技術解説(フィリップス・ジャパン)

2015年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

SHD領域におけるLive 3D TEEの可能性

澤  政樹(USモダリティスペシャリスト)

structural heart disease(以下,SHD)の治療に対して,さまざまなカテーテルインターベンションが行われるようになり,今後日本においても広がっていくと思われる。2007年にフィリップスが世界で初めて可能にしたリアルタイム三次元経食道エコー(Live 3D TEE)は,従来の二次元断層法に加えリアルタイムに三次元のイメージを構築することが可能となる。
さまざまなデバイスを使用するに当たり,新しいエコーガイドシステムが,今後どのように臨床に役立っていく可能性があるかを紹介したい。

■SHDとLive 3D TEE

SHDに対する治療法として,大動脈弁狭窄症,僧帽弁狭窄症,心房中隔欠損症などに対する経カテーテル大動脈弁置換術(以下,TAVR),経皮的心房中隔欠損閉鎖術〔カテーテル心房中隔欠損閉鎖栓(AMPLATZER Septal Occluders:セント・ジュード・メディカル社製)を使用〕などの,より低侵襲なカテーテル治療法に期待が集まっている。
SHDにおいては従来,開胸下での手術が標準治療であったが,革新的なデバイスの開発によって世界的にはさまざまなデバイスでの治療法が確立されてきている。侵襲性が低いというカテーテル治療の特性から,手術が困難な患者に対しても実施が可能となった。現在,日本でも一部のカテーテル治療デバイスの使用が可能になり,それに伴って経食道心エコー検査の果たす役割の大きさが認知されてきてはいるものの,具体的に超音波診断装置の持つ機能や解析ソフトウエアの臨床活用法を模索しているのが現状である。
SHDへのカテーテル治療の中で,最も先行している治療の一つがTAVRである。TAVRは,30〜40%に上る重症の未治療大動脈弁狭窄症1)に対する画期的治療法として注目を集め,2012年にわが国でも治験を終え,2013年に保険承認された。Live 3D TEEは三次元的な客観的データを容易に取得することが可能で,TAVRにおけるLive 3D TEEの有用性に関しての報告もされている2),3)。術前の心機能評価,TAVR適応評価,デバイスサイズの決定,coronary obstruction,術中の合併症評価,デバイス留置後の生体弁の可動性および逆流の評価,術後の左室機能評価など,Live 3D TEEによる心エコー図評価はこれまで以上に大きな役割を果たす。
2007年に,フィリップスはプレミアム超音波診断装置「iE33」で使用できる,世界初のLive 3D TEEトランスジューサを発表した。現在では,最新超音波診断装置 「EPIQ」,コンパクトエコー「CX50」など,さまざまな超音波診断装置においてもLive 3D TEEを使用することが可能となった(図1)。
カテーテル検査室や手術室,ハイブリット手術室内においてLive 3D TEEを施行可能な超音波診断装置を使用することにより,病変部位や弁の立体的な位置情報を詳細に把握することができ,より精度の高い診断をサポートすることが可能となる。Live 3D TEEの臨床有用性として,従来のTEE 2D Imageでは術者自身が多断面から得られた画像情報を頭の中で立体に再構築し直してから心臓の構造,病変,機能をとらえて診断をしてきたが,この方法にはかなりの熟練を要し,チーム全体で同じ情報を共有することが非常に難しい。しかし,Live 3D TEEは,瞬時にリアルタイムな三次元エコー画像を描出することが可能になり,より高分解能で詳細な弁やカテーテルデバイスなどの情報が得られ,チーム全体で同じ三次元の画像を共有できることにより,スムーズに治療方針決定や評価も可能となる。

図1 ハイブリッド手術室内などにおいてLive 3D TEEを使用可能な超音波診断装置

図1 ハイブリッド手術室内などにおいてLive 3D TEEを使用可能な
超音波診断装置

 

■EchoNavigator

2013年に発表した新機能“EchoNavigator”は,Live 3D TEE ImageとX線透視画像をフュージョンすることを可能とした。透視撮影を開始した瞬間に経食道プローブヘッドの向きを認識し,フュージョン画像(Live 3D TEE Image+X線透視画像)がリアルタイムにモニタに表示される。このフュージョン画像は,常に透視装置のCアームの動きと連動し,リアルタイムに同じ角度で同期して表示される。このことにより,経食道心エコー術者とカテーテル術者が,まったく同じモニタを通して見ることが可能となり,それぞれの術者が非常に多くの情報を同時かつシンプルに評価できるので,直感的でスムーズな手技を可能とし,より安全で精度の高い治療を行えるようになる(図2)。

図2 EchoNavigator表示画面(Live 3D TEE ImageとX線透視画像のフュージョン)

図2 EchoNavigator表示画面
(Live 3D TEE ImageとX線透視画像のフュージョン)

 

また,EchoNavigatorでは,Live 3D TEE ImageやTEE 2D Imageから得られた弁や心房中隔欠損孔などの画像に,解剖学的位置情報(以下,マーカー)と呼ばれるターゲットを置くことが可能になった。このマーカーは,リアルタイム透視画像にもリンクし位置情報として表示される。術者の主観的な判断のみでなく,エコー情報から得たリアルタイムの位置情報を確認でき,これによってより安全かつ適切なカテーテルによるデバイスのポジショニングが可能となる。
透視画像はその特性上,軟部組織の描出が難しい。それに対しLive 3D TEE Imageは,弁や軟部組織の把握や時間分解能で圧倒的に優れている。Live 3D TEE Imageからの位置情報を,マーカーを介してX線透視画像に表示できるメリットは,特に評価が難しい軟部組織などへの位置やアプローチのガイドを,X線透視画像から確認できることである。特に,今後認可が下りるさまざまなデバイスを留置する手技では,必要不可欠な技術となると考える(図3)。
これからますますSHDに対する経皮的カテーテル治療が増えるのは事実であるが,EchoNavigatorにより,精度と安全性が共に向上する。Live 3D TEE ImageとX線透視画像をリアルタイムにフュージョンできるEchoNavigatorの登場は,画期的な機能と言えるであろう。

図3 EchoNavigatorによるX線透視画像へのマーカー表示

図3 EchoNavigatorによるX線透視画像へのマーカー表示

 

■TAVRにおける術前・術中・術後評価

TAVRでは,術前の心機能評価や石灰化評価,弁輪径の評価などが非常に重要になる。現在では,デバイスのサイズの決定や石灰化評価,さらにはcoronaryとbasal ringとの距離計測は,CT検査で行われることが非常に多い。Live 3D TEEトランスジューサには,世界で初めて素子にPureWaveクリスタル(単結晶)を採用し,高画質で高精細な画像を描出することが可能となった。このことによってLive 3D TEE Imageの画質は飛躍的に向上し,CT検査で行われてきたSHD治療の術前に重要なさまざまな計測項目の正確な測定,さらに事前に解剖学的な把握が容易となり,本来のエコー検査のメリットを発揮してきている2),4)図4)。

図4 Live 3D TEEを用いたさまざまな計測

図4 Live 3D TEEを用いたさまざまな計測

 

また,Live 3D TEE Imageだからこそ可能となる任意の2方向を一度に観察可能なxPlane Imageも,現在SHD治療に多く使用されており,この機能の重要性は臨床現場からも高い評価を得ている(図5)。

図5 xPlane Imageによる任意の2断面同時表示

図5 xPlane Imageによる任意の2断面同時表示

 

そもそも各種エコー検査とは,侵襲性の低い検査の代表である。また,TAVRにおけるLive 3D TEEは,術中にその本領を発揮する。デバイス留置の位置決めや,デバイス留置後の弁逆流や生体弁の可動性,合併症などのさまざまな評価を術場で行うことができる唯一の検査が,Live 3D TEEである。

●参考文献
1)Bach, D.S., Siao, D., et al. : Evaluation of patients with severe symptomatic aortic stenosis who do not undergo aortic valve replacement ; The potential role of subjectively overestimated operative risk. Circ. Cardiovasc. Qual. Outcomes, 2, 533〜539, 2009.
2)Jayasuriya, C., Moss, R.R., et al. : Transcatheter Aortic Valve Implantation in Aortic Stenosis ; The Role of Echocardiography. J. Am. Soc. Echocardiogr., 24・1, 15〜17, 2011.
3)Smith, L.A., Dworakowski, R., et al. : Real-Time Three-dimensional Transesophageal Echocardiography Adds Value to Transcatheter Aortic Valve Implantation. J. Am. Soc. Echocardiogr., 26・4, 359〜369, 2013.
4)Zamorano, J.L., Badano, L.P., et al. : EAE/ASE Recommendations for the Use of Echocardiography in New Transcatheter Interventions for Valvular Heart Disease. Eur. Heart J., 32・17, 2189〜2214, 2011.

 

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