技術解説(富士フイルムメディカル)
2018年4月号
Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
日立1.5T MRIにおけるWhole Body DWI撮像技術
立花 美紀(ヘルスケアビジネスユニット画像システム営業部画像診断アプリケーション部)
日立が2017年に発表した1.5T MRIの新製品「ECHELON Smart」(図1)は,設置スペースやランニングコストを抑えた,経済性と高画質を備えたMRIシステムである。本稿は,このECHELON SmartにおけるWhole Body DWI撮像に有用な機能として“Image Stitching機能”を紹介し,さらに,上位機種である楕円ワイドボア1.5T MRI「ECHELON OVAL」に搭載されている“Computed DWI(c-DWI)解析”について述べる。
■ECHELON SmartにおけるWhole Body DWI撮像
日立は,これまで一貫してワークフローを重視したシステム設計を行ってきた。ECHELON Smartにおいても,頭部用コイルと脊椎用コイルを据え置きタイプとして天板に常時設置し,腹部用コイルを組み合わせて使用するマルチコイルセッティングが可能である。操作性においては,Whole Body Imaging機能として撮像するタスクをグルーピングし,すべてのタスクを一括で位置決めすることが可能であり,各撮像ステーションで共通とさせたいパラメータを一括して変更することで,スタック間の距離,オーバーラップ長などの撮像パラメータを容易に設定できるGUIとなっている。
ECHELON Smartでは,図2のように等間隔でのセッティングが可能であり,3ステーションで体幹部を撮像することができる。
先に撮像する頭頸部領域は頭部用コイルと脊椎用コイル,腹部用コイルを組み合わせて撮像し,次に撮像する胸部領域はそのままのコイルセッティングでテーブルだけを自動的に中心位置に移動して撮像,さらに,次のステーションに移動する際,腹部用コイルをスライドしてからテーブルを自動的に3ステーション目の位置に移動させて撮像を続ける。
このような手順で撮像したWhole Body DWIの画像例を図3に示す。ステーションごとに撮像した画像はMPR,MIP処理を行った状態で,Image Stitchingと呼ぶ画像結合処理機能にてワンクリックで結合することができる。このImage Stitchingは,オプティカルフローという技術を応用して,各画像の三次元的なゆがみや輝度差を調整して瞬時にシームレスな結合処理を行うことができる。図4に示すように,元の画像では周辺部に若干ゆがみが生じているが,自然に補正され結合処理されたことがわかる。
ECHELON Smartにおける臨床例として,図5に肺がん疑いの画像例と,図6に転移性腫瘍(原発性肺がん)のWhole Body DWI臨床例を示す。
■ECHELON OVALにおけるc-DWI解析
DWI計測機能では,Multi-b計測も可能である。最大10種類まで任意の b-factorと,それぞれの積算回数を任意に設定して一度に撮像することが可能である。高いb値の画像では,SNRを向上するために個別に積算回数を調整することができる。図7に,Multi-b計測の画像例を示す。
さらに,高いb値の画像を合成するc-DWI解析も搭載している。2点以上のb値で画像計測し,そのデータを用いて線形補間処理にて高いb値の画像を推定して合成する機能である。
図8に,b値1000の画像から推定されたb値2000の画像例を示す。不要な領域の信号が抑制され,観察しやすい画像となっている。
◎
本稿では,Whole Body DWI撮像方法における最新アプリケーションについて紹介した。
MRIの検査フローや検査の質の向上は,今後も操作者,被検者にとって重要なファクタと考える。日立はビッグデータやIoT技術(AI技術)を活用し,日々の検査へ貢献していきたい。
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