技術解説(富士フイルムメディカル)
2017年8月号
Women's Imaging 2017 最新技術
日立超電導MRI装置「ECHELON OVAL」における“Breast MRS計測機能”
「ECHELON OVAL」は,高いハードウエア性能と,独自開発アプリケーションを搭載したワイドボアMRI装置です。搭載している撮像機能の一つに,乳がんの治療効果判定に有用と期待される“Breast MRS計測機能”があります。
MRスペクトロスコピー(MRS)は,体内代謝物を非侵襲に調べることができる計測機能です。操作や撮像手法が難しいと言われるMRSですが,日立は煩雑な操作を自動化し,one click scan & analysisを実現しました。また,解析にはLC-Modelを採用し,オンコンソールで解析ができます。
Breast MRSは,治療効果などの精度を上げるのに有用性が高いとされ,choline(Cho)を調べることが重要です。Choは正常乳腺ではピーク値は低くなりますが,悪性腫瘍などによって細胞数が増加するとピーク値が上昇することが知られています。
乳房組織は,大半が脂肪組織です。Choの信号は,脂肪信号と比べると,強度がきわめて微弱で検出が困難です。日立のBreast MRSは,精度を重視して2種類の脂肪抑制手法の組み合わせを実現しました。この2種類を組み合わせることで,サイドバンドとメインローブ信号共に抑制率を向上できます。
一般的に,このような2種類のパルスを組み合わせると撮像時間の延長などが起こりますが,最適化パルスを実現しました。また,ECHELON OVALのアクティブシミング機能“HOSS”により静磁場の均一性が高いため,基本的な脂肪の抑制能力が大きなことも重要な特長です。
図1に,乳がん組織にてBreast MRSによる治療前後のCho信号を比較した例を示します(治療後Cho信号低下)。
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