技術解説(フィリップス・ジャパン)
2012年10月号
Digital Radiography(DR)を極める【静止画編】
トータル設計ならではのワイヤレスポータブルディテクタ(WPD)運用のメリット
坂口裕一(マーケティング本部)
一般撮影領域では,ワークフローを飛躍的に向上させるシステムとして,CRからFPDへの移行が注目されている。さらに近年では,ワイヤレスポータブルディテクタ(wireless portable detector:WPD)も登場し,一般撮影室のDR化が加速度的に進行している。
その中で,当社は2008年にWPDの販売を開始し,2012年にはデザインを一新した「DigitalDiagnost」を発表し,多彩なニーズに応える新しいラインナップを展開している。一新したDigitalDiagnostの特長の1つがWPDを生かした製品群である。
本稿では,WPDと製品ラインナップの組み合わせ,およびWPDの特長をご紹介する。
■WPDと多彩なラインナップの組み合わせ
2012年に一新されたDigitalDiagnostシリーズは,5つのルームコンセプトにより,さまざま顧客ニーズに応える最適なデジタル一般撮影室のトータルソリューションを提供する(図1)。その中でも,WPDを最大限に生かしたソリューションが“Value room ”と“Emergency room ”である。Value roomは,立位撮影装置VSと臥位撮影装置THにワイヤレストレイを装備し,1枚のWPDで効率的な運用を提供する(図1 a)。Emergency roomは,X線管とWPDのシンプルな組み合わせで,救急準備室や回復室での運用が期待されている(図1 b)。さらに,WPDを複数の部屋で共有できるディテクタシェアリング機能(オプション)を搭載することで,WPDのより効率的な運用やバックアップとして活用でき,WPDの活用範囲が拡大する。
■WPDの特長
DigitalDiagnostシリーズはX線発生装置,天井走行式X線管,検出器,撮影台を統合した一体型システムで,操作コンソールも1枚のタッチスクリーンモニタに集約されている(図2 a)。これにより,固定式でもWPDでも同じ画像処理を適応させることができる。さらに,ピクセルサイズも固定式143μm,WPD144μmとほぼ同程度のものを採用しているため,どちらの検出器で撮影された画像も同等の被ばく低減,および高画質を実現できる。さらに,近年デジタル画像の線量指標として注目されているexposure index(EI)もコンソール上に表示され,比較検討が可能である(図2 b)。
WPDの構造は,四隅がなめらかな曲線となっており,患者様の安全に配慮するとともに,衝撃に強い設計となっている。高さ70cmからの落下に耐えうる構造,100kgの耐荷重を有し,専用のプロテクタを使用することで200kgを超える患者様の臥位撮影にも対応できる。一体型のハンドルは待ち運びに最適で,しっかりとディテクタを保持できるよう設計されている(図3 a)。
撮影台に設けられたワイヤレストレイもWPDを効率的に運用できるよう設計されている(図3 b,c)。ワイヤレストレイ内ではWPDが常時充電されるため,バッテリ切れの心配をせずに,ケーブルレスの自由な撮影が可能である。また,ディテクタの向きやグリッドの有無は,トレイ外部のインジケータに表示され,確認のためにトレイを開ける必要はない。
当社のDigitalDiagnostシリーズは,WPDだけでなく,WPDと多彩なラインナップを組み合わせた一般撮影のトータル設計を提案している。今後もさまざまなニーズに応える最適なデジタル一般撮影室のソリューションを開発・展開していく。
【問い合わせ先】お客様窓口 TEL 0120-556-494