X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第1回X線動態画像セミナー

ディスカッション 動画X線画像が持つ臨床価値とその将来性 〜各専門領域から〜

ディスカッション 動画X線画像が持つ臨床価値とその将来性 〜各専門領域から〜

第4部のディスカッションでは,「動画X線画像が持つ臨床価値とその将来性〜各専門領域から〜」と題して,各専門領域におけるX線動態画像の臨床応用について,4名のコメンテーターが臨床価値と可能性を述べた後,活発なディスカッションが行われた。

座 長
黒﨑 敦子 氏(公益財団法人結核予防会 複十字病院放射線診療部放射線診断科)
長谷部光泉 氏(東海大学医学部付属八王子病院画像診断科)

コメンテーター
柴田 陽光 氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座)
谷   徹 氏(滋賀医科大学革新的医療機器・システム研究開発講座)
髻谷  満 氏(公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸ケアリハビリセンターリハビリテーション科)
織田 弘美 氏(埼玉医科大学病院病院長)

呼吸器内科
肺換気シンチグラフィをリプレースする可能性

柴田氏:呼吸器内科領域では,低酸素血症の原因となる換気/血流比の不均衡(V/Qミスマッチ)の評価が重要である。従来,その評価法として肺換気シンチグラフィがあったものの,煩雑な検査手技,被ばく,高コストなどの理由から普及が進んでいなかった。しかし,新たにX線動態画像が登場したことで,V/Qミスマッチの評価が容易に行える可能性がある。これは多くの呼吸器内科医が切望していたことであり,今後の適応に大きな期待を寄せている。
例えば,慢性呼吸器疾患では,気道感染などによって増悪するケースがあるが,安定期と増悪時の換気の違いをまだ明らかにできていない。X線動態画像を用いることで,V/Qミスマッチが慢性呼吸器疾患の病態にどのような影響を与えているかを評価できるようになってきていると考えられる。そのためにも,今後は定量性の高い評価方法を検討していくことが重要である。

外科領域
術後合併症の早期診断が可能に

谷氏:外科領域では,イベント発生前後の変化を観察できることが,大きな武器になると考えられる。それには,まずポータブル型のX線動画撮影システムの開発が期待される。ポータブル化できれば,例えば,手術後に病棟で経時的に撮影したX線動画像から循環系パラメータの変化を推計するといった用途が期待できる。
また,術後の合併症は背臥位の状態で発症することが多いため,術前・術後とも背臥位で撮影したX線動態画像から肺機能の情報が得られれば,合併症のリスク評価に有用だろう。
このほか,整形外科手術などを施行した患者はD-dimerが高値だと肺血栓塞栓症が疑われるが,このような症例においても,X線動画像によって早期発見が可能になると期待される。

リハビリテーション,救急・災害医療
呼吸法の指導での活用に期待

髻谷(たぶさだに)氏:当院では,呼吸器疾患患者のリハビリテーションにおいて,効率の良い呼吸法である腹式呼吸の指導を行っている。臥位から始めて,座位,立位へと指導を行っていくが,立位での腹式呼吸ができない患者がいる。このような症例にX線動態画像を用いて,患者の呼吸の状態や有効な指導法を検証できると考えられる。
また,喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に対して行っている呼気時の気道閉塞防止のための口すぼめ呼吸の有効性の検証に,X線動態画像が役立つ可能性がある。口すぼめ呼吸によりエアートラッピングが解消されるのを動画像で観察できると期待される。さらに,気管支拡張薬などの吸入薬に対する吸入の指導も行っているが,吸入が正しく行えていない患者が非常に多いため,気管支拡張薬の吸入によって気管の拡張や空気の流れを,X線動態画像で視覚的に確認できれば,吸入指導の効果確認に有用と思われる。
呼吸器以外では,嚥下のリハビリテーションへの適応が期待される。嚥下障害の評価には嚥下造影検査(VF)が有用であるが,モダリティなど設備が整っておらず施行できない施設では,X線動態画像が代替検査として有用となる可能性がある。このほか,整形外科領域のリハビリテーションにおいて,関節の動きの評価への適応も考えられる。
一方,救急やICUなど超急性期医療においても,X線動態画像の有用性が期待される。われわれは下側肺障害を生じた患者に対して,体位ドレナージを施行しているが,肺のどの区域に無気肺が生じて血流の低下や換気の障害を起こしているか,といった情報を得ることが重要となる。現状,CTを施行しているが,X線動態画像を用いることで容易に評価することが可能になり,治療精度の向上も期待できる。

整形外科
人工膝関節置換術の術前評価に適応可能

織田氏:整形外科領域でのX線動態画像の適応については,まず人工膝関節置換術の術前評価が挙げられる。人工膝関節には,後十字靱帯を温存するcruciate retension type(CR型)と切除するposterior stabilizer type(PS)型がある。CR型は最大屈曲角度に制限がなく,固有深部知覚を維持できるものの,付着部剥離を行う必要があり,手技が困難である。この付着部剥離の長さをX線動態画像により術前に評価することで,CR型の手術の適応を増やせるとともに,手技の精度を高めることが可能になる。
そのほかにも,腰部脊柱管狭窄症に対する適応も期待できる。現在,手術適応患者に対しては脊髄造影を施行しているが,X線動態画像で動態を観察することにより,手術の適応などの評価が可能になる。

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