X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第2回X線動態画像セミナー[2020年3月号]

総 評

工藤 翔二(公益財団法人結核予防会理事長/日本医科大学名誉教授)

工藤 翔二(公益財団法人結核予防会理事長/日本医科大学名誉教授)

2018年の第1回X線動態画像セミナーから,わずか1年で研究内容が非常に進歩したことに驚いている。全国で研究を進めていただいた先生方には,心から敬意を表したい。

今回の発表や活発なディスカッションを通じて,特に印象的だったことを3点挙げたい。まず1番目に,X線動態画像開発のきっかけともなった血流と換気の分離による血流と換気の可視化や,肺血栓塞栓症の検出といったことの実現の可能性が高まったと感じた。換気・血流シンチグラフィと比べるとそれぞれ特徴はあるものの,同等あるいは代替できる可能性もあると考えられる。何より,検査コストが安価で,中小病院でも実施できることから,臨床で広く活用できる。課題はあるものの,換気・血流シンチグラフィと肩を並べうるところまできているとの報告も複数あり,これからの研究の発展が期待される。

2番目に,応用の広がりが感じられた。X線動態画像の開発当初は,対象疾患として慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎くらいしか思い浮かばなかったが,今回は,肺胞低換気症候群や慢性血栓塞栓性肺高血圧症といったさまざまな疾患に対する応用の症例提示があり,また,横隔膜ペーシングとの関係の検討なども報告された。応用が広がっていることは,大変新鮮で,かつ重要なことだと感じた。

3番目として,肺面積変化率や気管径,後方肋骨など,新しい着目点が提起されたことがある。メーカー情報提供で紹介された「動きのアトラス構想」では,「動的な画像には,肺胸郭内にはきわめて多くのランドマークがある」ということを,重要なメッセージと受け取った。どこに着目するかは,関心を持った先生方がそれぞれ取り組んでいくものと思うが,非常に多くのランドマークが存在することは大切なポイントである。思い起こされるのは,私が最初に胸部単純X線写真を学んだ教科書“Felson’s Principles of Chest Roentgenology”である。初版は1965年に発行されたが,X線が発見された1895年から70年が経過して,ようやく「シルエットサイン」が提起されたことになる。それを思うと,ランドマークが多いというのは宝の山を目の前にしているようなものであり,時間が経っても新しい発見がある可能性があると,私は感じている。

現在,X線動画撮影システムは,全国17施設に導入されている。中小病院でも検査を行えるというメリットがあるX線動画撮影システムは,最終的には本邦での保険収載をめざしていくべきだと考えるが,一方で,アジア地域など途上国への展開も期待される。シンチグラフィ検査を容易に行えない途上国で,X線動態撮影は活用できるであろう。簡便に検査が行えるという点では,震災や水害など近年多発する災害時においても,避難所でエコノミー症候群を簡単にスクリーニングできる可能性もあり,用途はこれから広がっていくと考えられる。次回以降のセミナーではどのような発表があるか想像できないが,非常に楽しみにしている。

 

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日 時:2019年11月2日(土)
場 所:フクラシア八重洲A会議室

第2回X線動態画像セミナー

 

第1部/第3部座長:黒﨑敦子 氏(結核予防会複十字病院) 第2部座長:笠原寿郎 氏(金沢大学) 第3部座長:長谷部光泉 氏(東海大学)
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