技術解説(フィリップス・ジャパン)
2019年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
構造的心疾患インターベンションにおける新たなソリューション「Azurion 7 C20 with FlexArm」
中井 正敏(IGTビジネスマーケティンググループフィールドマーケティング)
従来,心臓領域のインターベンションと言えば冠動脈に対するインターベンションが中心であったが,今まで外科治療でしか治療し得なかった構造的心疾患(Structural Heart Disease:SHD)に対してのインターベンションが本邦でも広く行われつつある。本稿では,SHDインターベンションに対し,さまざまな支援機能を搭載した「Azurion 7 C20 with FlexArm」(図1)の最新技術について紹介する。
●レイアウトとポジショニングを柔軟に「FlexArm」
FlexArmは,8つの可動軸を搭載し優れた柔軟性を備えたCアームである。
SHDインターベンションでは,麻酔器,心エコー装置などの周辺機器が患者テーブル周りに設置される。FlexArmは,±135°の回転軸を有し,さまざまな方向からアプローチできるため,周辺機器を考慮した柔軟なレイアウトで使用可能である。また,フラットパネルディテクタは“Image Beam Rotation”機能により常に目的方向へ回転し,術者が必要な視野を確保できる。
また,術者,スタッフが快適な手技ポジションに合わせた柔軟なポジショニングにも対応可能である(図2 a,b)。医療チームの動きに沿ってシステムが動作するため,患者テーブル周りのスペースを確保でき,人間工学的に優れた姿勢や立ち位置で作業可能となる。
このようなCアーム操作は,独自の“Axsys motion control system”により,1つの操作ノズルで操作可能である(図2 c)。複雑な動きを直感的にシンプルに操作が可能となり,手技に集中した操作環境を構築できる。
Cアームを使用しない場合,parking positionにより,広範囲のスペースを確保することも可能となり,通常の外科手術も行える(図2 d)。
FlexArmは,複雑な治療症例ごとに最適な治療環境を実現し,質の高い治療をサポート可能である。
●安全性の向上
FlexArmは,手技を実施するworking positionから,横手スライド移動によるaway position(図3 a)がAxsys motion control systemで迅速に行える。心臓マッサージなどの緊急時においても容易に患者処置スペースを確保できる。さらに,standby position(図3 b)によりイメージングが不要な状態での術者の操作スペースを確保でき,手技のセットアップ,緊急時の処置が安全に実施可能で,Axsys motion control systemによりセッティングしていたポジションを再現し,迅速に手技が再開できる。
手技中にテーブルを移動させずに,Cアーム自身の移動により全身へのアクセスが可能となり,テーブル移動による患者へのストレスおよび挿管のチューブやケーブル外れのリスクを軽減できる。
FlexArmは高度な感染管理にも対応している。治療中の感染リスクを管理するために厳重な手術向けの汚染管理の規格を満たすように設計されており,天井走行式Cアームでありながら,還流の影響を低減し,容易にクリーニングが可能となる(図3 c)。
Image Beam Rotationはチューブカバー内に統合されており,外側に回転部品がないため,減菌カバーを簡単に使用可能。ガントリの洗浄性を向上でき,X線管内に液体が入るリスクの低減も実現している(図3 d)。
●手技をサポートするライブイメージガイダンス“SHD Suite”
Azurionシリーズには,先進的な診断・治療をサポートするライブイメージガイダンス機能,SHD Suiteを搭載可能である。
1.Heart Navigator
術前のCT画像によるプランニング,術中のX線透視画像とオーバーレイした3Dロードマップが可能である。術前CT画像は自動でセグメンテーションされ,以下の各手技に合わせた最適観察のアングルが自動で表示される。また,術者の最適なアングルを追加,保存することもできる(図4 a〜c)。
・TAVI(大動脈弁)
・Atrial Septum(心房中隔)
・LAA(左心耳)
・Mitral Valve(僧帽弁)
・Ventricular Septum(心室中隔)
・Tricuspid Valve(三尖弁)
・Pulmonary Valve(肺動脈弁)
最適なアングルのCT画像を2方向の撮影情報からレジストレーションし,X線透視とオーバーレイした3Dロードマップによりプランニングに沿った手技を支援できる(図4 d)。
FlexArmでは斜め方向からの設置においても連動可能で,柔軟なポジショニングに対応している。
2.Echo Navigator
SHDインターベンションでは,血管撮影システムに加え,3D経食道心エコー(以下,TEE)も必要不可欠である。Echo Navigatorは,X線透視画像とLive TEE画像を“Smart Fusion”機能により融合することを可能とした(図4 e)。Smart Fusion機能では,X線透視画像上に表示されているTEEのプローブの形状を特定し,X線透視画像とLive TEE画像の位置情報を自動で認識し,フュージョンさせることができる。
最大3つの異なる2Dまたは3D TEE画像を大型モニタ上に自由なレイアウトで同時に表示し,組織構造とデバイスの位置情報を明瞭に把握できる。
フュージョンされた画像は,Cアームの動きとリアルタイムに連動して表示される。
FlexArmでは,斜め方向からの設置でも連動でき,柔軟なポジショニングに対応しており,術者,スタッフの操作スペースも十分に確保できる。また,TEE画像上で組織構造上に設定されたマーカーは,自動的にリアルタイムX線透視画像上に表示され,安全かつ適切なデバイスのポジショニングが可能となる。
TEEのオペレータとインターベンションの術者との間で,スムーズなコミュニケーションと相互理解が不可欠である。これらが十分に整備された環境が構築されていることで,手技をスムーズかつ迅速に進めることができる最適なワークフローが実現できる。
◎
本稿では,SHDインターベンションにおける治療症例ごとに最適な治療環境を実現し,質の高い治療をサポート可能である,Azurion 7 C20 with FlexArmを紹介した。これからもフィリップスは,SHDインターベンションにおけるさらなるソリューションを開発し,価値を生み出していくよう尽力していく。
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