技術解説(富士フイルムメディカル)
2017年12月号
動画対応DRシステムの最新技術
FPD搭載X線透視診断装置の画像処理エンジン“FAiCE-V NEXT STAGE1+”の透視画像処理技術“FRC”“M-DRC+”
天明宏之助((株)日立製作所ヘルスケアビジネスユニット開発統括本部第二技術開発本部基盤技術開発部技術開発三グループ)
■“FAiCE-V NEXT STAGE1+”概説
X線透視診断装置は,X線透視下で行う消化器内視鏡を用いた手技の高度化を一つの背景として,透視画像の高画質化と被検者および医療従事者の低被ばく化が重要になってきている。
日立では,フラットパネルディテクタ(以下,FPD)搭載X線透視診断装置に対し,高画質化および低被ばく化を目的とした画像処理エンジンとしてFAiCE-V NEXT STAGE1+(FAiCE-V NS1+)を開発し,「CUREVISTA」「EXAVISTA」「VersiFlex VISTA」「ESPACIO AVANT」の4機種に製品搭載している。
FAiCE-V NS1+の特徴的な高画質化処理技術は,被写体の動きに追従しながら時空間ノイズ低減処理を行う“MTNR(Motion Tracking Noise Reduction)*”と,画像の空間周波数ごとに強調または圧縮処理を行う“M-DRC(Multi-Dynamic Range Compression)”,およびRetinex理論1)を応用し,画像を局所ごとにコントラスト補正する“M-DRC+”がある。一方,低被ばく化技術は,透視画像の最新フレームと1つ前のフレームを用いて,その中間フレームを作成し補間することでフレームレートを2倍にする“FRC(Frame Rate Conversion)”がある。
本稿では,低被ばく化技術であるFRCと,高画質化処理技術の一つであるM-DRC+について技術解説を行う。
■FRCの技術解説
FRCは,図1に示すとおり,X線が照射された透視画像の最新フレームとその1フレーム前の画像からフレーム間で生じた被写体の動きを検出し,動き補償を行いながら中間フレームを作成して,最新フレームと1フレーム前の画像の間にフレーム補間を行う処理である。生成する中間フレームは,図2に示すとおり,被写体の動き検出処理と動き補正処理を行い作成することで滑らかな動画を描画できる。以上の原理から,例えば,フレームレート30fpsの動画が必要な場合,X線照射レート15ppsの透視画像にFRCを適用することで,フレームレート30fpsの動画が得られる。この効果を利用することで,X線透視における照射X線量を従来の約半分にすることが可能になる。
■M-DRC+の技術解説
M-DRC+は,図3に示すとおり,Retinex理論に基づき局所的に画像から照明光成分を推定し反射率成分を算出1)する処理を画像全体に行った上で,局所ごとにコントラスト補正処理を行う。この結果,従来では黒つぶれや白飛びしていた低コントラスト体の視認性を向上させる。
◎
紹介したFRCはCUREVISTA, EXAVISTA,VersiFlex VISTAに,M-DRC+はCUREVISTA,EXAVISTA,VersiFlex VISTA,ESPACIO AVANTに搭載可能である。
今後も,日立は高画質かつ低被ばくな透視画像の提供をめざして開発を進めていく。
*MTNRは以下の株式会社日立製作所の登録特許です。特許第6002324号,“放射線画像生成装置及び画像処理方法”
*FAiCE,FAiCE-V,NEXT STAGE,CUREVISTA,EXAVISTA,Versiflex,VersiFlex VISTA,ESPACIO AVANT,MTNRおよびM-DRC+は株式会社日立製作所の登録商標です。
販売名:汎用X線透視診断装置 CUREVISTA
医療機器認証番号:219ABBZX00109000
販売名:汎用X線透視診断装置 EXAVISTA
医療機器認証番号:220ABBZX00236000
販売名:多目的イメージングシステム VersiFlex VISTA
医療機器認証番号:222ABBZX00090000
販売名:胃部集団検診X線システム ESPACIO AVANT
医療機器認証番号:229ABBZX00014000
●参考文献
1)人の“目”の特性を生かした視認性向上技術-高視認プロジェクタの開発-.日立製作所ホームページ, 2013.
【問い合わせ先】
ヘルスケアビジネスユニット グローバル事業統括本部
URL http://www.hitachi.co.jp/healthcare