技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)
2018年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
腹部IVRにおけるGE社3D技術の到達点
柴草 高一(APAC Interventional Advanced Application)
腹部領域のインターベンション(以下,IVR)において,コーンビームCアームCT(以下,CBCT)という概念が到来してからすでに長い年月が経過している。腹部IVR全般にわたる実臨床におけるCBCT画像の意義はきわめて大きく,逆にそれなしでは効率的な治療を行うことができないレベルに来ていると言っても過言ではない。
その一方で,CBCT撮影に起因した治療時間や被ばく量の増加という問題点も存在する。CBCTにおける“Unmet needs(まだ満たされていない顧客の潜在的な要求・需要)”に対し,医療機器メーカーの立場から提供できる「技術の到達点」とは何か? このような観点から,IVRをサポートする最新の3Dアプリケーションについて解説してみたい。
■高齢患者のCBCT撮影に朗報!!“Motion Freeze”
CBCT画像を用いた腫瘍濃染の確認,栄養血管の探索,そして治療効果の判定などは,日々の実臨床で多く活用されている。
その一方で,「そもそも,この患者に対してCBCT撮影を完遂できるのか?」は,実臨床の現場において「解決が難しい問題」として広く認知されている。特に,高齢社会である本邦は,患者全体の中の高齢者が占める割合がきわめて大きく,その中にはわずか5秒程度とはいえ,CBCT撮影時に息止めを十分に行うことができない患者が少なくない。CBCT画像の重要性を理解しているがゆえに,その都度IVR施行医や診療放射線技師が,事前に患者に十二分な説明を行う必要がある。患者によっては,本撮影の前に「息止めの練習」を数回にわたり行うことで,治療が中断されるだけでなく,余計な時間を強いられるケースが少なからず存在する。そのような努力を行ったにもかかわらず,いざ本撮影中の最後のタイミングで息止めが良好に続かず,落胆の声を上げた苦い経験をお持ちの読者も少なからずいらっしゃることだろう。
そのような実臨床における“Unmet needs”に対して,医療機器メーカーとしての立場から何かできることはないか……? この着眼点こそが,IVR時のCBCTの常識を変えるMotion Freezeの開発につながった。ちなみに,以下に掲載の症例の場合,5秒間の回転撮影のうち,最後の1.5秒程度が息止め不良だった。従来のCBCT画像(図1 a)では,腫瘍濃染はおろか肝動脈そのものの描出も怪しいところではあるが,Motion Freezeを用いて再構成したCBCT画像(図1 b)では,その双方が良好に描出されている。
Motion Freezeでは,一連の回転画像によるおのおのの血管位置を幾何学的かつ時系列的に解析し,不随意に患者の呼吸性体動が生じてしまった場合,移動してしまった血管を“本来あるべき位置”に戻す画像処理を加えて3D画像再構成する。ここでは,弊社が得意とする“AI(Applied Intelligence)”アルゴリズムを駆使している。さらに,CBCT画像の特性を考慮し最大限の効果を達成できるように,さまざまな付加技術を活用している(図2)。
また,実際の操作ワークフローの面でも,煩雑な作業を回避するためにきわめてシンプルなアプリケーションとして仕上がっており,Motion Freezeの項目をワンクリックでオンにするだけで起動できる(図3 右上)。なお,呼吸性体動によるアーチファクトを抑制するための再構成に必要とされる時間は,通常の3D画像再構成にわずか数秒を追加するだけであり,きわめて短時間で体動補正が可能である。
■肝臓がんの栄養血管探索をサポートする“FlightPlan for Liver”
肝動脈化学塞栓療法(以下,TACE)を行うためには,栄養血管が特定されないと手技自体を開始できない。超選択的なTACEをめざして手技自体もさらに複雑化しており,術中に的確で迅速な栄養血管の特定を支援する機能が求められる中で,FlightPlan for Liver(FPFL)が開発された。CBCTデータを基に栄養血管と思われる血管を自動特定し,術者にセカンドオピニオン的に情報提供することで,より効率的なTACEを実現していただくことを目的としている。
FPFLを起動すると,MIPおよびVR画像,そして各断面画像が自動表示される。その後,腫瘍濃染位置をROIで囲みクリック操作すると,栄養血管と思われる信号を自動検出し,VR画像上で緑色に表示する(図4)。血管自体の描出能を妨げることを危惧し,あくまでも色のみを変化させ補助ラインなどは表示しない。かつFPFLによる探索結果とともに,MIPやVR画像ならびに各断面画像を同時表示することにより,術者自身が栄養血管に関して総合的な判断が行えるように画像がレイアウトされている(図5)。
前述のMotion FreezeがFPFLにもたらす意味は大きい。FPFLがいくら優秀であっても,大元のCBCT画像が良好に得られていなければまったく意味をなさないからである。息止めが不十分な患者においても良好なCBCT画像を得られることによって,初めて腫瘍濃染の確認や栄養血管探索のために,「次のステップ」であるFPFLに移ることが可能となる。このような意味で,Motion FreezeはTACEにおける治療効率を飛躍的に向上できるアプリケーションになると思われる(図6)。
■Needle ASSIST & Stereo3D
生検などのnon vascular IVRは,複雑に隣接する臓器を傷つけずに目的の対象物へ穿刺針を到達させることが重要である。高い精度が要求される手技を支援する機能として,“Needle ASSIST”が開発された。
検査冒頭にCBCTを収集し,再構成されたオブリーク画像上にentry pointとtarget pointを指定すると,これらの間を結ぶ穿刺軌道が自動で算出される。さらに,entryとtargetが一直線状で重なるbull’s eye view,穿刺軌道が一番長く見えるprogress viewを瞬時に切り替えつつ,3Dロードマップとしてtargetと穿刺軌道を透視上に表示することができる(Needle ASSIST)。
針位置が穿刺軌道からずれているか否かを確認するためには,その都度CBCT撮影を行い,確認する必要がある。IVR-CT装置であれば,CT透視機能を用いてリアルタイムに針位置を確認することが可能ではあるが,設置スペースや装置維持費などの観点からも,すべての施設において容易にIVR-CTを導入できる環境には至っていないことは周知の事実である。また,追加CBCT撮影のために手技を中断されるだけでなく,CBCT撮影準備や,新たに取得されたCBCT画像の解析に多くの労力が必要となり,さらに被ばく量も増加する。このような“Unmet needs”に着眼し,“Stereo3D”の開発につながった。
Stereo3Dでは,穿刺針などの対象物が透視視野内に位置する状態で,装置が導き出した2つのアーム角度の透視画像を収集する。その後,透視画像内から対象物を自動抽出し3D再構成を行い,検査冒頭に撮影したCBCT画像上にバーチャルなラインを表示することができる(図7)。
追加CBCT撮影の代わりに2方向からの透視画像のみを用いて,3D画像上でさまざまな断面や角度から穿刺針の深度や方向の詳細確認が可能となる。手技中にほぼリアルタイムに正確性を確認しながら手技精度を高めることができ,治療効率の大幅改善,ならびにCBCT撮影回数低減による被ばく低減の双方を実現することができる。
◎
腹部IVRにおける“Unmet Needs”に対して,弊社が考える3D技術の到達点として,3つのアプリケーションを紹介した。日々の実臨床の現場において,より生産的なIVRを施行するための
一助となれば幸いである。
多目的X線撮影システム INNOVAⅡ
医療機器認証番号:219ACBZX00035000号
多目的X線撮影システム INNOVA
医療機器認証番号:21500BZY00327000
アドバンテージワークステーション
医療機器認証番号:20600BZY00483000号
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