New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)
2013年11月号
大容量、高速の3Dネットワークの導入で診療科でのフル機能画像処理による3Dデータ利用が拡大
シンスライスデータ読影、術前シミュレーションなど放射線科、脳神経外科、循環器内科で活用
佐賀県医療センター好生館
佐賀県医療センター好生館は、2013年5月に現在地に移転し新築オープンした。新病院では、臓器別、疾患別にセンター化を進め、救急医療や循環器医療などの充実を図ったほか、320列のArea Detector CT、3T MRIなどの導入や、ハイブリッド手術室の拡充など診断・治療機能が強化された。同院に、ネットワーク対応型の3D医用画像処理ワークステーションである「ziostation2 Type1000」が導入された。病院全体でのziostation2の活用の現況について、放射線科のほか、脳神経外科、循環器内科での運用を取材した。
●ziostation2
ネットワーク型の導入で院内の50クライアントで3D作成が可能に
新病院の3Dネットワークは、院内でのフル機能の画像処理を可能にするエンタープライズモデルのziostation2 Type1000で、シンスライス画像サーバーとして12TBのZIOBASEを備え、ziostation2のフル機能が利用可能なVGRクライアントは、院内50台の端末にインストールされている。設置されているのは、放射線科のほか、脳神経外科、循環器内科、呼吸器外科などの外来、病棟のカンファレンスルームなど。同時処理可能クライアント数は16台で、汎用ブラウザで3D画像の閲覧や処理が行えるVersaWebも利用できる(システム構成図参照)。
同院では、旧病院時代の2006年に、いち早くネットワーク型の画像処理ワークステーション(他社製)を導入し、放射線科での読影や診療科での3D利用に活用してきた。放射線部の岸川 誠技師は、「マルチスライスCTの登場で、3D画像処理やシンスライスデータの活用が必須になると考え、電子カルテ端末を使って診療科が院内から利用できる環境を整えました」とねらいを説明する。旧病院での3D利用は、各科に定着し広がっていったが、電子カルテ端末での利用は機能に制限があり、また、利用が高まるにつれアクセスが集中すると制限がかかることが多くなり、業務に支障が出ていたという。新病院では、同時アクセス数の拡大やネットワークのスピード、画像処理の機能性などを考慮してziostation2の導入に至った。岸川技師は、「ziostation2では、トータル処理可能画像枚数が2万枚、VGRクライアントの同時接続も16台と拡大しました。そのうち使用頻度の高い放射線科に8台、残りを院内用と振り分けたことで、アクセス制限を気にすることなく利用できるようになりました。また、自動前処理機能によって、モダリティからのデータ転送と同時に、バックグラウンドで決められた画像処理が可能で、作成業務の時間短縮にもつながっています」と評価する。
放射線部で3D画像処理を担当するのはCT・MRグループの5名で、1日の画像処理のオーダは7件。ziostation2の使い勝手について岸川技師は、「ピクセル単位のデータの再現性が高いと感じます。マスク処理などで作業を行う際にも、正確に処理ができます。また、画像処理の状態を保存して共有できる“ワークスペース”機能によって、診療科の先生方とコミュニケーションしながら作業が進められるようになりました」と述べている。
●放射線科
シンスライスデータによる読影やステント留置の計測に活用
放射線科のスタッフは、画像診断医5名、放射線治療医1名、そのほか1〜4名の研修医および実習生が在籍する。読影室には、診察室を含めて12の読影ブースがあり、すべてにVGRクライアントがインストールされ、PACSと連動して読影が可能な環境が整っている。同科の眞武邦茂医長は、「ziostation2の導入で、処理に余裕ができ、以前に比べて自由度が高まって、ストレスなく使えるようになっています」と新病院での3Dネットワークを評価する。
放射線科では、CT、MRI、単純写真、血管造影、透視撮影、RIなどを読影しレポートを作成している。読影では、PACS(SYNAPSE)から連携して、ziostation2での読影が可能だが、放射線科ではシンスライスデータによるMPR画像の確認に活用していると眞武医長は言う。
「横断像だけでは評価できない多方向の腫瘍の浸潤などの確認には、MPRを使います。術前のがんの広がりの確認など連続性や詳細な確認には横断像だけでは不十分で、3DWSのウエイトが高まっています。ziostation2ではサーバーの保存容量が増え、処理スピードが向上したことで読影の約7割でシンスライス画像を確認しています」
眞武医長は、血管内治療を主としたIVRを専門とするが、心臓血管外科とタイアップして、大動脈系のステントグラフト挿入術および下肢動脈のステント留置術を月間2〜6例施行している。このステントグラフトおよびステント留置のシミュレーションを3D画像を使って行っている。ziostation2の使い勝手について眞武医長は、「機能が多岐に渡り使いこなすまでに少し時間がかかりましたが、細部まで設定が可能で従来よりもできることが広がったと感じます」と評価する。
●脳神経外科
術前CTサブトラクション、MRトラクトグラフィーを活用
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脳神経外科では、脳卒中、頭部外傷、脳腫瘍などへの高度な画像技術を駆使した治療の提供と、急性期リハビリテーションによる生活の質を重視した診療体制を提供している。坂田修治部長は新病院での現況について、「リハビリテーションのさらなる充実と、ハイブリッド手術室を含めた4室の血管撮影装置と手術ナビゲーションシステムによる安全で精度の高い手術が可能な環境を整えました」と述べる。
脳神経外科では、ziostation2の3D画像を、術前シミュレーションなど手術支援を中心に活用している。術前の3D画像作成を担当する吉岡史隆医長は、ziostation2について、「画像処理の速度が速く、ネットワークでフル機能が利用できるようになったので、外来や病棟で作業が可能になりました。作成した3D画像を使って、術前カンファレンスで低侵襲で機能温存が可能な術式やアプローチの方向などの検討を行っています。3D画像によって、血管と神経や脳の重要構造物との位置関係が容易に把握でき、手術の精度が向上しています」と説明する。
3D作成では、“CTサブトラクション”の精度が高いことを吉岡医長は評価する。「造影後のCTデータと差分することで、骨を抜いて血管だけを描出することが可能です。ziostation2では、骨に近い血管でも情報が欠けることなく、そのデータをもとに脳実質や腫瘍などとフュージョンすることで、より正確な3Dが作成できます」
また、MRIのDTI(Diffusion Tensor Imaging)データから神経線維を描出するトラクトグラフィーも、術前シミュレーションとして作成している。手術ナビゲーションシステムでもトラクトグラフィーの作成が可能で、術中はこちらのデータを使用するが、ziostation2のほうが精度が高いため、ziostation2の“MRトラクトグラフィー”を参照して、ナビシステムの画像を修正して使用しているという。
●循環器内科
冠動脈解析を中心に心臓CTの参照、解析に利用
循環器内科は、虚血性心疾患、心不全、不整脈などに高次救急を含めて対応する。年間約1000件の入院があり、400件弱のPCIを行う。医師は研修医を含めて9名。貞松研二部長は、新病院での診療について、「CTや血管撮影装置が充実し、救急を含めて迅速に精度の高い治療が行える体制となりました」と言う。
3D画像の活用としては、心臓CTの冠動脈解析を中心に、冠動脈バイパス術後評価、下肢動静脈の描出、アブレーション治療における左房形態などの術前評価などが行われている。VGRクライアントは、カテ室にも設置され、PCI手技前のカンファレンスで冠動脈CTのVRやCPRによる確認や、術中にはカテ室内のモニタに画像を表示して手技を支援する。
現状では、冠動脈解析は放射線部から提供される再構成画像が高い完成度があるため、循環器内科医が3Dを作成する機会は少ないが、PCIの手技前に石灰化やプラークの把握や解析のために、ziostation2を使っているという。貞松部長は、「ziostation2によって高精細で精度の高い冠動脈解析のデータが提供されるようになりました。新病院ではネットワークでのWSの利用に制限がなくなったので、見たい時に場所を選ばず3Dの閲覧や作成が可能で機動性が良くなりました。ziostation2は機能が豊富で使いこなすというところまでいっていませんが、今後、機能を把握してフルに活用していきたい」と期待を述べている。
■ziostation2を用いた臨床画像
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(2013年9月10日取材)
地方独立行政法人
佐賀県医療センター好生館
佐賀県佐賀市嘉瀬町大字中原400
TEL 0952-24-2171
http://www.koseikan.jp/
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