技術解説(フィリップス・ジャパン)

2014年4月号

Head & Neck Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

血管超音波検査の自動化による検査の効率化

池嶋 弘晃(ヘルスケア事業部)

頸動脈を含む血管超音波検査では,そのリアルタイム性を生かし,プラークの有無や血流情報を非侵襲的かつ短時間で得ることができる。血管検査においては,狭窄率や血流波形の評価がルーチン検査で行われている。検査の効率化へのニーズに応えるために,フィリップスの超音波診断装置には時間のかかるさまざまな作業を自動化して,さらに新たにワークフローの合理化を図るインテリジェントな機能を搭載しており,ともすれば困難になりがちな検査に役立つガイダンスを提供する。

■オートドプラ機能

図1 オートドプラ機能

図1 オートドプラ機能

断層画像調整においては,画像最適化(iScan)ボタンを押すことで全体のゲインやグレイスケール輝度調整を,例えば疾患のない部位の血管では内腔のノイズをなくすようにしつつ,全体の解剖に合わせて画像のバランスをとるように自動で行っていく。これにより,画質の均一性や,従来は経験に基づき行われていた画像の調整がより簡易化され,再現性の高い検査が行える。さらに,オートドプラ機能(図1)では,このグレイスケールの自動最適化をさらに発展させ,iScanボタンを押すことで,ほとんどのドプラ検査が自動で可能となる。まず,グレイスケールの自動最適化を行うと同時に,カラードプラモードでは,自動で画像内の最高血流速度領域に対するカラードプラの関心領域の配置やステアリング調整が行われる。次に,パルス波ドプラモードでは,ビームの血流方向に合わせたステアリング,サンプルボリュームの配置と角度補正などの自動最適化により,頻繁に行われるボタン操作などの手動操作を低減する。また,ドプラ波形のスケールやベースラインも,1ボタン操作で自動的に調整される。この機能により血管検査のスピードアップと標準化を図ることで,検査の一貫性向上と検査効率の向上に貢献していく。
また,High Q機能(図2)では,得られたパルス波ドプラ信号のリアルタイムでのトラッキングを行い,自動的に最大のピーク速度を選択し,さらに検査に必要なパラメータが表示される。加えて,計測メニューボタンを活用することで,検査報告書に計測値が反映されていく。この機能により,通常の計測ポインタやトレースを手動で行う必要性もなくなる。
さらには,フレームごとにiScanによって自動的に画像を最適化するオートスキャン機能も臨床で使用され始めた。このように,血管超音波検査において血行動態を観察する場合においても,モードごとの画像やパラメータ調整,それにかかわるボタン操作が大幅に簡易化され,検査のスピードアップに貢献する。

図2 経頭蓋超音波ドプラ(TCD)検査におけるHigh Q計測例(MCA領域)

図2 経頭蓋超音波ドプラ(TCD)検査における
High Q計測例(MCA領域)

 

■検査プロトコル,ワークフロー

装置にあらかじめルーチン検査プロトコルをプログラムしておくことで,検査に最適なワークフローを記録し,かつ必要な検査を繰り返し行うことを可能にする。装置が自動で手順をガイドし,プロトコルを実行することで,一貫した検査を素早く行うことができる。Smart Examと呼ばれるこの機能(図3)は,アプリケーションプロトコルのプランニングや処理を自動化する機能である。Smart Examによるワークフローガイドを用いることで,検査タイプの新規作成も簡単に行える。例えば,検査を行うと,使用したプロトコルのすべてのステップを装置が記憶していき,記録に必要な断層像,必要に応じてアノテーション,ボディマーク,モードの変更からそのモードごとの固有の計測解析項目まで,プロトコルに自動保存していく。これにより,ルーチン検査やスクリーニングにおいても,装置の操作手順が簡略化され,かつ検査の進捗状況の確認や記録忘れなどのミスをなくすことが可能となる。また,手順は簡単に変更可能で,それらを追加記憶させることも可能である。

図3 頸動脈検査におけるSmartExam実行例

図3 頸動脈検査におけるSmartExam実行例

 

■評価ソフトウェア

フィリップスの超音波画像は,取り込まれた画像からさまざまな画像評価ソフトウェアプラグインが活用できる。QLABと呼ばれるソフトウェアの中でも,血管検査におけるIMT(Intima-Media Thickness)プラグインでは,検査で取り込まれた画像から自動的に血管内膜中膜複合体の壁厚計測を行うことが可能である 1)図4)。また,近年,VPQ(Vascular Plaque Quantification)プラグインツールが開発された。これは,VL13-5 3D/4Dリニアトランスジューサ(図5)を使用し,3Dテクノロジーを利用して得られた対象解剖のデータセットから,頸動脈血管内プラークの総体積を非侵襲的かつ自動的に描出,定量化する技術である。解析が終了すると,プラーク容積(mL)や全血管壁における狭窄率(%),最大面積狭窄率(%)などのパラメータが表示される(図6,7)。アテローム性動脈硬化性プラーク解析をより正確に計測することで,脳卒中や血管疾患のリスク判定に役立つことが期待される2)

図4 QLAB IMTプラグイン解析例

図4 QLAB IMTプラグイン解析例

図5 VL13-5 3D/4D リニアトランスジューサ

図5 VL13-5 3D/4D
リニアトランスジューサ

 

図6 QLAB VPQプラグイン解析概念図

図6 QLAB VPQプラグイン解析概念図

 

図7 QLAB VPQプラグインによる解析例(解析シーケンス過程)

図7 QLAB VPQプラグインによる解析例(解析シーケンス過程)

 

■nSIGHTイメージング

nSIGHTイメージングは,超音波の素子ごとに音響メモリを持たせることで,逆フィルタアルゴリズムを応用し,従来の送信焦点以外のポイントでもより細かな焦点補正を行っていく技術である。この機能を活用することで,より均一なビームフォーミングが可能となった。近位部では多重アーチファクトを低減させ,かつ遠位部では減衰が少なく,分解能の低下も抑えた画像が得られる(図8)。また,超音波検査における時間分解能と画質との関係性,すなわち画像を高画質化させると時間分解能が低下するといった問題も解決される。この技術は,すべてのトランスジューサや三次元を含むさまざまなモードに応用可能であり,超音波検査そのもののクオリティの向上に貢献する。

図8 nSIGHTイメージングによる総頸動脈の解離疾患例

図8 nSIGHTイメージングによる
総頸動脈の解離疾患例

 

頸動脈を含む血管検査における近年の装置の自動化について概説した。今後も臨床データに基づき,かつ超音波検査においても他のモダリティ同様三次元データを活用し,よりいっそう正確で客観性のある検査が行える機能の開発に取り組んでいく。

 

●参考文献
1)Willekes, C., et al. : Evaluation of Off-Line Automated Intima-Media Thickness Detection of the Common Carotid Artery based on M-Line Signal Processing. Ultrasound Med. Biol., 25・1. 57〜64, 1999.
2)Nicolaides, A., et al. : Carotid Plaque Texture Analysis Using 3-Dimensional Volume Ultrasonic Imaging. Ultrasound and Carotid Bifurcation Atherosclerosis, 299〜324, 2012.

 

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