技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2018年3月号

Dual Energy Imagingの技術的特徴

進化し続けるGE dual energyについて

松本 和也(GEヘルスケア・ジャパン(株)CT営業推進部製品企画)

dual energy CTは,仮想単色X線画像(monochromatic画像:Mono画像)や物質弁別画像(material decomposition画像:MD画像),ヨードや脂肪などの各種密度値計測,実効原子番号解析などが可能となり,single energy CTにおける制限を克服し,現在のCTの役割を超える新たな撮影方法として期待されている。用途としては,主にヨード密度情報を用いたコントラストの増強による造影剤量の低減,病変部の検出能向上などが知られており,腹部領域の多相撮影のフェーズ数を減らす可能性も示唆されている1)
GEでは,2009年頃よりfast kVp switching方式によるdual energy撮影“Gemstone Spectral Imaging(GSI)”が,ガーネット検出器を搭載したCTで可能となった。そして2017年,「Revolution CT」でのdual energy撮影である“GSI Xtream”が日本国内でも稼働を開始し,2018年1月現在約40施設で使用されている。本稿では,GEの各dual energyの技術的特長から,その有用性・可能性について概説する。

■GSI

dual energyの収集方式はいくつかあるが,GEでは従来の検出器素材に比べ100倍の高速発光感度を誇る独自のガーネット検出器と,1viewごとに管電圧の切り替えが可能な高性能ジェネレータの組み合わせにより,1回の撮影で異なる2つの管電圧80kVp,140kVpをほぼ同時に(0.5ミリ秒差)収集するfast kVp switching方式を採用している。この方式により,dual energyを考える上で重要なポイントである良好なエネルギー分解能,2つのエネルギー間の時間的・空間的ミスレジストレーションの少なさ,撮影視野の制限がない点のすべてを同時に達成している。そして,GEのdual energyの画像再構成は,プロジェクションデータ上で水とヨードそれぞれの物質に基づいたビームハードニング補正を行っており,このデータから計算された画像は,従来のCTと比較してビームハードニングが大幅に改善されており,全身領域でdual energy撮影が可能となっている(図1)。
GSIによるMono画像の有用性はすでに示されており2),低keV画像ではコントラスト増強による造影剤量の低減,末梢血管描出や病変部の検出能向上,高keV画像では金属アーチファクトの低減などがある。さらに,一般的なdual energyの活用法以外にも,精度が要求されるヨード・脂肪など各種密度値計測,実効原子番号解析などを用いた研究発表も多数ある。Miletoらは,副腎結節において,CT値では判別できないlipid poor adenomasとnonadenomasをヨード,脂肪,水の各密度値を用いることで弁別可能であることを報告している3)。また,Shinoharaらは,実効原子番号を用いた頸部プラークの性状評価の可能性を示唆し4),さらに,Aokiらにより,肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療後の再発予測に,ヨード密度値がCT値と比べ有用であったことが報告されている5)

図1 GSI画像再構成フローの概念図

図1 GSI画像再構成フローの概念図

 

■GSI Xtream

上記のように,GSIの活用方法は広がりを見せつつあるが,定量解析や新たなリサーチには,MD画像や各種計測値などでさらなる高画質や,より高い精度が求められる。Revolution CTでのdual energyであるGSI Xtreamは,その高画質・高精度の実現と,被ばく低減やワークフロー向上を実現する新たな技術を多数搭載している。

1.高画質・高精度について
ワイドカバレッジシステムで,かつ高画質・高精度のdual energy撮影を実現するためには,散乱線の影響を抑制することが重要である。Revolution CTでは,検出器上部に3Dコリメータを有することで,効果的に散乱線を除去できる機構となっている(図2)。図3は,体軸方向でのCT値,ヨード密度値を評価した結果だが,ワイドカバレッジシステムでも体軸方向でCT値,ヨード密度値のバラツキが少なく,精度の高さが確認できる。さらに,逐次近似再構成法である“ASiR-V”や独自のノイズ低減アルゴリズム(デノイズアルゴリズム)を用いることにより,Mono画像,MD画像共にイメージノイズも格段に低減されている(図4)。図5は,Gammex社製「Tissue Characterizationファントム (Model-467)」を用いて,各実効原子番号の実測値と真値とを比較したものであり,各マテリアルにおいて精度の高い計測がなされているのが確認できる。このように,GSI Xtreamは,XYZすべての軸でより精度の高いビームハードニング抑制やCT値・密度値計測が実現されており,dual energyを用いた定量解析やリサーチなどにも貢献できると考えられる。

図2 散乱線を除去し高精度を実現するGSI Xtream

図2 散乱線を除去し高精度を実現するGSI Xtream

 

図3 体軸方向でのCT値,ヨード密度値の計測結果

図3 体軸方向でのCT値,ヨード密度値の計測結果

 

図4 230mA,0.5秒回転,CTDIvol 8.8mGyで撮影された腹部画像

図4 230mA,0.5秒回転,CTDIvol 8.8mGyで撮影された腹部画像

 

図5 GSI Xtreamでの各実効原子番号の実測値と真値の比較 (画像ご提供:慶應義塾大学病院・山崎彰久先生)

図5 GSI Xtreamでの各実効原子番号の実測値と真値の比較
(画像ご提供:慶應義塾大学病院・山崎彰久先生)

 

2.被ばくに関して
Revolution CTには,検査目的や被検者の体格に合わせ撮影プロトコールを自動的に設定する“Clinical ID”と“GSI Assist”機能が搭載されている。また,通常検査で最大82%の被ばく低減を実現するASiR-Vの搭載と独自の画像再構成により,single energy CTと比較しても同等の被ばく線量で撮影可能となっている。国内での使用経験でも,連続44症例の同一患者の上腹部単純120kVp single energy CTと,同一部位の造影GSI Xtream撮影の平均 CTDIvolが,9.26mGy(120kVp),9.67mGy(GSI Xtream)とほぼ同一線量であったことが報告されている。

3.ワークフローに関して
ルーチン検査でdual energyを用いるに当たり,撮影スピードや再構成速度を含めたワークフローは非常に重要なポイントとなる。GSI Xtreamでは,80mm ボリュームヘリカルdual energy撮影が可能であり,撮影視野の制限がない状態で最速245mm/sの高速撮影が使用できる。再構成については,ハイスペックな「Xtreamサーバ」と,新たな画像再構成プロセス“GSI Smart Recon”により,従来比最大8倍以上の高速画像再構成を実現している。これは,2500枚程度の画像を1分弱で再構成できることになり,また,脂肪密度画像,ヨード密度画像,任意のMono画像,仮想単純画像などをダイレクトに再構成することが可能になった。これにより,専用ビューワの用意やそこでの作業を必要とせず,撮影後ダイレクトに読影の流れに組み込むことができる。もちろん,従来どおり専用ビューワで詳細な検討,処理,解析を行うことも可能となっている。

GSIをリリースし10年,現在ではバージョンアップを繰り返し,画質,ワークフローが改善され,特別な検査ではなく,ルーチン検査の一つとして臨床使用されている。さらに,GSI Xtreamでは,体幹部の検査は単純撮影も含め全例dual energyで行っている施設が増えており,さらなる有用性の検討が期待される。今後も日常の診療からリサーチまで幅広く医療に貢献する技術の開発を継続していく。

薬事情報:
マルチスライスCTスキャナ LightSpeed
類型Revolution
医療機器認証番号 21100BZY00104000号
マルチスライスCTスキャナ Revolution
医療機器認証番号 226ACBXZ00011000号

●参考文献
1)Patino, M., et al. : Material Separation Using Dual-Energy CT ; Current and Emerging Applications. Radiographics, 36・4, 1087〜1105, 2016.
2) Matsumoto, K., et al. : Virtual monochromatic spectral imaging with fast kilovoltage switching ; Improved image quality as compared with that obtained with conventional 120-kVp CT. Radiology, 259・1, 257〜262, 2011.
3) Mileto, A., et al. : Dual-Energy Multidetector CT for the Characterization of  Incidental Adrenal Nodules ; Diagnostic Performance of Contrastenhanced Material Density Analysis. Radiology, 274・2, 445〜454, 2015.
4)Shinohara, Y., et al. : Assessment of carotid plaque composition using fast-kV switching dual-energy CT with gemstone detector ; Comparison with extracorporeal and virtual histology-intravascular ultrasound. Neuroradiology,
57・9, 889〜895. 2015.
5)Aoki, M., et al. : Prognostic impact of average iodine density assessed by dual-energy spectral imaging for predicting lung tumor recurrence after stereotactic body radiotherapy. J. Radiat. Res., 5・4, 381〜386, 2016.

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
CT営業推進部
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:042-585-9350
www.gehealthcare.co.jp

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