X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第2回X線動態画像セミナー[2020年3月号]

臨床研究報告

X線動態解析を用いた新たな呼吸機能評価法の検討

大倉 徳幸(金沢大学呼吸器内科)

大倉 徳幸(金沢大学呼吸器内科)

当院では,胸部X線動態解析の臨床応用を検討してきた。本発表では,呼吸変動による肺面積変化率の検討結果を報告する。

はじめに

胸部X線動態解析は,低侵襲かつ簡便に呼吸機能の評価が可能で,また呼吸機能を視覚化して観察できる。そこで,われわれは,閉塞性換気障害患者および間質性肺疾患患者を対象に,胸部X線動態解析を用いた呼吸変動による肺面積変化率について検討した。

閉塞性換気障害での検討

本検討では,胸部X線動態解析を行った233例のうち,1秒率(FEV1%)が70%未満の肺がん術前や慢性閉塞性肺疾患(COPD),気管支喘息,喘息・COPDオーバーラップ症候群(ACO)の118例を対象にした。うち男性が87例で,平均年齢は71.4歳,FEV1%は平均59%,%1秒量(%FEV1)は平均95.9%で軽度の気流制限があるほか,
%最大呼気中間流量(%MMF)は平均28%,残気量(RV)が上昇し,肺拡散能力(DLCO)が低下している軽度のCOPD集団である。その肺面積変化率と肺気量分画および強制呼出曲線との関係を見ると,強制呼出曲線よりも肺気量分画の方が相関値が高いという結果になった(表1)。一番高いのはRVであり,このことから過膨張を最も反映していると考えられる。さらに,1秒量(FEV1)の程度により,軽症が80%以上,中等症が50〜80%未満,重症が50%未満で層別化すると,軽症例は正常例とあまり変わらないが,中等症,重症と進むに伴い低い値となり,気流制限が進行するほど肺面積変化率が低下したことが示された。
また,安静換気下で呼吸機能を可視化するモストグラフとの各パラメータを比較すると,気道抵抗および呼吸リアクタンスそれぞれの値がいずれも有意に相関しており,気流制限や換気不均等と関連していると考えられた。
症例は53歳,男性で術前の呼吸機能検査で閉塞性換気障害が指摘された(図1)。気管支喘息や鼻炎の合併・既往はないがcurrent smokerで,CATスコアは15点であった。また,%FEV1は49.7%,RVが上昇し,DLCOが低下しており,症状,機能からCOPDだと考えられた。抗コリン吸入薬(LAMA)とβ2刺激薬(LABA)による治療を行ったところ,治療後は肺面積の変化率も大きくなった。

表1 閉塞性換気障害での検討

表1 閉塞性換気障害での検討

 

図1 症例:53歳,男性のCOPD患者

図1 症例:53歳,男性のCOPD患者

 

間質性肺疾患での検討

本検討では,胸部X線動態解析を行った233例のうち,間質性肺疾患の40例を対象にした。特発性肺線維症(IPF)や強皮症,進行性線維化を伴う間質性肺疾患が中心で,肺活量(VC)の低下や拘束性の機能障害があり,DLCOは平均38.3%と非常に低い集団である。その肺面積変化率と肺気量分画,強制呼出曲線の関係を見ると,閉塞性換気障害と同様,有意に相関し,残気率(RV/TLC)との相関も認められた(表2)。また,%VCを軽症が80%以上,中等症が65〜80%未満,重症が65%未満として層別化すると,閉塞性換気障害の場合と同様,中等症,重症になると値が低くなり,VCの低下に伴って肺面積変化率も低下した。
なお,間質性肺疾患20例で,肺面積変化率と6分間歩行距離の関係を検討したところ,変化率の低い方が歩行距離も短く,相関が認められた。このことから,胸部X線動態解析による運動耐容能の評価が可能であることが示された。

表2 間質性肺疾患での検討

表2 間質性肺疾患での検討

 

まとめ

閉塞性換気障害における肺面積変化率は,気流制限や肺過膨張を反映している。また,間質性肺疾患における肺面積変化率の低さは,VCや運動耐容能を反映している。以上のことから,胸部X線動態解析は新たな呼吸機能評価法としての臨床的有用性が期待される検査である。今後は各疾患のタイプや病期分類など,より詳細な解析を行うための検討が必要であり,そのための人工知能(AI)の応用も期待される。

TOP