技術解説(フィリップス・ジャパン)
2012年10月号
Digital Radiography(DR)を極める【静止画編】
DigitalDiagnostシリーズ より質の高い撮影業務をサポートするシステム
坂口裕一(マーケティング本部)
当社は,1985年にCRから一般撮影領域の開発に着手し,90年代にはアモルファスセレンを用いた直接変換方式のフラットパネルを搭載した「ThoraVision」を開発,2000年にはヨウ化セシウムを用いた間接変換方式のフラットパネルを搭載した現行の「DigitalDiagnost」を販売開始している(図1)。
本稿ではCRから一般撮影領域のトータル設計に携わってきたフィリップスならではの,質の高い一般撮影をサポートするアプリケーションをご紹介する。
■オート長尺撮影機能 “Auto Stitching”(オプション)
Auto Stitchingは,オート長尺撮影機能のことで,撮影から画像表示までの一連の動作が自動化され,スピーディで高画質な画像を提供する。撮影範囲を決定すると撮影枚数が自動で選択され,画像のつなぎ合わせの濃度補正および位置補正も瞬時に最適化,合成された画像が自動で表示される。高度に自動化されたプロセスにより,長尺撮影が必要となる全脊椎撮影や下肢撮影のワークフローの飛躍的な向上が期待できる。
■統計解析ツール “Clinical QC”(オプション)
Clinical QCは,操作コンソール「Eleva Workspot」に統合された統計解析ツールで,任意の期間での検査情報の中から,撮影件数,再撮影件数,撮影部位,撮影条件などを,データとして出力できる機能である(図2)。撮影部位ごとの再撮影件数をデータとして出力し,再撮影の多い部位におけるワークフローの改善につなげるなど,施設の管理目的に応じて幅広く活用できるツールである。
Clinical QCはexposure index(EI)の出力も可能である。EIはIECにて標準化された線量指標である。デジタル化が顕著に進行している一般撮影領域において,以前から線量の増加傾向や施設間のバラつきが指摘される中,線量の標準化を実現するためのツールとして注目されている。フィリップスではEIをいち早く製品に採用し(図3),ユーザー様によるEIを使用した線量標準化の検討やEIの使用経験も報告されている。線量標準化を検討する際には,過去の検査データを撮影部位ごとに解析する必要があり,その作業は煩雑であるが,Clinical QCを使用することで過去の検査データから任意の撮影部位のEIを容易に抽出でき,データ管理業務の効率化が期待できる。
■中間サイズの焦点を生み出す “VarioFocus”(オプション)
VarioFocusは,フィリップス独自のアプリケーションで,大焦点と小焦点のフィラメントから陽極ターゲットの同じ場所に同時に電子を放出することで,中間サイズの焦点を新たに作り出すことができる機能である(図4)。管球のライフタイムの向上が望まれるとともに,撮影条件を施設ごとに工夫することができる。
例えば,照射時間の短縮による画質の向上が挙げられる。通常,小焦点より大焦点を使うことで撮影時間は短くなるが,幾何学的半影(ボケ)が大きくなってしまう。VarioFocusを利用することで,幾何学的半影(ボケ)の影響が小さい中間サイズの焦点で,より適切な出力と照射時間による撮影条件を選択できる。
フィリップスでは,撮影業務の効率化や撮影条件の改善をめざすユーザー様の要望に対し,オート長尺撮影機能,EIを含めた検査情報の統計解析ツールClinical QC,中間サイズの焦点を生み出すVario Focusなどのアプリケーションを提案している。今後も臨床現場のニーズを探求し,より質の高い一般撮影を実現できるシステムやアプリケーションの開発をめざしていく。
【問い合わせ先】お客様窓口 TEL 0120-556-494