X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第2回X線動態画像セミナー[2020年3月号]

実臨床における有用性の報告:ディスカッション

胸部X線動態撮影の撮影法

由地良太郎(東海大学医学部付属八王子病院診療技術部放射線技術科)

由地良太郎(東海大学医学部付属八王子病院診療技術部放射線技術科)

当院では,2018年1月にコニカミノルタのX線動画撮影システムの第1号機を導入し,臨床研究を開始した。本講演では,システムの概要や,胸部X線動態撮影の実際の流れやポイントを報告する。

一般撮影から動態撮影への進化

X線動画撮影システムでは,通常のX線写真に時間軸が加わることで,空間分解能に加え時間分解能を持つX線写真(動画)を作成することが可能となる。
診療放射線技師の仕事も「写真を撮影する」から「動画を撮影する」に変わってきている。従来の一般撮影と比較し,動態撮影では患者の病態を表現するために,適切なポジショニングや,検査に対する患者の理解・協力がより求められる。
また,機能検査になりうることから検査を複数回行うことがあるが,再現性の高い検査を行えることが重要である。

X線動画撮影システムの概要と検査の流れ

X線動画撮影システムは,コニカミノルタのX線動画解析ワークステーション「KINOSIS」と可搬型デジタルX線撮影装置「AeroDR fine」,島津製作所の一般撮影装置「RADspeed Pro」で構成されている。一般撮影装置の付帯機能として連続撮影を可能としており,パルスX線を1秒間に15回連続照射し,得られた画像を連続表示することで動画として表示される。この動画の空間分解能は400μm,濃度分解能は16bitである。
通常の一般撮影の手順は,患者確認・説明,撮影条件の設定,ポジショニング・撮影,画像が適正に撮影・処理されているかを確認し,依頼医に提供する。加えて,胸部X線動態撮影では,検査前により詳しい撮影法および検査目的の説明や,動態を邪魔しないポジショニング,最大吸気・呼気が得られる呼吸の練習が必要となる(図1)。患者の協力を得るためには事前説明が特に重要であり,当院では検査案内のリーフレットを作成し,検査前に読んでもらっている。
ポジショニングは,呼吸に使用する筋肉を緊張させないために肩甲骨を抜かず,楽な姿勢で取手をつかみ,上腕筋に力が入らないよう前腕と手首の高さは水平としている。また,体動防止のため骨盤部をベルトで固定している(図2)。
検査の再現性を向上するため,呼吸指示はオートボイスを使用している(図3)。また,撮影室内で呼吸練習のためにオートボイスの音声を動作することができ,これにより,診療放射線技師が患者の近くで,音声の聞こえ方や患者の体動を確認することができる。なお,放射線技術科内で撮影開始のタイミングを統一することで,現在,技師による差はほとんど見られない。
被ばく線量(入射表面線量)は,1パルス線量×15fps×撮影時間(秒)で求められる。当院の場合,撮影時間は平均16.6秒,被ばく線量は平均1.82mGyと,国際原子力機関(IAEA)の胸部正面+側面のガイダンスレベルである1.9mGyよりも低い値となっている。また,当院の低線量肺がんCT検診よりかなり少ない被ばく線量での検査が可能である。
胸部X線動態撮影の手順については,当院とコニカミノルタの監修によるマニュアルを作成し,検査の一貫性が保てるようにしている。これにより,当院における患者の呼び出しから退室までの平均検査時間は4.9分となっている。

図1 胸部X線動態撮影の手順

図1 胸部X線動態撮影の手順

 

図2 ポジショニングのポイント

図2 ポジショニングのポイント

 

図3 オートボイスによる呼吸指示の流れ

図3 オートボイスによる呼吸指示の流れ

 

まとめ

患者用のリーフレットや撮影マニュアルを完備したことで,再現性の高い検査が可能であり,当院では胸部X線動態撮影に即時対応可能な体制を実現している。また,X線動画撮影システムは,今後,胸部はもとより整形領域でも威力を発揮することが期待される。
診療放射線技師にも呼吸生理学への理解をはじめ,新たな役割が求められており,技師の腕が試されるモダリティの一つであると考える。

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