技術解説(富士フイルムメディカル)
2016年8月号
Women's Imaging 2016 最新技術[Breast Imaging]
日立超電導MRI装置「ECHELON OVAL type ORIGIN 5」における“Breast MRS計測機能”
新製品「ECHELON OVAL type ORIGIN 5」は,高いハードウエア性能に加え,豊富な独自開発のアプリケーションを搭載した最新のワイドボアMRI装置です。新たに搭載された撮像機能の一つに,乳がんの治療効果判定に有用と期待される“Breast MRS計測機能”があります。
MRスペクトロスコピー(MRS)は体内代謝物を非侵襲に調べることができる撮像法で,操作や撮像手法が難しいと言われていますが,日立は煩雑な操作を自動化し,one click scan & analysisを実現しました。また,解析には信頼性の高いLC-Modelを採用し,オンコンソールで容易に解析が可能です。
ECHELON OVAL type ORIGIN 5では,このMRS機能をbreastにも展開しました。breast MRSは治療効果判定などの精度を上げるのに有用性が高いとされ,choline(Cho)を調べることが重要です。Choは細胞膜に存在しますが,正常乳腺でのピーク値は低く,悪性腫瘍などによって細胞数が増加するとピーク値が上昇することが知られています。
乳房組織は大半が脂肪組織です。Choの信号は脂肪信号と比べると強度がきわめて微弱で,検出が困難となります。日立のbreast MRSは精度を重視してBASING法とTE-Averaging法という2種類の脂肪抑制手法の組み合わせを実現しました。この2種類を組み合わせることでサイドバンド,メインローブ信号共に抑制率を向上できます。一般的には,このような2種類のパルスを組み合わせると撮像時間の延長などの問題が生じますが,最適化パルスを実現し,解決しました。また,ECHELON OVAL type ORIGIN 5はアクティブシミング機能“HOSS(High Order Shim System)”により静磁場の均一性が高いため,基本的な脂肪の抑制能力が大きなことも重要な要素です。
図1に,乳がん組織にてbreast MRSによる治療前後のCho信号を比較した例を示します。治療後のMRSデータで,薬剤による治療効果によりCho信号が下がっている様子がわかります。
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