技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)
2021年6月号
US Today 2021 超音波検査・診断最前線
検者による誤差の低減をめざしたVenueシリーズ─Automated toolの紹介
谷口 雅美[GEヘルスケア・ジャパン(株)超音波本部Point of Care部]
超音波診断の短所の1つとして,昔から「検者依存性が高い」と言われている。検者依存性を低減するために,施設内外での教育,超音波検査の標準化などがなされてきた。本稿では,検者依存性の低減,また,検査時間の短縮をめざして人工知能(AI)を活用し開発された,「Venueシリーズ」(図1)のautomated toolについて紹介する。
■ Automated toolの紹介
Venueシリーズのautomated toolは,AIを駆使し,検者は指定の部位をスキャンしボタンを1回押すだけで,さまざまな計測値を得ることができる。現在,Venueシリーズは,4つのautomated toolがオプションとして搭載できる(図2)。
1.循環器領域のツール
・Automated VTI:心尖部長軸像もしくは心尖部五腔像を描出し,ワンタッチで左室流出路の速度時間積分値(VTI)を算出する。
・Real-Time EF:心尖部四腔像を描出し,ワンタッチで左室駆出率をリアルタイムで算出する。従来の当社超音波診断装置では,2D speckle tracking技術を応用し保存した画像から駆出率(以下,EF)を算出していたが,Real-Time EFはAI技術の活用により,スキャンをしている際に心拍ごとにEF値が表示される。
・ Automated IVC:下大静脈の長軸を描出し,ワンタッチで下大静脈の呼吸性変動CI値を算出する。自発呼吸と人工呼吸,それぞれに対応した計測が可能である。
2.呼吸器領域ツール
・Automated B-line:胸部肋間にプローブを当て,ワンタッチでその肋間のB-lineのカウントを行う。
これらのツールを利用することにより,検者はスキャンをすることに専念でき,また,計測時のトレースなどの機器操作による検者間誤差の低減に寄与する。
■ 肺エコーとAutomated B-lineの解説
昨今,肺エコーに対する関心が高まっているが,中でも肺炎の超音波検査でB-lineの有無,本数,幅による判断は,1つの大きなポイントとなっている。B-lineは,肺の含水量の増加や間質の異常などにより出るアーチファクトとされており,胸膜下から縦方向に減衰することなく深部まで届く多重反射アーチファクトである。
Automated B-lineでは,検者は胸部肋間にプローブを当て,ボタンを押すことにより,装置がB-lineの本数をフレームごとにカウントし,また,フリーズをすることにより,Automated B-line起動時にB-lineが最大本数であったフレームを表示する機能である。これを各肺野で行い,画像保存をすることにより,肺野全体をダイアグラム表示することが可能である。
B-lineの確認は,Z-lineなど,B-lineと見間違うアーチファクトがあるため,ある程度の熟練を要すとされている。図3に,Automated B-lineを使用し,肺エコーの初心者(レジデント:a)と専門医(b)でデータを比べたものを提示する。同一の患者を初心者(レジデント)と専門医がそれぞれスキャンし,Automated B-lineを起動し,ダイアグラム表示したものである。共にLung Scoreは16となり,同様の結果が得られている。
AIを用いて開発されたAutomated B-lineを活用することにより,ビギナーからエキスパートまで,スキャン技術以外で生じる誤差の軽減に貢献できる。
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