技術解説(シーメンスヘルスケア)

2020年8月号

Women's Imaging 2020 最新技術

PET・CTによる乳がん診断

「乳癌診療ガイドライン2018年版」では,StageⅠ・Ⅱ乳がんの術前にCT,PET,PET・CTによる全身検索を行わないことを弱く推奨するとされているが,40歳未満,HER2(+),basal-likeなどのハイリスク群における転移検索に有用との報告1)や,PETの骨転移検出感度は骨シンチグラフィよりも高いとの報告がある2)。そこで,乳がん診断においてSiemens HealthineersのPET装置がどのように寄与できるか紹介する。

●速度可変型連続寝台移動“FlowMotion”

FlowMotionはリニアモーター駆動式寝台を採用し,撮像範囲や撮像時間を臓器や領域ごとに最適化できる。一連の全身撮像の中で乳房など重要臓器に適した撮像が可能なため,追加撮像をせずに質の高い画像が提供できる。患者負担の軽減やスループットの改善も期待できる。

●高分解能画像再構成

Siemens HealthineersのPET装置は,512×512の高分解能マトリックスを選択可能である。さらに,画像再構成にPSF補正を組み込むことで視野辺縁部における分解能の劣化を防ぎ,小さな病変の描出能が向上する。現在販売されているほとんどのPET装置にTOFが実装されている。TOFは薬剤集積の位置を絞りこむことで,感度や空間分解能を向上させる。最新型「Biograph Vision」は880×880マトリックスの選択も可能であり,TOF時間分解能は214 psである。

●描出能向上の工夫

図1は,乳がん描出能向上に関する工夫例である。うつ伏せになることで乳房を下垂・伸展させ,胸郭の動きを抑制し,乳房領域をFlowMotionにより時間をかけて撮像,画像再構成ではTOF+PSF,高分解能マトリックス,薄いスライス厚の使用により,病変の異常集積が明瞭になり(図1),乳腺構造もくっきりととらえることができている。

図1 乳がんにおける描出能向上の例 (画像ご提供:山梨PET画像診断クリニック)

図1 乳がんにおける描出能向上の例
(画像ご提供:山梨PET画像診断クリニック)

 

●参考文献
1) Riedl, C.C., et al. : Retrospective analysis of 18F-FDG PET/CT for staging asymptomatic breast cancer patients younger than 40 years. J. Nucl. Med., 55(10): 1578-1583, 2014.
2) Caglar, M., et al. : Detection of bone metastases in breast cancer patients in the PET/CT era : Do we still need the bone scan? Rev. Esp. Med. Nucl. Imagen Mol., 35(1): 3-11, 2016.

 

【問い合わせ先】
コミュニケーション部
TEL 0120-041-387
URL https://www.siemens-healthineers.com/jp/

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