技術解説(シーメンスヘルスケア)

2014年12月号

Digital Radiography(DR)を極める【動画編】

被ばく低減と高画質化の両立“CARE+CLEAR”と超低線量化を実現する最新テクノロジー(アプリケーション:CARE+CLEAR)

森田 英樹(シーメンス・ジャパン(株)AXビジネスマネージメント部)

昨今,血管内治療は治療技術の高度化,臨床適応の拡大により複雑化し,手技時間も延長傾向にある。血管撮影装置においては,臨床局面における被ばく低減はもとより,低線量領域における高画質化が求められている。
本稿では,シーメンスの被ばく低減と高画質化の両立を図る“CARE+CLEAR”技術をはじめ,最新の低線量化技術を紹介する。

■被ばく低減機構&画像処理エンジンCARE+CLEAR(図1)

シーメンスは,1994年から被ばく低減機構“CARE”の装置搭載を始め,近年では画像処理エンジン“CLEAR”を加え,CARE+CLEARとして,被ばく低減と高画質化を両立するための取り組みを続けている。
CAREは,被ばくを抑え(Dose saving),モニターし(Dose monitoring),管理する(Dose reporting)機構である。
CLEARは,X線発生,撮影条件の最適化(Optimizing Image Quality),臨床局面において必要なImage Qualityの至適化(Customizing Image Quality)を実現する機構である。これら機構のさまざまなプログラムがX線発生から画像表示に至るまでのすべての局面で複合的に機能し,イメージングチェーンを構築している。現在,シーメンスの血管撮影装置における低線量化の根幹となっている技術である。

図1 被ばく低減機構+画像処理エンジンCARE+CLEAR

図1 被ばく低減機構+画像処理エンジンCARE+CLEAR

 

■最新型エミッタを搭載し,画像処理以前の描出能を向上

低線量化には,低線量でも画質低下を伴わない高度な技術が必要となる。つまり,画像処理技術だけでなく,画像収集時点からの技術の向上が必要とされる。
シーメンスは,X線管内部のカソード部に最新型フラットエミッタ(図2)を搭載することにより,従来のフィラメントエミッタでは得られない,実効焦点サイズの縮小化,方向依存性の少ない,正方形により近い実効焦点の形成を可能にした。その結果,半影による画像のボケを抑え,視認性の高い画像描出を可能にしている。

図2 最新型フラットエミッタ

図2 最新型フラットエミッタ

 

■新素材Crystalline siliconを採用した超高感度フラットディテクタ

入射X線はシンチレータ層で可視光に変換され,フォトダイオード層にて電荷に変換される。各ピクセルの電荷を電気回路を通じて読み出す過程で電気ノイズも増幅され,画像信号として読み出される。つまり,フォトダイオード層〜電気回路には,画像信号となる電荷と電気ノイズが存在している。これが,画像描出能を左右するSENR(Signal to Electronic Noise Ration)を低下させる要因となる。
シーメンスはフォトダイオード層に新素材Crystalline siliconを採用することにより,その構造(図3)を生かし,ピクセルごとにアンプを搭載し,電気ノイズを抑制しつつ電荷のみを増幅させることでSENR向上を実現した(図4)。この技術により,これまでにない検出能の向上に成功し,従来では考えられない超低線量領域での画像描出を実現している(図5)。
現在,この最新の超低線量化技術を小児領域および不整脈領域(EP/ABL)の専用装置「Artis Q.zen」システムに搭載している。この超低線量化技術により,複雑化する最先端医療において被ばくを大きく低減することで,患者,術者の安全性の向上を期待できる。

図3 Crystalline siliconの構造化結晶構造

図3 Crystalline siliconの構造化結晶構造

 

図4 SENR向上による超低線量化の実現

図4 SENR向上による超低線量化の実現

 

図5 Crystalline siliconの超低線量領域での画像描出能

図5 Crystalline siliconの超低線量領域での
画像描出能

 

血管撮影装置において,常に求められるニーズは,低被ばく,高画質,安全性である。
シーメンスは画像処理技術や手技支援アプリケーションの開発のみならず,X線管,フラットディテクタなどの構造的な部分に最先端技術を搭載することでも,低被ばくと高画質化を実現している。今後もさらなる技術開発を行い,新たな超低線量化を追究していく。

 

【問い合わせ先】
コミュニケーション部
TEL 0120-041-387
http://www.healthcare.siemens.co.jp/medical-imaging

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