技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2014年12月号別冊付録

院内と院外の情報連携が可能な統合画像管理・参照システム「Centricity Clinical Archive」

河合秀紀(ヘルスケアIT本部)

はじめに

多くの医療機関で医療記録のIT化が推進される中,院内外に散在する医療画像や多種多様な文書,汎用画像データを,いかに効率的に統合管理し参照していくべきか,という新たな課題が浮かび上がってきています。
Centricity Clinical Archive(CCA)は,院内の医療情報統合のみならず,周辺医療機関との情報連携も視野に,こうした課題を解決し業務フローを効率化する新たなソリューションです(図1)。

図1 CCAのシステム概要

図1 CCAのシステム概要

 

院内から地域医療連携まで統合・共有レベルに応じたシステム構築

GEは,診療情報の統合・共有化のレベルを4つの段階にとらえています。
放射線科のPACSに代表される,単一診療科におけるDICOMデータのアーカイブ(レベル1)から始まり,循環器科に見られるような各種の医用画像や検査データを統合・参照するアーカイブ(レベル2),部門横断的に診療情報を院内統合するシステム(レベル3),その発展型として複数医療機関での診療情報共有基盤(レベル4)です。CCAは,この情報統合化レベルの各段階に合わせたソリューションの提供が可能です。
診療情報の統合・共有化の環境を構築する際には,文書や画像をアーカイブすることに加えて,データやユーザーに応じたアクセスコントロールも重要です。
CCAでは,文書・画像ごとに守秘レベルを定義し,さらに職種や役職といったユーザーのプロファイルごとに守秘レベルを設定することで,権限のないユーザーによる診療記録の参照を防止します。

ガイドラインに準拠した原本管理方式に対応し原紙保管から解放

同意書などの紙文書をスキャンし,システムへアーカイブするだけでは,そのデータを文書の原本として扱うには不十分です。
CCAでは,電子署名やタイムスタンプを付加する機能を提供することで,厚生労働省が定めるガイドラインに準拠した方式による,情報の真正性が確保された紙文書の電子化に対応します。この仕組みにより,原紙保管を不要とする運用も可能となり,原本管理の生産性向上に寄与します。

標準規約準拠のオープンな地域連携システムの構築をサポート

CCAは,医療情報連携の国際標準規約のひとつであるIHE XDS統合プロファイルに準拠したアーキテクチャを採用しています(図2)。IHE XDS統合プロファイルでは,部門あるいは施設間で共有する医療ドキュメントを,互いの施設から参照可能なリポジトリに格納します。各ドキュメントの情報のありかや文書の付帯情報については,施設間で共有するレジストリに登録します。この仕組みにより,部門間や施設間でドキュメントの相互参照が必要になった際には,レジストリを検索することにより,そこにひも付いて格納されているリポジトリから該当するドキュメントを参照できる環境を構築します。
また,GEは,ヘルスケアIT分野における標準化への取り組みの一環として,日本IHE協会主催のマルチベンダーによる総合接続試験「コネクタソン」に参加しています。その「コネクタソン」において,CCAがサポートするXDS統合プロファイルの機能は,高い適合性が証明されています。
このため,XDSに準拠する他社製品とも容易に接続できるオープンなシステムの構築が可能で,システム間連携のための工数やコストも大幅に軽減することが期待できます。
さらに,CCAに保存された情報は,将来にわたって特定ベンダーの制約を受けることなく管理するというVNA(Vendor Neutral Archive)を体現したシステムにより,長期的な安定運用を実現します。

図2 IHE XDS統合プロファイル

図2 IHE XDS統合プロファイル

 

マニュアル不要の直観的な操作でDICOM/non-DICOMデータへアクセス

CCAでは,DICOM形式の検査画像はもとより,各ベンダー独自の仕様で保存されてきた同意書・検査レポート・サマリなどの文書や,デジカメ画像に代表される汎用画像までを一元管理することが可能です。CCAで統合管理されたデータは,マトリクス形式の表示と直感的な操作性を持つビューアで参照でき,院内各部門の壁を越えた情報共有を実現します(図3)。
また,このWebブラウザベースのビューアは,アプリケーション資源をクライアント端末にインストールすることなく使用できるよう設計されています。これにより,電子カルテシステムといった診療端末など,アクセス権限のあるユーザーであれば,ネットワーク上の端末から容易にシステムへアクセスし利用が可能です。このデータへのアクセス環境により,患者の検査履歴や関連文書など,必要な情報を必要な時に簡便に確認でき,効率の良い高品質な診療を支援します。

図3 マトリクス表示とビューア

図3 マトリクス表示とビューア

 

院内外の画像統合管理から「地域完結型医療」へ

超高齢化社会を迎えるわが国では,「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には高齢者が3600万人を超え,持続可能な医療体制への対応が急務です。厚生労働省も,ITを利用した地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進し,「地域完結型医療」への流れが加速しています。
CCAは地域医療情報連携の基盤として活用いただくことが可能です。地域の中核病院やデータセンターにCCAサーバを設置して,連携する医療機関がネットワーク経由で情報を参照したり,画像データを集中管理したりするなど,さまざまな利用方法が想定できます。お客様の環境・運用に沿った地域連携システム構築を,CCAによりサポートします。

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社 ヘルスケアIT本部
TEL 0120-202-021
www.gehealthcare.co.jp

 

●FOCUS ON「鳥取県地域医療連携ネットワーク(おしどりネット)」はこちら

TOP