FUJIFILM MEDICAL SEMINAR 2015 Report デジタル画像処理技術がもたらす未来
2015.7.11 in 名古屋 講演『CALNEO Smartの使用経験』より
診断参考レベルを用いたCALNEO Smartによる線量低減
小林謙一(藤田保健衛生大学病院放射線部)
藤田保健衛生大学病院(1435床,診療放射線技師数93名)は,2012年に低侵襲画像診断・治療センターを開設し,放射線診断・治療装置を集約している。一般撮影室については2015年に開設した病院新棟に8室および救急X線室を設置し,このうち5室を汎用検査室として使用している。
一般撮影装置は,X線装置,撮影台,FPDを個別に購入した。FPDは,「FUJIFILM DR CALNEO Smart C77」8枚,「FUJIFILM DR CALNEO Smart C47」2枚,「FUJIFILM DR CALNEO C 1717Wireless SQ」2枚,「FUJIFILM DR CALNEO C 1417 Wireless SQ」1枚,「FUJIFILM DR CALNEO C mini Wireless SQ 」6枚を導入し,各室固定,または共用にて使用している。さらに,「FUJIFILM DR CALNEO GL」を1台導入し,長尺撮影を行っている。
CALNEO Smartの特徴
1.Smart Quality
ISS方式の読み取り技術と柱状結晶CsIの組み合わせ,また,独自のノイズ低減回路や画像処理技術により,被ばく線量を抑えた撮影が可能となっている。
2.Smart Mobility
世界最軽量クラスの本体は,大変扱いやすい。無線LAN対応周波数帯を網羅し,さらに内蔵メモリに最大100枚まで画像を保存できる。基幹災害拠点病院である当院にとっては,災害時にも屋外で使用できるなどメリットが大きい。
3.Smart Protection
耐荷重310kgの堅牢性,高い防水性・抗菌性を備える。次亜塩素酸による清掃も可能で,接触感染患者の検査も含めて安心して使用できる。
4.Smart Function
シェル型構造のパネルは,ベッド撮影時にも身体の下に挿入しやすく,4辺のLEDはポジショニング時に有用である。また,バッテリー性能も向上している。持ちやすいパネルは女性技師に好評で,ユーザー視点で設計されていると感じる。
CRからCALNEO Smartへの移行による線量設定
CRからFPDへの移行では,線量設定が必要となる。そこで,1.0cycles/mmにおけるDQE(detective quantum efficiency:検出量子効率)を比較したところ,FPDはCRの2.75倍だったことから, CRの半分の線量を目標に撮影条件を決め,最終的に目視評価を行って撮影条件を決定した。実際の線量は,部位ごとのESD(入射表面線量)の比較で,CRからFPDになったことで40〜60%の低減となった(図1)。
さらに,2015年6月にJ-RIMEから公表されたわが国における診断参考レベル(DRLs 2015)と,当院FPDのESDを比較したところ,全領域においてDRLsを下回り,胸部と腰椎側面以外は,DRLよりも一ケタ少ない線量であった。
藤田保健衛生大学では,1973年からX線撮影の被ばく線量について全国の病院に対して継続的にアンケート調査を行っており,その報告1)はDRLs 2015の策定で参考文献として活用された。この調査で得られた全国のデジタル装置と当院の線量を比較した(図2)。線量の少ない施設から順に並べると,胸部正面撮影では,当院のCRは中程に位置したが,FPDに移行したことで,低線量での撮影グループに位置するようになった。腰椎側面撮影はCRの時代から被ばく低減に努めていたが,FPDではさらに低線量での撮影が可能となっている。
また,一般撮影領域で最も線量を必要とする腰椎側面撮影について,全国調査からディテクタ別に線量を比較した1)。平均ESDは,CR(n=463)が13.5mGy,FPDでは,GOS(n=26)が9.70mGy,CsI(n=39)が4.43mGyであった。CRと比べFPDでは低線量撮影が可能で,とりわけCsIではさらに低減できる可能性があることがわかった。なお,CALNEO Smartの導入により,当院の腰椎側面撮影は2.25mGyと,CsIの全国平均の約半分の線量を実現している。
まとめ
CALNEO SmartのISS方式によるCsIパネルは,感度が高く,線量低減を実現可能なツールである。CRからの移行により,どの部位でも約50%の線量低減を実現し,DRLsを大きく下回る線量での撮影が可能となった。画質と線量の最適化について,今後さらに検討を進めたい
●参考文献
1)浅田恭生,鈴木昇一,
小林謙一・他:X線診断時に患者が受ける線量の調査研究(2011)による線量評価. 日本放射線技術学会雑誌, 69・4, 371〜379, 2013.
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