技術解説(フィリップス・ジャパン)

2023年1月号

医用画像ワークステーションガイド

医用画像ワークステーション「IntelliSpace Portal」のAIテクノロジーがもたらす令和時代の心機能解析

平久保 拓[(株)フィリップス・ジャパンEDIビジネスマーケティングスペシャリスト]

フィリップスの医用画像ワークステーション「IntelliSpace Portal」は,モダリティ専用画像処理ワークステーションから現在のマルチモダリティ(CT,MRI,核医学),マルチベンダーワークステーションへと発展してきた。現在,70を超えるアプリケーションを持ち,幅広い診療領域で活用されている。2021年よりVer.12となり,「Cardiac MR Analysis」の「Functional LV & RV解析」に人工知能(AI)技術が搭載された。これまで,Semi-automatic segmentationだった心筋トレースにAutomatic segmentation機能を追加し,解析者のワークフローが改善され,業務過多を解消する一助となっている。本稿では,AI技術を搭載したFunctional LV & RV解析が実現する,心機能解析の効率的なワークフローについて紹介する。

■AI搭載によるワークフローの改善

Cardiac MR Analysisは,心機能解析・遅延造影の解析アプリケーションである。一般的な心機能解析,Bull’s-eye(wall motion,wall thickness,wall thickening),volume over time graphから拡張機能の評価ができるなど,多くの解析が可能である(表1)。心臓MRIは時間がかかる検査とされてきた。近年はフィリップスのMRI高速撮像技術「Compressed SENSE」や「SmartSpeed」により,撮像時間の大幅な短縮が可能となったが,解析には多くの時間がかかることが負担となっている。心機能解析のFunctional LV & RV解析では,AI技術によりLV(左心室),RV(右心室)の内腔,外腔の自動トレースを実現し,解析時間を大幅に短縮できるようになった。さらに,事前に設定することでデータ受信後にバックグラウンドで自動解析が可能であり,アプリケーションを起動すると,解析が終了している状態から始めることができる。解析者はED(拡張期)/ES(収縮期)フェーズと心室の自動トレースの確認作業のみで解析結果が得られ,PACSやレポートに転送できる(図1)。それにより,従来,約20分を要した心機能解析を5分以内で終えることができる。また,トレース作業にかかる時間や精度は解析者の経験値によって大きく差が出るが,自動トレースになることで個人差も低減できる。これまで時間に追われ検査と解析を同時進行していたユーザーも,検査に集中できるようになり,検査を受ける側にとっても優しい環境を提供できる。

表1 Functional LV & RV解析のパラメータと拡張機能

表1 Functional LV & RV解析のパラメータと拡張機能

 

図1 ED(拡張期)とES(収縮期)のAutomatic segmentationを利用したLV,RVトレース

図1 ED(拡張期)とES(収縮期)のAutomatic segmentationを利用したLV,RVトレース

 

■AI技術を利用した心筋トレース

AI技術には,機械学習という要素技術がある。データの種類や目的に応じて「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」という3つに分けることができる。心筋のトレースを行うための画像認識で用いられているのは「教師あり学習」で,機械学習を利用した畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN)1),2)と呼ばれる画像認識のAIモデルと,それに続くshape constrained deformable modelで構成されている。「教師あり学習」は教師となるデータを基に学習するため,精度を上げるには大量の画像データが必要とされる。Functional LV & RV解析は,欧州6施設で幅広い条件で撮像されたデータを用いて,AIモデルの学習・評価を行い開発した。そのため,AIモデルの堅牢性は高く,実臨床での解析も高い精度が期待できる。

本稿では,AI技術を搭載したCardiac MR AnalysisのFunctional LV & RV解析が実現するスマートなワークフローを紹介した。IntelliSpace Portalは循環器画像診断において,ユーザーから有用性に対する評価を得てきた。AI技術の搭載によりFunctional LV & RV解析で20分かかる解析を5分以内で終えることができるようになり,解析結果の個人差低減にも寄与することができる。これまで時間に追われ,検査と解析を同時進行していたユーザーも検査に集中できるようになり,患者中心の画像診断の提供に少しでも貢献できると幸いである。

●参考文献
1) Ecabert, O., et al. : Automatic model-based segmentation of the heart in CT images. IEEE Trans. Med. Imaging, 27 : 1189-1201, 2008.
2) Brosch, T., Peters, J., Groth, A., et al. : Deep Learning-Based Boundary Detection for Model-Based Segmentation with Application to MR Prostate Segmentation. Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention-MICCAI 2018. 515-522, 2018.

 

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