です。3D画像やシミュレーションは、若い医師の教育に役立つことはもちろん、術中のナビゲーションなど手技の際にも有益な情報をもたらします」と述べる。
診療科のニーズに応え院内18台の3Dネットワークを構築
同センターにザイオソフトのワークステーション(M900 Quadra)が初めて導入されたのは2003年。2006年にガンマナイフ治療部の新棟の増築とMRIの導入に合わせて、院内に7台の端末を設置したネットワーク型に移行、さらに2013年には、3T MRIの導入に合わせてZiostation2を最新バージョンにバージョンアップすると同時に、院内の端末を18台に拡大して運用されている。3Dネットワークには、CT、MRI、RIが接続され、VGRクライアントはCT室、MRI室、読影室、ガンマナイフ室、RI室、血管撮影室とDSA、手術室、ICU、SCU、脳神経外科および神経内科の外来と病棟、カンファレンス室に設置されている(ネットワーク構成図参照)。3D画像ネットワーク構築の経緯を、放射線科の丸 繁勘技師は次のように説明する。
「スタンドアローンタイプを導入した当初から、各診療科の3D画像へのニーズが高く、ネットワーク型への移行は必然の流れでした。3Dネットワークの構築は診療を支えるインフラ整備であり、電気や水道のように院内のどこにいても、必要なときに3Dデータが利用できることをめざして構築しました」
診療放射線技師は14名。3D画像の作成は、検査を行う技師が作成まで担当する体制で、320列CTは3名、3T MRIは2名で行っている。3D画像の作成作業では、Ziostation2のワークスペース機能が有効だと丸技師は言う。「放射線技師が途中まで作成した3Dデータの作業状態をワークスペースに保存しておけば、別のクライアントで続きから作業できます。放射線科で作成した3Dデータを各科の医師が続いて処理したり、途中まで作成し医師のいる検査室や手術室で確認してもらいながらフィニッシュするなど、院内でのコラボレーションが容易にできることが最大のメリットです」
1998年から7000例のガンマナイフ治療を実施
同センターでは、1998年の開院と同時にガンマナイフ治療をスタートした。これまで7000例以上を実施し、全国でも有数の治療実績を誇る。2012年には年間450件の治療を行っている。対象疾患は転移性脳腫瘍が7割を占め、そのほか良性脳腫瘍、脳動静脈奇形など血管障害、突発性三叉神経痛などとなっている。
ガンマナイフ治療部は、永野 修部長と青柳京子医長、看護師、診療放射線技師、事務スタッフがチームを組んで治療を行う。2006年には、ガンマナイフ治療のための外来診察室や待機室などを設けたガンマナイフ診療棟を増設し、患者が安心して集中的に治療が受けられる環境を整えた。さらに2013年にはガンマナイフを最新機種の“パーフェクション”にバージョンアップした。ガンマナイフ治療について永野部長は、「患者さんに負担をかけないように、できるだけ短時間でスピーディな治療を心掛けています。治療当日のワークフローを短縮するため、紹介元や外来でのMR画像をもとにあらかじめ治療計画を行う“プレプラン”を行っています」と説明する。
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トラクトグラフィーデータを治療計画に重ねて線量分布を確認
同センターでは、ガンマナイフの治療計画の際に、Ziostation2の“MRトラクトグラフィー”で作成した神経線維画像を、ガンマナイフの治療計画装置である“ガンマプラン”に転送し、治療計画データとフュージョンして、腫瘍と神経線維の走行、線量分布を3D画像で確認することで、より正確で安全な治療を行っている。
データは、プレプラン時の3T MRIで拡散テンソル画像法(Diffusion Tensor Imaging)で撮像し、Ziostation2で錐体路の描出を行う。ガンマプランは、CTやMRIなどさまざまな画像と治療計画データをフュージョンする“Co-Registration”機能があるが、2D画像しか扱えないため、MRトラクトグラフィーで描出した錐体路を、3D画像を2Dにリスライスして転送する。川﨑康平技師は、MRトラクトグラフィーを用いた治療計画について次のように説明する。
「Ziostation2でのトラクトグラフィーの描出は、ROIを設定するだけで簡単に行えます。ガンマプランでは、転送されたトラクトグラフィーの画像を再構成して、治療計画データとフュージョンし、腫瘍と線量分布との関係や走行を画面上で確認することが可能です」
永野部長は、ガンマナイフ治療におけるMRトラクトグラフィーの有用性について、「正常な組織に過剰な線量をかけないことは、治療後の副作用の出現を抑えるために重要なことです。神経線維の走行が治療計画装置で確認できれば、照射の方法を見直すことや錐体路への照射線量も把握でき、治療後の副作用の出現を予想することが可能になります。さらに、今後、症例を重ねていけば錐体路への照射線量と副作用出現の程度について、定量的な評価が可能になるのではと考えています」と述べている。
■Ziostation2のMRトラクトグラフィーのガンマナイフ治療への応用
◆千葉県循環器病センターZiostation2ネットワーク構成図
3Dによる可視化によってより安全な治療を実現
そのほか、Ziostation2では、“CT冠動脈解析2”を用いて心臓カテーテル検査や心筋焼灼術(アブレーション)の術前確認などを行っている。また、3T MRIによる心臓検査件数も多く、“MR心機能解析2”による心機能解析にも取り組んでいる。さらに、ADCTによるCTパーフュージョン、4D動態解析などを活用している。丸技師は、4Dの利用について、「脳血管のCT-DSAを作成し、ガンマナイフの脳動静脈奇形の治療後の閉塞の確認や脳卒中、血管狭窄の評価などを行っています」と言う。
Ziostation2を用いた今後の展開について永野部長は、「ガンマナイフ治療の精度を高め、副作用など安全性を向上させるためにも、錐体路に限らず視放線などの脳の神経線維組織の可視化に取り組んでいきたい」と述べる。
循環器医療に専門特化した同センターの高度な診療をZiostation2のネットワークが支えている。
(2014年7月30日取材)
千葉県循環器病センター
千葉県市原市鶴舞575
TEL 0436-88-3111
http://www.pref.chiba.lg.jp/junkan/
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