技術解説(富士フイルムメディカル)
2015年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
心機能計測の自動化による検査効率化への取り組み
嘉山 崇史(日立アロカメディカル株式会社 マーケティング本部)
近年,多くの超音波検査室では,限られた人数で多くの検査をこなさなければいけない現状に直面しており,検査の効率化に寄与するアプリケーションの開発が求められている。弊社では,各領域の中でも特に収縮能指標,拡張能指標の算出など,さまざまな計測を行う必要性がある心機能検査の自動化に着目している。今回は新たにBモードの左室容量計測(Teichholz法),左房(右房)容量計測の自動計測アプリケーションを「プロサウンドF75」に搭載したので紹介する。
■自動計測の仕組み
心臓は位置,大きさ共に各者各様であるために,心腔境界を自動トレースする技術は,一般的な構造モデルを用いたパターンマッチング法では追従性に限界がある。また,いずれの患者の場合でも心腔境界がクリアな画像が得られるとは限らない。そこで,装置内にいくつかの症例データとトレース例のデータベースを搭載しており,最も当てはまるトレースラインを算出する方式を一般的に用いている。すでにプロサウンド内には多くの心機能計測の症例データおよび検査者のバラツキを考慮したトレース例のデータベースを搭載しており,最適なトレースラインを導けるシステムを実現している(図1)。
■左室容量計測(Teichholz法)の自動化
Teichholz法における左室容量計測は,Mモードだけでなく,Bモードにおいても行われるようになっている。Bモードの場合,Mモードと異なり斜めに測定することから,Mモードにて測定した際との誤差が懸念される。今回導入した自動計測アプリケーションは,計測実行とともに画像から心筋の位置を認識し,適切な場所にキャリパーが設定され,計測値が自動で算出されるフルオートとなっている(図2)。患者によってキャリパーの設定位置に修正が必要な場合は,そのままセミオートに切り替えることができる。セミオートも同様に,左室,中隔,後壁を認識して,その近傍に一瞬で移動するため,操作者は1つのボタンとトラックボールによる微修正で簡単・正確に計測を終えることができる(図3)。
この自動計測アプリケーションでは,フルオートという手法に不安が残る場合でも簡単に即時微修正を加えることができる点が特長であり,多くの方に活用していただけると確信している。この自動化により,セミオートを選択した場合でも,従来の手動の半分の手順で終わることが確認できている(表1)。
■左房(右房)容量計測の自動化
左房(右房)容量計測は,完全な自動化ではなく,半自動化(セミオート)の手法で搭載した。Simpson法の左室駆出率(EF)計測ではすでに用いられている3点法(弁基部2点+1点)によるものである。3点間のトレース線を前述のデータベースに照らし合わせて引いていく(図4)。従来,左房(右房)容量計測は手動トレースで行われており,すでにルーチンに組み入れている場合においては煩雑なステップの一つであった。今回,セミオートを採用することで,トレース時間の大幅な短縮が見込まれる。
◎
日々のルーチン検査の効率化に寄与する心機能計測の自動化への取り組みについて紹介した。今回はBモード計測のみの紹介であったが,今後も効果の高い計測に対して順次,自動化を進めていくとともに,すでに自動化した計測に関しても,より精度の高いものにしていけるように取り組んでいく。
*PROSOUND/プロサウンドは,日立アロカメディカル株式会社の登録商標です。
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