技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2014年9月号

Step up MRI 2014-MRI技術開発の最前線

DV24アプリケーションの臨床応用

清水 俊博(MR営業部)

GEヘルスケアは,MRIのプレミアム機種に搭載される最新のプラットフォーム“DV24”を2013年末にリリースした。このDV24にはさまざまな最新のアプリケーションが含まれており(図1),本特集にて概説している“SILENT SCAN”をはじめ,局所励起技術である“FOCUS”,新たな横隔膜同期“Navigator”と3D T1Wの併用技術など,MRI診断の新たなる可能性を示す技術が注目されている。本稿では,特に国内で評価の高いSILENT SCAN,FOCUS,Navigatorについて,国内稼働施設からの臨床有用性に関する声を中心に紹介する。

図1 DV24プラットフォーム

図1 DV24プラットフォーム

 

■SILENT SCAN

1)小児検査における有用性
SILENT SCANの技術解説については,本特集のSILENT SCANの技術解説を参照いただきたい 。小児検査におけるSILENT SCANの使用方法は施設によってさまざまであるが,ここでは最も使用方法が多い事例を紹介する。これまでのMRI検査では,検査前の鎮静導入後の眠りの浅い時に検査を行うケースが多く,MRIの撮像音により小児患者が起きてしまい,検査に支障を来すことが多かった。これに対して,SILENT SCANを導入した施設では,鎮静導入後の眠りの浅い時だとしてもSILENT SCANで検査を行うことで,検査中に覚醒する例が減っている。また,鎮静剤の追加投与も減っており,結果として検査の効率化および安全面の向上につながっている。また,小児患者のご家族や検査に携わる医療スタッフからも,不安感が解消されたとの話を聞くことがある。
図2は,SILENT SCANを導入した大阪府立母子保健総合医療センターの臨床例である。従来は2DのT1Wを矢状断像で撮像していたが,SILENT SCANを導入してからは,撮像時の騒音がないだけでなく,3DのT1Wで撮像できることから,解剖情報がより詳細に確認できるようになり,診断がより明確になっているとのコメントをいただいている。

図2 SILENT SCAN:小児臨床例(5歳,軟骨無形成症) (画像ご提供:大阪府立母子保健総合医療センター様)

図2 SILENT SCAN:小児臨床例(5歳,軟骨無形成症)
(画像ご提供:大阪府立母子保健総合医療センター様)

 

2)SILENT MRAの有用性
SILENT MRAについても本特集のSILENT SCANの技術編にて紹介している通り,ultrashort TEの効果によって,磁化率や位相分散の影響を最小限に抑えるという特性を有している。この特性を利用して,順天堂大学医学部附属順天堂医院では,SILENT MRAを動脈瘤に対するコイルおよびステント留置後のMRI検査のフォローアップとして用いている。
図3は,実際の臨床例である。右側のTOF-MRAでは,ステントやコイル近傍は磁化率の影響によって画像化されていないが,中央のSILENT MRAではultrashort TEの効果によって,コイル内の血流の確認が可能となっている。今までは,術後のフォローアップの際には血管撮像検査(図3 左)を行っていたが,これをMRI検査で非侵襲的にフォローアップできれば臨床的な意義は非常に大きいと期待を寄せている。

図3 SILENT MRA:動脈瘤 (画像ご提供:順天堂大学医学部附属順天堂医院・青木茂樹先生)

図3 SILENT MRA:動脈瘤
(画像ご提供:順天堂大学医学部附属順天堂医院・青木茂樹先生)

 

■FOCUS

FOCUSは,2D RF Excitationという技術を基本原理とした特殊な局所励起撮像法1)であり,DV24ではFOCUSを拡散強調画像(以下,DWI)および拡散テンソル画像に使用することが可能である。
FOCUSの特長は,通常のDWIに比べて,局所励起によって有効視野をかなり狭くして撮像することが可能なことである。そのため空間分解能が高く,組織や病変の辺縁が明瞭に識別できるようになる。また,DWI特有の歪みも大きく軽減できるため,横断像だけでなく矢状断像や冠状断像などの撮像においてもその効果を発揮する。
図4は,FOCUSを導入した施設の臨床画像である。脳梗塞における高分解能撮像はもちろん,その分解能から病変の小さい膵臓がんの検出が容易になり,また膀胱腫瘍や子宮がんを多方向から分解能高く撮像することができる。また,これまで困難であった脊髄・椎体のダイレクト・サジタルDWIにおいても,歪みなく撮像できるため,病変をしっかりととらえることができるようになっている。

図4 FOCUSの臨床データ (画像ご提供:聖隷浜松病院様,青森県立中央病院様,山形大学医学部附属病院様)

図4 FOCUSの臨床データ
(画像ご提供:聖隷浜松病院様,青森県立中央病院様,山形大学医学部附属病院様)

 

■Navigatorと3D T1Wの併用

DV24において,技術を向上させた手法の1つにNavigator(横隔膜同期法)がある。Navigatorでは通常のT2WやFIESTA(SSFP法)での併用はもちろんのこと,3DのT1W撮像法であるLAVAおよびLAVA-FLEXにも併用することができるようになった。これは,特にガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)による肝細胞特異性造影剤検査(以下,EOB検査)の肝細胞造影相においてその有用性を発揮している(図5)。
図6は,1.5T MRIにおけるNavigatorを併用したLAVA-FLEX(2point Dixon法)のEOB肝細胞造影相の臨床例である。Navigatorを使用することで,肝細胞造影相の3D T1W撮像におけるスライス方向の分解能を飛躍的に高くすることができる。また,その恩恵はスライス方向の情報量だけでなく,撮像後の画像再構成により,矢状断像や冠状断像などさまざまな方向から面内の分解能を犠牲にすることなく診断できることもある。また,今回のNavigatorはスラブトラッキングの技術を有しており,撮像中に呼吸の位置情報を取得しながら励起スラブの位置を修正して撮像することができる。このため,呼吸の安定しない患者に対しても,安定した腹部検査が提供できる。
以上,本稿ではDV24の注目されている技術について紹介した。現在,GEヘルスケアでは“Humanizing MR”というコンセプトの下,診断性能,検査の快適性および検査効率を向上させるための技術開発を進めている。この技術開発には日本のMR技術チームも大きく携わっており,これからの製品にも期待していただきたい。

図5 Navigatorの特長

図5 Navigatorの特長

 

図6 Navigator併用LAVA-FLEX(肝細胞造影相) (画像ご提供:名寄市立総合病院様)

図6 Navigator併用LAVA-FLEX(肝細胞造影相)
(画像ご提供:名寄市立総合病院様)

 

●参考文献
1)Saritas, E.U., et al: DWI of the spinal cord with reduced FOV single-shot EPI. Magn. Reson. Med., 60・2, 468-473, 2008.

*Discovery MR750w 3.0T
医療機器認証番号: 223ACBZX00061000
販売名: ディスカバリーMR750w
*Optima MR450w 1.5T
医療機器認証番号: 223ACBZX00032000
販売名: オプティマMR450w

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
MR営業部
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL 042-585-9360
www.gehealthcare.co.jp

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