技術解説(シーメンスヘルスケア)
2014年12月号
Digital Radiography(DR)を極める【動画編】
Hybrid OR構築の留意点と手術支援3Dイメージング技術の紹介(システム:Hybrid OR)
大島 克士(シーメンス・ジャパン(株)AXビジネスマネージメント部)
Hybrid ORとは,手術室と血管造影室の両方の機能を併せ持った部屋であることが広く知られるようになった。また,周知度の向上に伴い,当社装置も全世界で約600室,本邦でも約50室と設置数が増加し,この先数年は設置数増加の勢いが続く模様である。本稿では,このHybrid OR構築の際の留意点と,手術を支援する当社の3Dイメージング技術について紹介する。
■Hybrid OR構築の一般的留意点
Hybrid ORを設置する場合の留意点は, (1)HEPAフィルタ(図1),(2)モニタ(図2),(3)手術用照明灯などの医療機器の位置を血管撮影装置との位置関係を考慮しながらレイアウトすることである。特に,(1)のHEPAフィルタの位置は天吊り式の血管撮影装置であっても,床置き式の血管撮影装置であっても患者直上の設置を心掛け,清潔度を保つためにラミナー・エアフローを確保することが重要である。また,(2)の手術時のモニタの位置も,執刀医への表示だけでなく麻酔科医・メディカルスタッフへも表示を行うことは,手術室内で情報を共有する観点から必要かつ重要である。
さらに,当然手術室であるので,術者のストレスを少なくする環境づくりも大切であり,そのために(3)の手術用照明灯やそのほかの医療機器をなるべく通常の手術室と同様な仕様で設置することも重要である。一般的に開胸・開腹手術が多く行われる場合は,床置き装置(図3)の方がラミナー・エアフローを阻害するものが少ないので好まれている。当社は医療現場のニーズに応えられるように天吊り・床置きの血管撮影装置を両方とも提供できる。
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■手術支援3Dイメージング技術
現在のHybrid ORでは,いわゆるCTライクイメージングであるコーンビームCT(以下,“syngo DynaCT”)も手術中の画像支援として用いられている。特に,手術室では,麻酔器や超音波装置などの医療機器が患者頭側周辺にて用いられるので,患者頭部方向からアームを挿入して回転させるよりも,患者側方よりアームを挿入して回転撮影を行うことが求められており,このニーズに天吊り・床置きいずれも対応できるのは当社の利点と言える。このsyngo DynaCTは,従来の高コントラストを中心とした3D angioやDA/DSAでは撮影が難しかった低コントラストの描出能が高く,ステントグラフト内挿術におけるエンドリークの確認(図4)などでも利用される。また,術前の大動脈などのCT画像を血管撮影装置の透視画像に重ねて3D ロードマップとして利用する場合にも用いられ,手術支援画像として役立てられている。最近では大動脈弁近傍のsyngo DynaCT撮影を行い,TAVR(経カテーテル的大動脈弁置換術)をガイドする“syngo Aortic ValveGuide”(図5)というソフトウエアも導入され,さらなる3Dイメージング技術の手術中の利用が進んでいる。
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以上,Hybrid OR構築の留意点と,心臓領域における手術支援3Dイメージング技術を紹介したが,今日では脳神経外科領域,呼吸器外科領域,整形外科領域など幅広くHybrid ORの利用が始まっており,手術中の3Dイメージング技術の活用範囲はより広がると思われる。
【問い合わせ先】
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