技術解説(富士フイルムメディカル)
2017年3月号
US Today 2017 超音波最新動向
Point of care診療をサポートする超音波診断装置「ARIETTA Prologue」
木村 剛((株)日立製作所ヘルスケアビジネスユニット開発統括本部第一製品開発本部)
昨今の技術進歩により,血液・生化学などの検査機器の小型化が実現し,検査センターを介さず,その場で検査結果を確認する簡易検査(point of care testing:POCT)が普及し,その場で適切な診断・処置がなされ,診療の質の向上に大きく貢献している。超音波検査においても,被検者の傍らで超音波診断装置を用いた検査(point of care ultrasound:POCUS)が広い領域で利用されてきており,装置に要求される可搬性,設置性,機動性,汎用性の向上が,ますます重要となってきている。ここでは,POCUSへの要求を実現した超音波診断装置「ARIETTA* Prologue」(図1)の技術を紹介する。
可搬性および設置性
被検者の傍らで検査を行うためには,装置の持ち運びやすさ,さまざまな使用環境へ設置・レイアウトを可能とする柔軟性が必要とされる。
ARIETTA Prologueは,検査時には収納され,持ち運び時には引き出し可能なハンドル,および装置と一体でプローブの持ち運びが可能なプローブ収納ボックスといった可搬性を考慮した機構を有している。さらに,ハードウェア構成の小型化によりA4サイズ同等の設置面積を実現し,操作・表示ユニットは,プローブを接続する超音波送受信ユニットから分離してタブレット端末のように使用することができ,さまざまな検査方法,場所に応じた設置・レイアウトに対応することが可能である。なお,これらユニットを分離した際の画像および制御データ通信は,高速無線通信を採用することで,有線状態と同等の画質および操作レスポンスを実現している。
機動性
検査時間を短縮するためには,高速起動,正確な診断を可能とする良好な画像を提供することが必要とされる。
ARIETTA Prologueは,システム全体の起動高速化および起動順序の最適化により,起動時間の短縮を実現している。また,良好な画像を提供するため,高性能かつ多様なラインナップを持つ上位機種と同じプローブの接続に対応しているだけでなく,上位機種に匹敵する送受信回路や観察部位ごとに最適化された高画質化フィルタを可能としたハードウェアを搭載している。さらに,過去に取得した画像を読み出し,読み出した画像と同じ設定で検査開始が可能な機能,人型のアイコンから部位・体格などを自然な流れで入力することで被検者に最適な設定を選択できる機能といった,検査の開始を簡便にする機能も搭載している。
汎用性
多種多様な状況に応じて,ユーザーが迷いなく超音波検査を行うためには,直感的に装置を操作できる必要がある。ARIETTA Prologueは,マルチタッチディスプレイを採用しており,観察画面上のソフトウェアスイッチで検査に対応したすべての操作が可能である。人間工学的な知見に基づき,誰にでも認識しやすくデザインされたGUI,および画面をピンチアウトして拡大表示するなどタブレット端末と同様のタッチジェスチャの採用により,従来にない直感的な操作を可能としている(図2)。
今 後
超音波検査は,技術の進歩により,在宅,救急医療現場やインターベンション治療補助など,さまざまなシーンへ普及し,迅速な診断・治療をサポートする重要なツールの一つとなっている。未曾有の超高齢化社会に突入する日本において,地域住民の日常の健康を守る一次医療や急性期医療現場で即時診断・治療補助に貢献するPOCUSは,今後ますます重要となる。ARIETTA Prologueが,診療の質と患者QOLの向上の一翼を担う存在となることを期待する。
*ARIETTAは株式会社日立製作所の登録商標です。
【問い合わせ先】
ヘルスケアビジネスユニットマーケティング本部
URL http://www.hitachi.co.jp/healthcare