技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2013年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

「Discovery CT750HD FREEdom Edition」の技術紹介─最新技術がもたらすクリニカルベネフィット

一番ヶ瀬 敬(TiP CT アプリケーショングループ)

「Discovery CT 750 HD」は,“SeeMore”“Know More”“Less Dose”をコンセプトに,多くのお客様から高い評価をいただいている。“See More”では,心臓を含む全身領域で高分解能画像を実現し,“Know More”では,「GSI(GemstoneSpectral Imaging)」によるspectral画像・物質弁別・物質密度解析が可能となり,さらに,“Less Dose”では,「ASiR」を使用することで,画質をキープしたまま大幅に被ばくを低減することが可能となった。特に,2011年にリリースした「Veo」(完全なモデルベース逐次近似再構成法で,別途装置が必要)では,一般X線検査レベルまで被ばくを落とすことも可能となっている。

2012 年にリリースした「Discovery CT 750 HD FREEdom Edition」は,これまでの機能に加えて循環器領域に特化した最新技術を搭載し,心臓CT の多くの課題を克服することができる。今回はその最新技術を紹介する。

■ SnapShot Freeze

冠動脈CT にて各血管を観察する際,冠動脈の動きは同じ心拍・同じ時間分解能のCT検査を行っても,冠動脈が100%停止した画像を得られるわけではないということは,多くの論文からもよく知られている。また,被検者ごとの差も大きく,時間分解能を向上させるだけでは限界があることも知られている事実である1),2)図1)。

図1 心周期による冠動脈移動速度の変化

図1 心周期による冠動脈移動速度の変化

 

そこで,これらの問題を克服すべく,新しい視点で開発された“SnapShotFreeze”を紹介する。
SnapShot Freeze では,まず心電同期撮影で得られた生データ上で指定した心位相を中心に,前後80ms の時間軸を持った4Dデータを作成し,それぞれの冠動脈を自動認識する。さらに,単位時間あたりに冠動脈がX-Y-Zの方向へどのくらい移動しているのかを,ベクトル演算にて求める方法を用いている。いわゆる動態解析や流体解析に用いられる手法の1つで,高い精度で冠動脈の動きをトレースし,元のあるべき位置と形状を修復し,同時にモーションアーチファクトも減少させる技術である。高分解能画像で診断能を上げていく効果に加えて,モーションアーチファクトによる影響をより小さくすることができるため,さらなる診断能向上に寄与している(図2,3)。

図2 SnapShot Freezeのインテリアルゴリズム

図2 SnapShot Freezeのインテリアルゴリズム

 

図3 SnapShot Freeze:クリニカルケース(画像ご提供:東京女子医科大学東医療センター様)

図3 SnapShot Freeze:クリニカルケース
(画像ご提供:東京女子医科大学東医療センター様)

 

■ SnapShot Assistによるワークフローの改善

“SnapShot Assist”は,複雑な線量計算やプロトコル選択を必要としない。まず,1 つ目の機能として,被検者の身長/ 体重からBMI を自動算出する。被検者の体型に応じた最適な管電圧/管電流を用いることで,無駄な被ばくや安定した画像を提供することができる。さらに,ASiRレベルも細かく設定できるため,さらなる被ばくの低減が可能である。
2つ目は,息止め練習時の心拍数と心拍変動を装置が記録し,最適なプロトコルの提案を行う機能である。心拍数や心拍変動量に応じて,スキャン方式や再構成フェーズ,SnapShot Freeze 使用の有無など,状況に応じたプロトコル設定ができ,ワークフローが大幅に改善されている。その結果,SnapShotAssistを使用することで,安定した画像が簡便に出力される(図4)。

図4 SnapShot Assist・SnapShot Freezeのワークフロー

図4 SnapShot Assist・SnapShot Freezeのワークフロー

 

■ GSI Cardiac

Discovery CT 750 HD FREEdom Editionでは,心電同期GSIである“GSI Cardiac”の使用が可能となった。心臓領域では,特に心拍動の影響が大きく,ただ単に心電同期デュアルエナジー検査を行っても,心拍動の影響でミスレジストレーションが発生するため,評価不能なレベルになってしまう。GSI Cardiacでは,高速に管電圧をスイッチングするため,これらの影響を無視できるレベルにできることが,臨床上の最大のメリットである(図5)。
GSI Cardiacでは,シングルエナジーCTの問題点であった,高いⅩ線吸収領域でのビームハードニングの影響を低減することができる。画像再構成を行う際に,生データ内で従来の水のみのビームハードニング補正に加えて,iodine領域でのビームハードニング補正を行っている。その結果,すべてのX線吸収領域でビームハードニングの影響を低減することが可能となった。

図5 ミスレジストレーションを抑えるUltra Fast kV Switching

図5 ミスレジストレーションを抑えるUltra Fast kV Switching

 

図6は,iodine 密度画像を利用したrlativeperfusionの症例である。iodineビームハードニング補正により,従来であれば,心筋評価を行う場合には評価困難となっていた,右心室と大動脈に挟まれた心筋部分のビームハードニングによるCT 値のシフトを低減することができる。同図の左前下行枝領域に,血流が低下した様子が観察される。

図6 iodine 密度画像を利用したrelative perfusion

図6 iodine 密度画像を利用したrelative perfusion

 

図7の症例は,冠動脈CT の課題の1つである,ブルーミングアーチファクトの影響を低減した画像である。GSI Cardiacでは,iodineビームハードニング補正により,従来の画像再構成法では観察の難しい石灰化近傍の内腔評価に対して,デュアルエナジーによる撮影を提案している。仮想単色X 線画像(モノクロマティック画像),iodine 密度値画像〔iodine(HAP),iodine(Water)〕,VNC(virtual non-contrast)と呼ばれる仮想単純画像など,一度のGSICardiacの撮影で,これらのさまざまな画像を1クリックで変更し観察できる。

図7 従来CT表示法とGSI Cardiacによるさまざまな画像表示(画像ご提供:慶應義塾大学病院様)

図7 従来CT表示法とGSI Cardiacによるさまざまな画像表示
(画像ご提供:慶應義塾大学病院様)

 

仮想単色X線画像(モノクロマティック画像)では,40 ~140 keVの間を1 keV刻みでリアルタイムに変更可能である。
Discovery CT 750 HD FREEdom Edition は,心臓CT検査における多くの問題を克服すべく,まったく新しい視点で開発された。今後も,より質の高い臨床画像の提供を最大の目的として,被検者に低被ばくでやさしく質の高い情報提供を行うべく,さらなる技術研究に取り組んでいく。

* 販売名称 マルチスライスCTスキャナ LightSpeed
医療機器認証番号 21100 BZY 00104000号
* Discovery CT750HD FREEdom Editionは,類型 Discovery CT750 HDにGemstone Spectral Imagingなどを搭載したSnapShot Freeze対応モデルです。

●参考文献
1)Husmann, L., Leschka, S., Desbiolles, L., et al. : Coronary artery motion and cardiac phases; Dependency on heart rate ─Implications for CT image reconstruction. Radiology , 245・2, 567 ~ 576, 2007.
2)Sun, G., Li, M., Li, L., et al. : Optimal systolic and diastolic reconstruction windows for coronary CT angiography using 320-detector rows dynamic volume CT. Clinical Radiology , 66・7, 614 ~ 620, 2011.

 

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