技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2013年12月号

最新ビューワ&タブレットソリューション

機械学習でハンギングプロトコルを強化するインテリジェント・ツール「Smart Reading Protocol(スマート・リーディング・プロトコル)」(ビューワ)

松葉 香子(ヘルスケアIT本部)

2013年春に日本国内における販売を開始した“Centricity Universal Viewer”には,従来のPACSビューワに比較し,新しい機能やウェブベースのプラットフォームが採用されているが,今回は新機能の中でも特に画像の表示・並び替えをより効率的にサポートすることが期待される,学習機能を持ったハンギングプロトコルについて紹介する。

■従来のハンギングプロトコル機能の煩雑さ

ハンギングプロトコル,つまり読影画像のモニター上における配列パターンの設定作業は,初期設定から継続的な更新まで,PACSユーザの中でも主に読影医の生産性を大きく左右する機能として,PACSベンダ,ユーザ双方にとって大きなチャレンジであり続けている。その背景として,画像の配列パターンにかかわる要因(パラメータ)が多岐にわたる一方で,従来のPACSビューワでは,モダリティや部位別に画像を表示する枠を設定する程度の機能が大半である上,これらのパラメータの画像配列に与える影響度などを加味したハンギングプロトコルの設定には,それら要因の関連性に対する理解とともに,複雑なプロトコル設定に慣れ,使いこなすことが前提となっていた。このような背景から,従来では,いわゆるデフォルトのハンギングプロトコルにより検査画像を初期表示した後にも,ナビゲータ等を用いてシリーズを並べ替えることが必要とされてきた。

■Smart Reading Protocolの仕組みと従来のハンギングプロトコル機能に勝る主な点

今般,GEの開発した“SRP:Smart Reading Protocol(スマート・リーディング・プロトコル)”は,こうしたハンギングプロトコルにかかる課題を解決するための手法として,機械学習(マシーンラーニング)の機能をビューワに実装したものとなっている。マシーンラーニングの一般的な例としては,オンラインショッピングなどに用いられている,ユーザの購買履歴や閲覧商品を分析した結果の「おすすめ」機能というものがある。PACSビューワのハンギングプロトコルへの応用としては,検査画像に関連するパラメータの認識,つまりパターンマッチングのアルゴリズムを従来よりも大幅に拡大・深耕しながら,学習プロセスと推論(予測)プロセスを並行して動作させることにより,ユーザの好みに合った画像配列表示をできるかぎりシンプルなプロセスで実現させようとするものである(図1)。具体的には,いわゆるDICOMヘッダに含まれるような情報のみならず,検査オーダー情報に含まれるような臨床的背景についてもパラメータとして加味する。一方,ユーザにとっては,それぞれのモダリティやシリーズ表示において自身の読影フローに近い画像配列が表示された際に,シングルクリックの学習ボタンを押下することで,明示的にそのパターンを機械学習させ,次の読影時の推論プロセスへ反映させる仕組みとなっている。このようにSRPでは,従来は別々に実行されていたハンギングプロトコルの作成処理と適用処理をシングルクリックによる学習機能で同時に実行することができ,ユーザは現場のIT管理者の手を煩わせることなく,より直感的に好みにあったハンギングプロトコルを設定できる。
読影においては,同一モダリティ・部位の検査であったとしても,含まれる画像のパターンは多岐にわたるが,SRPは,学習を重ねるたびに各パラメータのウエイトを考慮し,ハンギングプロトコルの精度を高めていく。各読影フローにおいて画像が表示された際に,何%のマッチング率(信頼度)でハンギングプロトコルが採用されたのかが表示されるため,ユーザはその値も参考にしながら,さらに明示的な学習をさせるかどうかを判断できる。
SRPにより,読影フローの中でも高負担・低付加価値とされるハンギングプロトコルの作成・適用の効率改善に寄与することが期待される。

図1 SRPエンジンの学習プロセスと推論プロセス

図1 SRPエンジンの学習プロセスと推論プロセス

 

*販売名称:セントリシティ・ユニバーサル・ビューワ
医療機器認証番号:225ABBZX00019000号

 

【問い合わせ先】
ヘルスケアIT本部
TEL 0120-202-021
www.gehealthcare.co.jp

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