技術解説(シーメンスヘルスケア)
2014年3月号
US Today 2014 領域別超音波最新動向
ARFIを利用した組織硬度測定
斎藤 雅博(クリニカルプロダクト事業本部超音波ビジネス本部)
■Acoustic Radiation Force Impulse(ARFI:アーフィー)とは
ARFIは,超音波の照射によって物体を後方に押しやる力が生じる物理現象のことである。通常の超音波検査中にも生じているが,微弱であるため意識されることはない。ところが最近,この現象を積極的に利用して組織硬度を調べる新しい手法が登場し,話題になっている。
ARFIの効果を積極的に引き出すためには,音響的安全性が確保される範囲で,通常のBモード走査用のパルスよりもパワーの強い超音波パルスが必要になる。連続波ドプラで用いているような正弦波に近い波形であるが,持続時間は200〜300μs程度である。
■Virtual Touch Imaging(VTI)
ARFIの作用で生じる微小な組織変位量を測ることによって,組織の相対的な硬さのイメージングを得ることができる。硬い組織は変位量が少なく,軟らかい組織はそれが大きいことを利用する。これは,従来の用手的圧迫によるエラストグラフィと同じくストレインエラストグラフィの一種であるが,音響的作用を利用するためプローブをまったく動かす必要はなく,操作者の手技に依存するところが少ないのが特長である(図1)。
■Virtual Touch Quantification(VTQ)
ARFIはまた,生体深部の組織を振動させて,剪断弾性波(shear wave)を発生させることができる。生体組織を弾性体と仮定すると,shear waveの伝搬速度は組織硬度に相関することが知られているので,発生させたshear waveが伝搬する速度(m/s)を測ることによって,従来実現が難しかった硬さの数値測定が可能になった(図2)。
■Virtual Touch IQ(VTIQ)
VTQが1か所だけの測定であったのに対して,VTIQはROIの中において,shear wave伝搬速度を瞬時に多点測定してカラーマッピングを行い,組織弾性イメージングを表示するものである。さらに,イメージングにカーソルを合わせることによって,局所部位の組織硬度(shear wave伝搬速度)を計数表示できる(図3)。
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