技術解説(フィリップス・ジャパン)

2019年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

ルーチン検査でglobal longitudinal strainを─“AutoSTRAIN”

澤  政樹(USビジネスマーケティンググループCV営業技術)

●日常ルーチン検査のためのソリューション

心エコー検査で計測されたglobal longitudinal strain(以下,GLS)は,左心機能のわずかな変化を検出する方法として,従来の左室駆出率(LVEF)よりも効果的であると認められつつある。特に,がん治療関連心不全(CTRCD)など,心機能のわずかな変化を検出する必要がある患者のモニタリングに,GLSの計測は重要である。超音波診断装置「EPIQ CVx」に搭載された“AutoSTRAIN”は,高度な自動化技術により,瞬時に再現性の高いGLSを計測できる日常臨床のためのツールである。

●GLS計測の自動化:AutoSTRAIN

AutoSTRAINは,フィリップスの超音波診断装置に搭載された初めてのTOMTEC社のアプリケーションである。TOMTEC社はストレイン計測に関して長い歴史と実績を持っており,何百もの論文発表や出版物が刊行され,臨床現場で広く支持されている。AutoSTRAINの自動化テクノロジーに関して解説する。

●自動断面認識およびラベリング

AutoSTRAINでは,検者が選択した心尖断面(心尖4腔像,2腔像,3腔像)を自動で認識しラベリングする(図1)。同時に心尖3断面を選択した場合は,おのおのの断面を同時に自動認識し,それぞれラベリングする。このアルゴリズムは,6000枚以上の臨床画像で詳細に検証されており,99%の成功率を誇る。つまり,手動で選択が必要な症例は100例中1例である。

図1 自動断面認識およびラベリング例(心尖4腔像)

図1 自動断面認識およびラベリング例(心尖4腔像)

 

‌●自動輪郭配置

心内膜の輪郭検出は,次の3つのステップで行われる。まず,完全なR-Rサイクルを選択する。次に,選択されたサイクルの最初のR波フレームで左心室を自動的に検出する。最後に,各断面で固有の心内膜の輪郭モデルを合わせる(図2)。

図2 自動輪郭配置

図2 自動輪郭配置

 

‌●高速ストレイン解析

拡張末期(以下,ED)で心内膜の境界が設定されると,自動で全心周期における心臓の動きを追従(スペックルトラッキング)し,GLS解析結果が表示される(図3)。自動断面認識から解析結果の表示まで1秒以内で完結する。境界を編集する場合,EDフレームでの編集を推奨する。収縮末期(ES)で編集する場合,隣り合うフレームには影響するが,ED境界は変更されない。

図3 GLS解析結果

図3 GLS解析結果

 

‌●GLS解析結果の表示

GLSは心内膜の境界(緑線)で測定され,瞬間的なストレイン値は境界付近に色で視覚的に表示される。さらに,波形で1心周期の変化を表示可能である。各セグメントのストレイン値は,American Society of Echocardiography/European Association of Cardiovascular Imaging(ASE/EACVI)のスペックルトラッキングTask Forceが推奨するend-systolic strain値(以下,ESS1))か,またはpeak-systolic strain値(以下,PSS)で表示可能である。さらに,18セグメントのBull’s eye上に,ESSまたはPSSと,time-to-peak値(ms)を表示できる(図4)。

図4 Bull’s eye表示 a:peak-systolic strain b:time-to-peak

図4 Bull’s eye表示
a:peak-systolic strain b:time-to-peak

 

‌●TOMTEC社の“2D-CPA”との比較検討2)

AutoSTRAINのバリデーションを,すでに臨床で認知されているTOMTEC社の2D-CPAと比較して実施した。
225症例で検討した結果,AutoSTRAINはTOMTEC社の2D-CPAと強い相関関係を示した(図5,表1)。

図5 AutoSTRAINと2D-CPAを比較したBland Altmanと直交回帰プロット

図5 AutoSTRAINと2D-CPAを比較したBland Altmanと直交回帰プロット

 

表1 AutoSTRAINと2D-CPAの比較

表1 AutoSTRAINと2D-CPAの比較

 

‌●解析の再現性評価

GLSは初期の輪郭配置に依存して変化する。そこで,AutoSTRAINのトラッキング精度の再現性を評価するため,輪郭配置の手動調整の影響を検討した。225症例で,自動的に設定された輪郭から手動で輪郭を補正した(±2ピクセル以内)。その結果を図6および表2に示す。

図6 ED輪郭を±2ピクセル範囲内で補正した際のBland Altmanと直交回帰プロット

図6 ED輪郭を±2ピクセル範囲内で補正した際のBland Altmanと直交回帰プロット

 

表2 GLSへのED境界手動補正の影響

表2 GLSへのED境界手動補正の影響

 

最後に,フィリップスは超音波診断装置を40年以上にわたって開発し続けてきた。開発当初から今まで,一貫してこだわり続けていることは超音波診断装置の基本性能の向上である。今回は,最新装置に搭載された最新技術の概略を述べた。この機能が,日々の臨床現場で広く用いられることに期待するとともに,今後も先進的なテクノロジーを提供し続けることを約束する。

●参考文献
1)Voigt, J., Pedrizzetti, G., Lysyansky, P., et al. : Definitions for a Common Standard for 2D Speckle Tracking Echocardiography ;
Consensus Document of the EACVI/ASE/Industry Task Force to Standardize Deformation Imaging. Eur. Heart J. Cardiovasc. Imaging, 16・1, 1〜11, 2015.
2)Roediger, V. : TOMTEC AutoSTRAIN─automated global longitudinal strain(GLS) measurement. Ultrasound White paper, Philips, 2019.

 

●問い合わせ先
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