技術解説(シーメンスヘルスケア)
2012年10月号
Digital Radiography(DR)を極める【静止画編】
「Mobilett Mira」と「wi-D」によるポータブル検査のワークフロー向上と画質改善
風川かおり(XP-SPビジネスマネージメント部)
■ワイヤレスフラットディテクタ搭載移動型X線撮影装置「Mobilett Mira」
フラットディテクタのX線画像診断装置への搭載は,静止画像対応の一般撮影装置から始まり,その後血管撮影装置,乳房X線撮影装置,X線TV装置などへと発展を遂げている。移動型X線撮影装置も例外ではなく,撮影装置本体の技術進歩と同時に,画像のデジタル化が進んでいる。
シーメンスのワイヤレスフラットディテクタを搭載した移動型X線撮影装置Mobilett Mira
は,時間や場所の制限のないフレキシブルな検査環境を実現するために,フラットディテクタによるフィルムレス環境の構築や,HIS,RISやPACSとの間を無線LANで結ぶワイヤレスネットワーク環境の実現,そして優れたモバイル性能と操作性にいっそうの磨きをかけた。これにより,ポータブル検査のワークフロー,および画質を大幅に改善させる。
■「wi-D」と画像処理システム
高精細ワイヤレスフラットディテクタwi-D(図1)は,ポータブル撮影の画質,およびワークフローにおいて大きなメリットをもたらす。
従来のフラットディテクタ搭載の移動型X線撮影装置では,フラットディテクタと装置本体がケーブルでつながれているため,ベッドに対して装置本体と反対側からポジショニングを行う際には,フラットディテクタのケーブルが患者様の上をまたいだり,ベッド周辺にある点滴棒やチューブなどに干渉してしまったりすることがあった。しかし,wi-Dを使用することにより,従来型のフィルムやCRと同じような取り回しが可能になった。病棟だけでなく,手術室の清潔環境下においても,ケーブルを気にすることなくポジショニングが行える。
また,wi-Dが1枚あれば,さまざまな撮影に対応することができる。いままでに必要だったフィルムの事前準備は一切不要で,撮影枚数の多い場合にもフラットディテクタ1枚でほとんどの撮影が可能である。病棟を回っている途中に追加オーダが出た場合にも,フィルムを取りに放射線科へ戻る必要はない。撮影から約10秒後に次の撮影に移ることができるため,例えば胸部と腹部のオーダが出ている場合も,胸部撮影後にwi-Dをそのまま腹部の方へ移動させることで,撮影が行える。半切サイズが不要な手や頭部の撮影などでは,X線を絞って照射された範囲を装置が自動的に認識し,トリミングしてくれる。
wi-Dは,移動型X線撮影装置本体に搭載されたドッキングステーションで常に充電され,撮影可能状態に保たれている。ポータブルの回診時以外に,フラットディテクタのみを移動させて充電するといったわずらわしさは一切ない。撮影場所を選ばず,いつでも必要な検査を行っていただくことができる。
さらに,一般撮影装置で培われたシーメンスの画像処理技術“Noise Control” “Harmonisation” “Gradation processing” “Diamond View” “Edge Enhancement”などを駆使し,少ないX線量で最適な画質を提供する低被ばく撮影も実現した。従来のポータブル撮影検査では,多くの撮影でグリッドが使われていた。しかし,Mobilett Miraは,ほとんどの撮影においてグリットを使用せずに撮影していただける。これは,フラットディテクタからX線管装置,画像処理装置,画像処理ソフトウエアまで,すべてを自社製で提供しているため実現できたことである。グリッドを使わないことにより,被ばくの低減,さらにポータブル撮影で出やすい"リス目"を抑えることも可能である。
Mobilett Miraには,大型の17インチ高精細モニタ(図2)を搭載しており,撮影後約3秒で画像が表示される。また,DICOM send機能により,瞬時に画像サーバへと送信することができる。早急に診断が必要な場合や,万が一に再撮影が必要な場合でも,即座に対応することができる。
■回旋型ケーブルレスカウンターバランスアーム
回旋型ケーブルレスカウンターバランスアーム(図3)は,いままでの「MOBILETT」シリーズの長所を継承し,さらに容易なポジショニングを実現させる。アーム周りに高圧ケーブルの露出が一切なく,稼働部にロックがない完全カウンターバランスアーム設計を採用している。このことにより,ポジショニング時にベッド周辺機器との衝突を防ぐだけでなく,ケーブル自体の絡まりを気にする必要もない。また,無駄な露出がないため,装置本体の清掃も容易に行える。さらに,アームの根幹部で180°の回転を実現させたため,狭い病室内での取り回しをさらに向上させた。X線管装置側にあるボタンを押すと,装置がゆっくり前進後進する。ベッドを挟んで装置本体の反対側でポジショニングする際に,装置側へ戻らなくても,このボタンによって装置本体を動かすことが可能である。
■高出力・短時間撮影・高画質
MOBILETTシリーズの最大の特長である出力も,さらに高いものになった。最大出力35kW,最大管電流450mA,最短撮影時間1msの高出力・短時間撮影・高画質を実現している。wi-Dは43cm×34cmの半切サイズで,本体には最大3000枚の画像の保存が可能である。高出力・短時間撮影・高画質を実現させたMobilett Miraにより,病棟においても一般撮影室と同等の画質で撮影することが可能である。
■緊急時や隔離病棟での使用
Mobilett Miraは,AC電源を用いての撮影にも対応し,感染症発生時などの隔離撮影室を容易につくり上げることができる。現像装置もフィルム運搬の必要もなく,1台で撮影,画像の確認,画像の保存まで行うことが可能である。最近では,災害時の備えとしての注目も高まっている。Mobilett Miraは,装置を使用していない間のバッテリの消耗を抑える"Ecoモード"を搭載している。また,万が一のバッテリ切れの際には,手動にて移動させることも可能である。
■無線ネットワーク環境の構築
Mobilett Miraは,DICOM 3.0にも対応している。検査前の準備として,DICOMネットワークによりワークリストを取得していただける。オーダリングシステムとの紐付けも可能なので,紙によるオーダ票の運用が不要になる。オプションで面積線量計を搭載させることも可能である。画像もDICOM sendを使用するだけで,画像サーバへ送信ができる。施設に無線ネットワーク環境を構築していただくことにより,さらにワークフローが大きく改善される。
検査オーダは,無線LANの環境下であればどこでも取得することができるため,病棟にいる間でも追加オーダ情報を取得することができる。いままでは,ポータブル検査に関するすべてのオーダが出そろうまで出動できなかったが,朝一でポータブル出動,病棟ごとにワークリストを取得する,といった運用も可能になる。また,これまで施設によっては現像作業を終了しフィルムを運搬するまで,読影が開始できなかったが,病棟からすぐに画像をサーバへ送信することができれば,早く読影を始めていただくこともできる。
■購入後6年間のトータル保守プラン
製品購入後の1年間の製品保証に加え,オプションでトータル6年間の保守プランを用意している。フラットディテクタやX線管装置などの高額部品に加え,本体およびフラットディテクタのバッテリなどの消耗品も含まれている。
Mobilett Miraのフラットディテクタwi-Dと回旋型ケーブルレスカウンターバランスアームは,ポータブルX線画像検査のまったく新しいスタイルを実現させる。
●診療放射線技師から見たMobilett Miraのメリット
宮澤 大輔
社会医療法人厚生会 木沢記念病院医療技術部放射線技術課主任
フラットディテクタを搭載した装置の大きなメリットは,撮影直後に画像をその場で確認ができることである。特に,救急室などで,すぐに画像が見たいという場合には,とても有用性がある。 Mobilett Miraでグリッドを使わず撮影された画像を見ると,従来のポータブル撮影装置で撮影された(グリッドを使用して撮られた)画像と比べ,遜色ない画質だと思う。撮影条件についても,被ばく低減が図れている点が評価できる。
さらに,回旋型ケーブルレスカウンターバランスアームにより,操作性が,従来のシーメンス製装置から向上しており,非常に良い。特に,日本では狭い病棟が多く,そのような施設でもポータブル撮影装置をベッドとベッドの間に入れて,アームだけを横に回旋させてポジショニングができるのは良いと思う。
緊急時の運用についても,万が一のことがあって病院のシステムがダウンしても,Mobilett Miraが1台あればX線画像の撮影ができる。ACコンセントからも電源をとれるため,電源の供給さえあればいつまでも,どこでも撮影を続けることもできる。これらのことから,緊急や災害においても,とても高い有用性があると思う。
保守サービスも充実している。運用しているうちに,フラットディテクタを落としたり,部品などの故障,破損の可能性があるが,6年間はすべてフルメンテナンスで修理してもらえるので,施設にとって非常に助かる。定期的に交換が必要なバッテリなどの消耗品が保守内容に含まれているのも,非常に良いと考える。
*本コメントは,展示会での実機デモに基づいたものである。
【問い合わせ先】ヘルスケアマーケティングコミュニケーショングループ TEL 0120-041-387